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7話 激動の日

 月曜、それは最も憂鬱な日である。


 何故学校なんて行かなければいけないのか。

  誰もかれも仕事をするためだというが、絶対に将来に繋がる勉強をしているのかと問うたらどれだけの人間が百パーセントと答える事が出来るだろうか。


 そんな世界の謎を考えながら登校する。


 友達と笑いながら登校する者や、恋人とラブラブしているものがいる中、俺はぼっち登校である。

 数値『0』の異端児と友達になりたい者など一人もいないのだから仕方ないが、周りの連中から登校中も腫物のように避けられ、奇異の目で見られるのがかなりうざい。


  教室に入ると、いつもは即行で俺のもとに来るパリピ君が来ないことに違和感を感じる。

 

  今日は気分がいいのだろうか? それとも己の愚かさをようやく理解したのだろうか?

 まあ、そんなことはどうでもいい。来ないというなら今日は久しぶりに楽出来るのだ。目一杯堕落を貪ろう。


 と、そう思ったのも束の間、そんな希望は担任が教室に入ってきた時に儚く打ち崩れる。


「今日は能力実習の日だぞー 実習服忘れずに着ておけよー」


  とクラスに声を掛ける、クラス担任――岡本(おかもと) 雄大(ゆうだい)(33歳恋人募集中)。


 人の幸福を踏みにじりやがって・・・

 禿げる呪いをかけてやろうか。


 大変遺憾ではあるが確かに今日は33歳DTの言うように能力実習の日である。

 漢字からなんとなくわかるとは思うが一応説明すると、能力実習とは個人の持つ異能を特殊な建物の中で修練することで、不測の事態が起きたとき怪物に対処するための己を守る術を身につけるのだ。


 特殊な建物というのは中にいる人物の怪我をある一定まで無効化できるというとんでもない代物だ。

 到底量産できるようなものではなく、一つの建物でも数億ほどするらしい。

 原理は完全に謎だが、何処かの天才が異能で何とかしたのだろう。今頃そいつはお金がっぽがっぽだろうな。


 そして俺がこの実習が嫌な理由であるが、それは、俺には異能がないから・・・ということに周りにしているからだ。それによって何もすることが無いので、毎回修練場の端で瞑想している。

 実際は俺も異能がある訳だが、俺の異能は少々特殊で数値がバグって最終的には必ず『0』になるのだ。

 まあ別にその事はどうでもいい。面倒ごとに巻き込まれたくないし、蒼を守れればそれでいい俺としてはわざわざ自分の能力をばらす必要性が皆無という訳だ。


 まあ、その代わりパリピ君に目をつけられている訳だが、そんな事は卒業してしまえば関係ない。


 教室を出ると男子更衣室へと向かう。

 自分のロッカーから実習服を取り出し着用する。当然この服も普通の服と違って特別性で、ある一定までの攻撃を吸収するというものだ。ただし、俺が能力発動時に殴ると一撃で破れるので、そこまでの耐久性はないのだろう。


 気分が乗らず少し重い足取りで修練場へと向かう。


 中に入るともう既に俺以外の一年はほとんどが来ているようで、楽しそうに喋っていた。

 日頃自由に能力を使えないからストレスが溜まっていたのだろう。


 担当の先生が来ると、途端に静かになり整列し始める。早く始めたいというのもあるだろうが担当の先生の迫力が凄まじいというのも理由の一つだろうと思う。


 服が張り裂けてしまうのではないかと思うほどの筋肉をほこる、実習担当教師――(かがみ) 岳人(がくと)

 彼の能力は【身体強化(フィジカルアップ)】、ある程度の攻撃は彼の前では意味をなさず、逆に彼の一撃は建物を吹っ飛ばすほどらしい。能力数値は驚きの23520でDランク級の怪物であれば彼一人で倒すことが可能だろう。


 「それでは今から能力実習を始める。これは怪物が出現したときに己を守る為の非常に大切な授業だ。真剣な気持ちで臨むように」


 「「「はい!」」」


 「それではお互いの間隔を広く持ち、各自能力を発現させろ。俺が各々に指導していく」


 その言葉を皮切りに、全員が能力を発動させる。

 炎を操る者、生き物に喋りかける者など多種多様で見ているだけでも面白い。

 俺は修練場の隅の方に行くと、何もしないというのもいけないので取り敢えず瞑想でもしようかとその場に座り目を瞑る。


 他人にバレない形なら能力を使っても大丈夫だろうと思い、自分の能力を発動する。


 「戦神(マルス)


 瞬間、五感が鋭敏になり修練場全体を手に取るように知覚する。


 一年の中で一番能力が強いのはどうやら【念動力操作(サイコキネシス)】の女生徒のようだ。パリピ君も悪くはないが、どうにも微妙だ。パリピ君もその事が分かっているのか、だんだんとイライラしてきている。俺に当たってくるなよと願うが、まあ望み薄だな。


 その後も淡々と瞑想を続け、鏡先生が俺のもとにくると、


 「お前にもすぐに能力が発現するからな」


 と言って肩を叩き、また違う生徒を指導に行った。

 先生が差別するような人物じゃなくて良かったぜ、というかこの学校の先生は皆そんな人物だらけだ、よほど良い恩師に巡り合ったのだろう。




  ◇




 演習が終わって昼休みになると予想通りパリピ君が俺の方にニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら歩いてくる。


 「おいゴミ野郎! 飲みもん買ってこい!」


 逆らうのも面倒くさいので席を立ちあがり自販に向かう。


 自販から戻り、飲み物を渡すと、いつもは殴られるはずなのだが、今日は殴られず、そのまま席に戻ることが出来た。


 (おかしい、何か変なことでも考えているのか?)


 と考えるが、何をするのか予想もつかない。

 気にしても仕方ないのでそのまま授業が始まるのを待った。


 「はい、それでは授業を始める」


 と教室に入ってきたのは【メデューサ】こと二階堂 双葉先生である。今日もその瞳の眼力は他者を圧倒する輝きを持っている。


 こりゃあ寝れねえな、と思っていると、クラスの女生徒がごぞごぞと鞄を探っているのがわかる。


 (忘れ物か? ご愁傷様だな・・・)


 よりによって【メデューサ】の授業で忘れ物など考えたくもない。


 それを目ざとく見つけた先生は女生徒に問いかける。


 「どうした? 忘れ物か?」


 「それが・・・教科書が無いみたいで、先ほどまではちゃんとあったのですが・・・」


 それはおかしな話だな、教科書が突然なくなるなどと、それこそ誰かに取られでもしない限り・・・


 とそこで、ふとパリピ野郎の不気味な笑みを思い出す。

 まさか・・・と思いながらも、自分の鞄を開けるとそこには国語の教科書と知らない財布が入っていた。


 「おい! ゴミ野郎の鞄になんか入ってねえか!」


 突如大声を出すパリピ糞野郎。

 てめえの所から俺の鞄の中がそんなに見えるわけねえだろ!これで奴がやったことであるのは明らかだ。

 

 その言葉にクラスメイト達は俺の方に視線を向ける。


 「ああ、何故かは分からないが俺の鞄に入っていた」


 と、教科書がない女生徒に教科書と財布を渡す。

 ここで慌てようものならば余計に疑われてしまうだろう。

 内心はかなり動揺しているが、それが顔に出ないように気をつける。


 「あっ! それ私の財布!」


 そこで、また違う人物が声を上げた。

 その女はクラスカーストでそれなりに上の方にいる奴で、俺の手から財布をひったくるとさげすむような眼でこちらを睨みつける。


 「最低!」


 そして炸裂する張り手。

 パンっ! と子気味良い音を響かせ俺の頬を叩く。


 「いや、ちがっ!」


 と言い返そうとすると、クラス中から懐疑、侮蔑、嫌悪の視線が向けられている事に気づく。唯一、二階堂先生だけが俺を信用していると疑いのない視線を向けてくれた。

 しかし、それで終わりではなかった。


 教室のドアがゆっくりと開かれる。

 中に入ってきたのは教頭先生だ、何故か困惑した表情をしており何が何だかといった感じだ。そして驚く事にその後ろには警察官と思われる二名の人物が教頭に連れ立って教室の中に入ってくる。

 

 「ちょっと失礼しますねえ、窃盗の通報があったのですが」


 と、そんな事を宣う。

 誰が通報したのか・・・それよりも、さっき俺の鞄に入っていたことが分かったばかりなのに、来るのが早すぎる。これは仕組んだと自分からばらすようなものじゃないか。パリピの野郎もやきが回ったか?


 と、少し安心した俺が馬鹿だった。


「それじゃあ署まで連行しますねえ」


 となんの事情聴取も取らずに警察官は俺を連行しようとするのだ。

 唖然としていた二階堂先生もハッとして警察を止めに入る。


 「ちょっと待ってください! 横暴過ぎます、職権乱用ですよ!」


 「いえいえ、これも立派な我らの仕事ですから」


 「まず事情聴取を取るのが先でしょう! 何故彼を犯人と決めつけて連行するのですか!」


 意見してくる二階堂先生に痺れをきらしたのか、警察は「彼が無実の場合はすぐに解放しますよ」と言って俺の首根っこ掴んでパトカーに放り込んだ。


 あまりの激動の展開についていけず俺はしばらく放心していた。


多少の無理は目を瞑っていただく感じで・・・

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終焉都市の雑草
連載開始です(*´▽`*)
神々の権能を操りし者2
― 新着の感想 ―
[気になる点] 早すぎるw
[一言] 展開が稚拙。
[気になる点] いくらなんでもクラスメイトもこれおかしくないって思うはずの場面だったから クラス内にカイジばりのザワザワ感があれば読んでも違和感ないと思う
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