61話 家族との団欒?
遅くなりました・・・(>_<)
多くの感想ありがとうございます。ネタバレになりそうなものは返事が出来ないでいますが毎度楽しく読ませて頂いてます(*´▽`*)
翌日、曜日で言えば土曜。
少し洒落た料理店に柳家は朝っぱらから外食に来ていた。理由としては家に食材から器具まで全くなかったからだ。
昨日母さんが料理を作ろうと台所に入るも何も食材が無くこめかみに青筋を立てていた。一体どんな生活をしていたのかと蒼と俺の頭に雷が落ちたのは言うまでもないだろう。おかげで数十分も正座させられてしまった。
蒼も俺に似てあまり凝らないタイプで簡単な食べ物で終わらせてしまうからなあ、わざわざ作るの面倒くさいし。
と、まあそんなこんなで外食に来た訳だが。
現在、家族の表情は大きく分けて二つに分類される。
―生気の抜けた絶望か大輪の花のような笑顔だ。
俺? もちろん前者だ。そんな当たり前の事は尋ねないでくれたまえ、必答問題だぞ。
今も蒼の隣でガクガクと震えている最中だ。この食事の後、魔女に滅多打ちにされる未来を想像すると俺にとってこの外食は最後の晩餐気分なのだ。
そしてもう一人顔を青くしているのは柳家の大黒柱である父さん――柳 篤である。
隣に座っている母さんが父さんと腕を組み関節を完全に決めちまっているのが理由である。
父さんが少しでも女性に顔を向けようものなら容赦なく攻め立てる魔女の前に哀れな囚人はなすすべなく己の腕を差し出し忠誠を誓う契約とするのだ・・・俺はそっと目を反らした。
母さんはにこにこ、俺の隣の蒼もメニューを目を輝かせながら見つめにっこにこである。
ちょいと家の女性陣が強過ぎやしませんかね?
ちなみに食事の代金は俺持ちである。
少しでも未来を明るくしようと自分から進んで本日ATMになる事を提案した。
気づけば通帳の桁も結構な額になっていて何をすればいいか分からなかったからいい機会ではあったのだ。両親(一人は顔が青いが)の笑顔を見ると少しは親孝行が出来ているのかもしれない。まあ比率としては命乞い七割、賄賂二割、日頃の感謝五分あとその他と言ったところか。ふっ、俺という息子がいる事に感謝していただきたいぜ。そして何事もなく家に帰して欲しいぜ。
「皆決まったかしら。もうお店の方を呼ぶわね」
店の店員に呼びかけて四人分の食事をオーダーする。
父さんはハンバーグ、母さんはミートスパゲッティ、そして蒼はグラタンで俺はサラダとポテトだ。朝からおもいのは流石に食べれん、家庭科の授業では朝の方がしっかり食べないといけないと習ったが実際朝にそこまで食べる人は少ないだろう。
待つ事数分、すぐに料理が完成し次々にテーブルに運ばれてくる。
「お兄様最高! ごちになります!」
目の前の料理を前に蒼が感謝を述べる。
全く、現金な奴だ。目に金のマークが出てるぞ、せめてそれぐらい消しとけ。
「ふふ、隼人と蒼は私達がいない間に何か面白い事はあったのかしら」
「おっ、それは俺も聞きたいな。隼人はそろそろ彼女でも・・・まあ出来てないだろうな」
「あはは、当たり前じゃん! お兄ちゃんは童貞の王様だからね!」
「よしっ、蒼と父さんちょっと店出ようか」
食事をしながら楽しく今までの出来事を語る。
以前の学校の事であったり、迷宮の事であったり様々だ。
(こうやって家族と過ごすのも悪くないな・・・)
この頃おかしい事だらけだったからか、家族との時間で多少気分が落ち着いた。
と、そう思ったのも束の間。
ふと、後ろの席に座る男性客の会話が耳に入った。
「おい、あの話聞いたか?」
「もちろん、世界大会の事だろ」
「ああ。何でも絶対者が二人も参加するってんで各国が大騒ぎしてるらしいぜ。俺も近くで最強と謳われる力を目にしたかったが残念ながらチケットが取れなかったぜ・・・」
「はは、そりゃ無理だ。宝くじを当てる方が楽かもしれん。俺達はテレビで観戦しとこう」
「それもそうだな。にしても何で参加する気になったんだろうな? 今までは全くそう言うイベントものなんかには誰も参加しなかったのに」
「さあな、俺らには分かるはずもないさ」
(へえ、そんな大会があるのか。絶対者って確かあの赤髪のおっさんの事だよな?)
赤髪のおっさんレベルが二人もいる大会なんて他の人に勝目なんてないじゃないか、と大会に参加しようとしている選手たちに心の中で合掌する。自分には関係のない事なのですぐに料理へと意識を戻す。
「ふふふ」
魔女の笑い声が聞こえた気が・・・
聞き間違えだと思いつつも壊れた機械のように首をギギギと動かし母さんに視線を移す。
――笑っていた。
目元を歪め面白いものが見つかったと口の端を三日月の形に吊り上げる。
「隼人、やっぱり私が鍛えるのは止めるわ」
「そ、そう? ははは、そりゃ良かった」
嬉しい事の筈なのにどうして頬を伝う汗が止まらないんだ!
「ええ、その代わりちょっと大会に出て欲しいのよ」
「えっと・・・大食い大会とか?」
そうだ、そうに違いない!
夏には大食い大会もあるらしいからな。よし! 頑張るぞ! 一杯食べられるようにしないとな!
「違うわ」
違うらしい。
ならば水泳大会だろうか? 俺あんまり泳ぐの得意じゃないんだけどなあ。仕方ない、今から練習すれば間に合うかもしれない。
「でも安心して。お母さんもそこまで鬼じゃないから優勝して来いなんて言うつもりはないわ」
「えっ?!」
今日一番の驚きだ。おかしい、こんな優しい人は母さんじゃない! あなたは偽物だ!
「とても簡単な事よ。私の指名する二人を倒すだけでいいの。ね? 優勝するよりもとても簡単でしょ?」
「・・・」
・・・どうやら本物のようだ。そしてやはり母さんは魔女だ。
(それは優勝する事と何も変わらないよ・・・)
俺は後ろの席のおっさん二人に血涙を流しながら呪詛を唱え続けた。
◇
「うわ~ ママあの人凄い!」
「あらあら大道芸か何かかしら?」
(・・・めっちゃはずい)
朝食を取った後、女性陣は買い物を始め男性陣はその荷物持ちを命じられていた。
俺は左手と頭に大量の荷物を積みながら右手で新しく支給されたスマホをいじる。
今朝、家に新しいスマホが早速届いた事には驚いたが前に使っていた物より機能が良くて大変気に入っている。服部さんのアドレスも早速登録しなおした。家族より早かったのは年頃の男子なら分かってくれるだろう。
「隼人ぉ俺の分も持ってくれよ~」
「父さんまだまだいけるじゃん。頭空いてるけど?」
「いや、俺はお前みたいな肉体強化は出来ないから・・・」
はあ、仕方がないなあ。
父さんから少し荷物を受け取ると左手の山に積み上げる。
先程の続きだが、大会に出場するかどうかは保留にしている。
今の俺には特殊対策部隊という立場があるから一度金剛さんに聞いてみようと思う。
もう俺の運命は金剛さんに託すしかないのだ!
ピロン!
スマホにメールの受信音が響き、送信者を確認すると丁度考えていた人物の金剛さんからだった。
「何だろ?」
任務お疲れ様のメールか? と思いメール文に目を通す。
そして徐々に眉間に皺が寄っていく。
内容としては明日本部に来てくれというものだ。
それだけであればいいのだがどうやら今回の任務で面倒な事になったらしい。俺の事で。
「はあ~」
確かに、今回俺はSランク級の怪物四体を倒したのだ。上層部に何か動きが無い方がおかしいか・・・明日はサリーに会いに行くか。
明日は人物紹介でも投稿しようかなと思っています。





