色恋沙汰とおでん三兄弟
華麗な軍服姿の聖騎士が三人。
どことなく着こなしに気品があり、格別の気風を感じさせる。
雰囲気でわかった。
聖都中央の守護、第一騎士団の男たちだ。
第一騎士団の面々は各国からの貴族出身者や、高位聖職者の養子や隠し子などがメインで構成されているとまわりから聞かされたことがある。
彼らは育ちが良いので身のこなしが自然と上品で、パレードや儀式の場を飾るのにちょうど良いのだ。
だから日ごろから教皇が住む城、大聖堂、それぞれの省庁が集まる中央の防衛隊として置かれている。
いわゆるエリート部隊である。
……逆に、現在リカルドが管理し、今後ランベルトが管理することになる遊撃隊。
こちらも悪い意味で特徴がはっきりしている。
彼らは下品、乱暴、汗臭くて血なまぐさい。
何かというと大声や筋肉アピールで物事を解決しようとし、素行は悪く暴力的。
悪い意味で軍隊らしい軍隊である。
まるで山賊のようなこの男どもは、各騎士団で問題行動を起こし、不良品あつかいされていたような連中だ。
ヴァレリアが新部隊を発足したいと提案してきた時、五大騎士団長がそれぞれ寄こしてきた男どもが『こんなの』しかいなかったのである。
同じく『こんなの』の仲間であったリカルドがボス猿のような統率力を発揮して機能しているが、あまり人前には出せない殺伐とした集団だった。
聖騎士団の華やかな部分、第一騎士団。
同じく聖騎士団の荒々しい部分、遊撃隊。
今、軍務省の廊下などというつまらない場所で、両者は向かい合っていた。
「なにかご用でしょうか?」
ランベルトはシンプルに問いかけた。
目の前を三人の男にさえぎられてしまっている。このままでは通れない。
「いやいや」
アゴのとがった男がいやらしい笑みをうかべたまま形だけは上品に一礼する。
「長官殿の覚えもめでたいランベルト殿にあやかりたいと思いましてね」
つまり義母の七光りと皮肉を言っている。
今後はさらに多くの者から同じことを言われるようになるだろう。
これくらいの皮肉は耐えねばならぬ。
「すべては神の思し召しでしょう」
目を軽く閉じ胸に手をあて、もっともらしい言葉をかえした。
すべては神の決めることと言って無難にまとめるのは、この宗教国家では良くある話法なのだ。
「フン」
アゴのとがった男は面白くもなさそうに鼻をならした。
「用がすんだのなら道をあけてくださらない?」
クラリーチェが後ろから不愛想に告げた。
「いや、まだ良いではありませんか」
丸顔の男が愛想笑いを浮かべる。
「そうですよクラリーチェ殿、そう冷たいお顔をなさっては、せっかくの美貌が台無しです」
角顔の男がお世辞を言った。
三角。丸。四角。
特徴がかぶらない、仲の良さそうなトリオだ。
勇輝は串に刺さったおでんを連想した。
「いかがでしょう。先日よいカフェを見つけましてね。
これからご一緒しませんか」
角顔がクラリーチェを口説き始めた。
(え、マジ?)
勇輝は意外なものを見た、と驚きをかくせない。
クラリーチェは確かに美少女だ。
キリッと結いあげた銀髪の髪。宝石のように輝く瞳。引き締まった無駄のない肢体。
だが、雌の猛禽類にも似た、キツイ性格の女だった。
「結構です」
恐ろしく冷たい声で彼女は拒絶した。
「そ、そう冷たいことを言わずに、我々にもチャンスを……」
丸顔がねばるが、クラリーチェの毒舌は重ねて氷結魔法を吐いた。
「結構です。知らない人について行ってはいけないと、義母に言われておりますので」
三人の男たちは凍りついた。
この反応を見るに、知らない人どころか、何回か同じように誘っているのではなかろうか。
「行きましょうランベルト」
凍りついている男たちの横を無慈悲に通り過ぎるクラリーチェ。
ランベルト、勇輝、ルカも彼女につづく。
「……クッ!」
ランベルトが通りすぎたとき、男たちがランベルトのことを憎々しげににらんだ。
次を歩いていた勇輝だからそれを見てしまう。
(あー、そういうことか……)
勇輝は察した。
このおでん三兄弟、前々からクラリーチェのことを狙っているらしい。
だが彼女はランベルト以外眼中にない。
相手にしてもらえない恨みが本人にではなく、ランベルトにむかっている。
恋心の厄介なところだった。





