62話 やっぱりこうなるのか・・・
流石に朝投稿は出来なかった・・・
「行ってきます」
「「行ってらっしゃ~い」」
「おっ? ナンパでもしにいくがはッ?!」
阿呆な事を言っている父さんの鳩尾を抉って家から出る。
俺は休日に職場に行く立派な社畜にジョブチェンジしたのだ、上司の呼びかけだって笑顔で受けるさ。
余談だが昨日家に黒い猫が居てめっちゃ驚いた。一昨日はずっと蒼の部屋にいたらしく気付かなかったみたいだ。瞳が月のように綺麗な子で名前はルイになった。もふもふが家にも居て超ハッピーだ、本部の帰りにサリーにも会いに行くから久しぶりにもふもふメーターがマックスになるかもしれない。ちなみにこのメーターがゼロになると俺は死ぬ。
夏の日差しが俺を照らす。
く~ 眩しいぜ!
こんな暑い日でも外に出る。これがリア充ってやつなのかもな!
「きゃ~ じゅん君かっこいい!」
「ふっ! 今日は何処にだって連れて行ってあげよう!」
俺の横を通るリア充が一組。
「・・・」
「「ひっ?!」」
おっといつの間にか怖い顔をしていたらしい。
リア充カップルが顔を青くして逃げてしまった。
いかんいかん、ついいつもの癖が出てしまった。ははは! ・・・何で俺には彼女がいないんだ?
世界最大の謎を考えながら本部に移動し、金剛さんに指定された場所へと移動する。
「おっ、来たな英雄君!」
「何ですかそれ?」
開口一番金剛さんがおかしな呼び方で俺を呼ぶ。
「いやな? 柳の戦闘を見た人達がそう言ってるらしい。確かに強大な敵四体を一人で相手取り誰も死者を出さずに倒したのだから英雄というのも間違ってはいないだろう」
「あんな奴等四体倒しただけで英雄になれるなら今頃世界にどれだけの英雄がいるんすか・・・」
「いや、両手で数えられるぐらいだと思うんだが」
そんなはずはない。
俺が知ってるだけでも四人は俺と同じことが出来る。世界単位で考えればその五、六倍はあるとみるべきだろう。・・・俺の周りにおかしい人が集まっている可能性は除く。
「まあ、高宮家の当主は怒り狂って暴れているみたいだが」
「えっ?! 俺何かしましたっけ?」
高宮家のお嬢様方は無傷で送り届けたし町は破壊したが敵も掃討した。何も怒られる要素がないと思うのだが。いや、街を破壊したらアウトか。
「毎日瑠奈ちゃんが柳の話をするから嫉妬しているらしい」
「・・・」
「ぷっ、気を付けろよ。高宮家は権力は凄まじいからな。いつ背後から襲われるか分からんぞ? くくくっ!」
笑ってんじゃねえ!
そんなしょうもない理由で命を狙われたらこちとらたまったもんじゃねえよ!
上に立つ人ならもう少し度量があって然るべきだろう。
「ってこんな話をしに俺を呼んだ訳じゃないでしょう?」
「まあまあそう焦るな。今回の任務は俺も相当感謝してるんだ。柳でなければ難しかっただろうからな、任務を受けてくれて本当に助かった」
無理とは言わないんだな。
やはりこの人も相当な実力者だ、というかこの部隊って何気に超優秀な能力者が揃ってないか? 治癒能力を持つ桐坂先輩なんてその最たる例だろう。他国もこうだとは考えられないんだが。
「まあ、俺しか適役が居なかったですからね」
「はは、本当に運が良かったよ」
当の本人としては運が悪かったとしか思えないが。
溜息を吐く俺をにやにやと笑う金剛さんを誰か殴ってくれ。
「それじゃそろそろ本題に移るか」
ようやくだな。確か今回の任務が問題になっているとメールに記載されていたが一体どうなっているのか。
「単刀直入に言うと、柳の力を求めて上層部の一部が動き出した。もちろん市民を守る為ではなく私利私欲の為だ」
「もちろんって・・・」
「一部の連中は腐ってるからな。高宮家関連でそれなりの数を粛正できたがこういう連中はゴキブリ並みにしぶとくそれでいて数が多い」
忌々しそうに語る金剛さんだが、過去に何かあったのかもしれない。恨みを通り越した殺気が溢れ出ている。
「今回の柳の働きを考慮すれば絶対者入りも考えられるほどのものだが、連中はその成果を握りつぶし柳を特殊対策部隊内に留めておこうとしている」
成程、絶対者には法律が通用しないらしいからな。
好き勝手出来るように留めようとしている訳か。
はあ・・・十六歳の隼人君に次から次に仕事を投げつけないで欲しい。こちとらまだ思春期の学生なんだわ。
「そう言えば絶対者ってどうやったらなれるんですか?」
「そうだな。簡単に説明すると任務の成果と数値で決まる。成果に関しては世界中の支部をまとめる統括組織に送られ判断される。稀に例外として強力な敵を倒す事で絶対者になった者もいるが、今回の柳は正にそれだな」
でもその成果が握りつぶされているから絶対者になれないと。
あれ? 詰んでね?
成果を潰されるんだったら俺にはどうする事も出来ない。何せ俺の数値は『0』になってしまうのだから。
「気付いたか? そう、このままだったら柳は腐った上層部の操り人形にされてしまうだろう」
「つまり今日は″ご愁傷様。まっ来世はいい事があるさ″という連絡に呼ばれたという事ですか。泣いていいですか」
「まあまあ落ち着いて最後まで聞け」
落ち着ける訳ないじゃないですか!
俺の未来が掛かってるんですよ。
あっそうだ! 高宮家当主に頼んで・・・いや、俺を嫌っているんだったら余計にややこしい事になる可能性が・・・
「ズバリだ。柳よ、絶対者になれ!」
どや顔で言い切る金剛さんに俺はジト目を向ける。
「先程金剛さんが絶対者にはなれないと言ったと記憶しているのですが」
「ああ、普通の方法では絶対者になる事は不可能だ」
「だったら・・・」
「だが! 一つだけ方法がある」
金剛さんはそう言うと一枚の紙を出す。
そこにはこう書かれていた。
――『世界大会』と。
俺の頬を何故か冷や汗が伝う。
「・・・これは?」
「見ての通り、世界中の能力者達が集まり覇を競う大会だ。しかも今回は二人の絶対者が出場するというとんでもないものになっている」
ああ、言いたいことが分かった。分かってしまった。
最悪のデジャブを体験している。
全力で拒否したいが俺は運命に嫌われているからな・・・
「つまり・・・」
「そう、つまりだ。絶対者を倒してこい! 絶対者を倒せば柳が九人目になる事に誰も文句は言えない。それ以外に柳が絶対者になれる可能性はない」
無茶を言う。
絶対者なんてどいつもこいつもバグみたいな奴等しかいないだろ。
今までの怪物達との戦闘とは訳が違うのだ。
「いや、流石に・・・」
「出来るとも」
俺の言葉を遮り、金剛さんは断言する。
驚いて顔を上げると、一つの疑いもない目が俺を見つめていた。
「菊理の予言を覆し、Sランク級四体を相手取り生き延びた柳なら不可能ではない。自分の可能性を信じろ」
「そ、そうですか」
迫力に押され思わず頷いてしまう。
そうか・・・そうだな。
どっちみち絶対者にならないと俺は危ないみたいだし頑張ってみるか。
「・・・分かりました。倒してきます」
「ふっ、良い目だ。もしもに備え西連寺も同行させよう。何があっても直ぐに戻ってこれるだろう。ああ、ついでに服部も同行させるか・・・」
「服部さんもですか?」
何でだ? 西連寺さんがいれば必要ないと思うのだが。
「ん? えっと・・・ああ、そう、そうだ! 服部は外国によく行ってるからなガイドにつけようと思ったんだ。ははは! 両手に花じゃないか。俺は上層部を欺く為にここを離れる事は出来ないがまあ頑張ってきてくれ」
「はあ、そうですか?」
何を焦ってるんだ?
あっそれより大会の日程っていつだ?
「大会っていつあるんですか?」
「十日後だな」
はやっ?!
ま、結局こうなりますね(*´▽`*)





