54話 極光の一撃
ローブと機械の怪物の能力を予想してみてください(*´▽`*)
能力不明の怪物達。
とりあえずそいつらの能力を確定させる。
「まずはお前だな」
半身が機械の怪物。
最初は念動力系の能力かと思ったが、長剣を造り出したところを見るに違うと思われる。
しかし、かといって生成系の能力でもない。それは今も尚奴の周りを浮遊する鉄骨や長剣を見たら明らかだ。
瓦礫を足場に奴の元へ疾走する。
「お゛らぁああ!!」
疾走する俺の左側から叫びながら拳を突き出す酒呑童子。奇襲もまともに出来ないのか。
俺はその拳を左手の甲で受けると、体をうねり、奴の腹部目掛け右腕で正拳下突きを繰り出す。
「ぬ゛ん!」
おお、マジかよ。
こいつ俺の攻撃を腹筋で受け止めやがった。
「なら、もう一発」
「させぬわ!」
背後から振るわれる短刀を首を左側に傾ける事で回避する。少し回避が遅れたのか髪が多少切られ宙を舞う。
・・・面倒だな。
少しでも気を抜けば靄の位置が把握できなくなる。
「ぶっ飛びやがれ!」
怒声と共に繰り出される酒呑童子の蹴りを俺はあえてこの身で受ける。
その際、然程の衝撃を地面に流しているので身体的なダメージはほぼない。
それでも残る衝撃で体が宙を浮き、吹き飛ばされている事を考えれば酒呑童子の攻撃がいかに強大であるかが分かるだろう。
吹き飛ばされる中、空中で体を回転させ周囲の確認をする。
重傷を負っている井貝さんと岩谷さんが施設の元まで退避しており現在治療中のようだ。護衛対象は井貝さんに近づいて泣きじゃくっている。早く施設の中に入ってほしいんですが・・・
そして俺を追走する三体の怪物に全く動く気配のないローブの怪物。
(全く動かないのが逆に不気味だな。唯一した行動と言えば“零”と数字を唱えたことぐらいか・・・?)
と、状況の確認をしているとようやく三体の怪物が俺に追いついたようだ。
投擲される三本の鉄骨を体をひねる事で何とか回避する。
酒呑童子と靄は俺の着地地点に先回りして拳と短刀を構える。
そして俺の着地と同時に、破壊の拳と煌めく銀閃が迫る。
「絶対領域」
戦闘に不要な要因を全て切り捨て、俺を中心とした半径一メートルの空間に五感を全集中する。
「なにッ?!」
「むッ?!」
背後を振り向きもせず右手を後ろに回し酒呑童子の拳を止め、靄の一刀を接触する体の一部に闘気を収束させる事で防ぐ。
反撃の為に振り返ろうとするが、その前に地面の異変を感知した。
俺の真下の地面に砂鉄が集まり龍の顔を造り出す。
(こんなことも出来るのか)
感心半分に、迫る龍の姿を眺める。
そして体全身を呑み込むほどの巨大な顎が閉じる瞬間、俺は密かに溜めていた闘気を全範囲に向け開放する。
「崩星」
超高純度の闘気は龍の顔を一瞬にして崩壊させ、それだけに留まらずに周囲の建物すら巻き込み、その尽くを崩壊させた。
「一体ぐらい殺れると思ったんだがな」
砂塵が舞い、視界には映っていないが未だ四体の怪物が存命である事は感知で分かる。
流石にSランク級という事だろう。
俺の真後ろにいた二体もあの距離から回避を間に合わせるとは思わなかったが。
「何だ?」
砂塵の中を僅かに雷光が走った。
「はッ!」
砂塵を拳圧で吹き飛ばし視界を確保する。
「ターゲット、ロック」
そこには左腕に物騒な武器を融合させた機械の怪物がいた。
融合している武器は銃の形状をしており、二本のレールの間を雷光が走り続けている。
準備は既に整ったのか銃口を俺に定め発射の段階に移行している。
「超電磁砲」
空気を震撼させるほどの轟音と共に極光が放たれた。
「マジかよ?!」
流石の俺もこれには焦る。
超電磁砲は俺でも聞いたことがある破壊兵器だ。
物体をローレンツ力によって撃ち出す装置でその速度はおよそ時速七千キロ以上とされている。
ちなみにマッハはおよそ時速千二百キロメートルである。これと比べれば超電磁砲の速度がいかに異常であるかが分かるだろう。
(速ぇえ!)
目視が全く出来ない訳ではない。
しかし、やはりこのレベルの速度は弾丸がブレて見える。
上体を僅かに逸らして回避を試みるが、
『五十』
ローブの怪物の呟きと共に弾丸が軌道を僅かに変え俺に迫る。
「ッ?!」
最早言葉を出す余裕はない。
全身の筋肉を無理矢理動かし上体を更に倒す。
紙一枚、皮膚一枚の距離でなんとか弾丸を回避する。
俺が回避した事で弾丸はそのまま突き進み、住宅、ビルを貫通し、勢いそのままに四方を囲う結界の一部までもを貫通し大穴を開ける。しまいには遠くに鎮座する山の山頂にぶつかり山頂部分を丸ごと吹き飛ばした。
あまりの熱量によって建物と山の弾丸が通過した部分がアイスのように赤く溶けている。
「・・・」
絶句だ。その光景に言葉が出ない。
(ラ〇エルかよ・・・)
規格外の威力と射程に某アニメの青い使徒さんが思い浮かぶ。
機械の怪物に目を向けると撃った反動からか左腕が赤熱し煙が出ている。
どうやら流石に連発は出来ないようだ。あの威力を連発できるなら冗談抜きで太陽神を出さなければ終わる。太陽神ならば弾丸が到達する前に燃やし尽くす事も可能だが、前提として超電磁砲を撃つ装置すら熱で溶解して生成する事も出来ないだろう。残念ながら現在は周囲に敵以外の存在が多すぎる為太陽神は発動できないが・・・早く使いこなせるようになりたいものだ。
しかし、これで確定だな。
機械野郎の能力は【磁力操作】だろう。
磁力、電磁力を操作する事で砂鉄で長剣や龍を造り出すことも、超電磁砲を放つことも可能になる。
厄介だ・・・非常に厄介だが、俺はもう一体の怪物の方に危険を感じる。
俺が投擲した長剣が軌道を変え、同じく超電磁砲の弾丸も途中で軌道を変えた。
最初、軌道を操作する能力かと考えたが、途中でその思考を改めた。
奴の呟く数字、それだけでなく俺の調子がいつもと比べると格段に悪い事、それに対し奴等は位階を上昇させている状態の俺の攻撃をある程度躱せているという事実。
疲労を隠すように腕を上げ、指を開いて顔を覆う。
おそらく、奴の能力は
「・・・確率変動」
ローブの隙間から三日月のように嗤う不気味な口が見えた。
【磁力操作】と【確率変動】のルビどうしよう(-ω-;)ウーン





