44話 特殊任務
投稿したと勘違いしてました・・・
怪我もすっかり回復し、入院して五日目で退院することとなった。
医療機関の人達がその異常な回復速度に驚いていたがその理由を教えるつもりはない。俺はこの五日間で常に闘気を体に循環させることで回復速度を向上させたのだ。普通数時間もあれば完全回復するのだが、やはり神の力は異常だと改めて感じた。
それから大事を取って一週間の養生を終えた後、ようやく現場に復帰する運びとなった。
そして早速俺は本部の会議室に呼ばれ、朝早くに出勤している。
「おはようございます」
ドアを開き、会議室の中を見回すと前の方に金剛さんの姿が見える。
「ああ、おはよう。ふむ、見たところ怪我はすっかり治ったようだな」
「ええ、おかげさまで。それよりも他のメンバーは後から来るんですか?」
「それも含めて説明しよう。とりあえず座ってくれ」
促されるままに近くの席に腰を下ろす。
金剛さんのどこか緊張している様子を見るにそれなりに大きい用件があるのかもしれない。
ついこの前Sランク級の怪物と対峙したばかりだというのに・・・運が悪過ぎるだろ俺。
「それで? 説明して貰ってもいいですか」
「ああ、まず今回ここに呼んだのは柳だけだ。それと言うのも、柳には今回単独で特殊任務を遂行して貰おうと思う」
「特殊任務ですか?」
何故わざわざ新人の俺に? しかも単独だと?
大抵のことであれば金剛さんや他のメンバーでも十分なはずだ。つまり俺にしか出来ない条件があるのだろうか。
「そうだ。柳が入院している間にある人物の能力情報が漏れたみたいでな。それによって他者からの接触、場合によっては戦闘行為に及ぶ可能性も考えられる。柳にはその人物の護衛を頼みたい」
「それほど貴重な能力なのですか?」
「ああ、能力の名は【起源昇華】。生物に限らずあらゆる物の能力を底上げする力を持っているとのことだ。ただ、今は能力を上手く扱いきれずそこまで強化する事は出来ないそうだ」
「・・・成程、狙われそうですね」
その人物の能力は少し俺に似ている。主に何かを昇華させる部分がだ。しかも生物に限らずあらゆる物に対して有効だと言う。その戦略的価値は計り知れないだろう。
ただ、違う部分があるとすれば俺は自分に対してしか能力を発動できない事と、やろうと思えば存在上昇に際限はないという事だ。
疑問としては何故そこまでの能力が今まで知られていなかったかという部分だろう。
俺の場合は能力数値がバグって計測出来ず、無能力者と断定された訳だが、その人物はまだそこまで強化は出来ないという話だ。
ならば数値の上下もそこまで大きなものではないはず。
結果、能力数値の計測は可能という事になる。
相当能力に気を使ってきたのか。もしくは情報を制御出来るほどに身分が高い人物なのか。
「ちなみにその人物だが、高宮家の人物だ」
「え?!」
思わず驚きの声が出てしまった。
他人に関心を殆ど持たない俺でも知っている超有名な名家だ。その権力は世界中で通用するほどで、この特殊対策部隊が好き勝手出来るのも高宮家の助力が大きい。
確かに高宮家の力であれば情報を秘匿する事が可能だろう。逆に何故情報が流出したのか疑うレベルだ。
「まあ、驚く気持ちも分かる。俺も当初は驚いたよ。【起源昇華】は高宮家の次女の能力だ。情報が漏洩した事で三日後に現在在住している場所を離れ別荘に移動するらしい。柳にはそこで護衛に紛れてその次女――高宮 瑠奈の保護を頼みたい」
「紛れる? つまり、俺が特殊対策部隊の一員だという事は伏せろという事ですか?」
「そうだ。こちらで柳が護衛に入れるよう手配は済ませるから潜入できないという事はない。ただし特殊対策部隊がいる事で敵が恐れて出てこない可能性がある。出来れば今回で元から根絶やしにしておきたい」
確かに俺達の存在は敵にとって相当厄介なものだろう。今回俺に任務が来たのは俺が新人であまり周囲にその存在が知られていないからだろうか。
「そして今回の任務は上層部の一部、かなり信用が出来る方々からの依頼だ。あちらも一枚岩ではないからな。我々には他に仕事があると言って護衛する必要はないと訴えた者達もいるらしい」
「うわぁ・・・」
今回の任務でそいつ等がちょっかいかけてこないだろうな?
複数の組織から対象を護衛する事なんかになったら相当面倒だぞ・・・
「と、まあ今回は上層部が信用ならん状況だ。柳も気付いているだろうが、前回の任務から変な行動を起こしている連中もいる。何処に目があるとも限らんからな、この場には柳しか呼んでいない」
そういう事だったのか。
この室内にも薄いが障壁が張られている。万全の状態だという訳だ。
「了解しました。謹んでお受けします」
別に俺一人という訳ではないのだ。高宮家のお抱え能力者もいるのなら、もしかしたら俺は働かなくてもいいかもしれない。気楽にいこう。
「ありがとう。詳細は後で資料で渡す。正午過ぎに再度会議室に来てくれ」
「はい」
◇
会議室から退室しとりあえず本部をぶらつく。
(何して時間潰そうか)
まだ見に行ってない場所を訪れてみるか。俺が知らない施設がたくさんあったはずだ。
エレベーターに乗り込み目に付いた一番上の数字、十五階を押してみる。
「癒される場所がいいなあ・・・」
そうだな、例えばモフモフルームとかなんてあったら最高じゃないか?
日々の疲れも一発で吹き飛ぶだろう。
ん? 待てよ・・・俺は今どれだけ稼いでいるんだ?
ペットを飼えるぐらいの仕事はしてきたつもりだ。
よしっ! 帰ったら通帳確認してペットショップに行こう!
チンッ
どんな動物を飼おうかと妄想を膨らませていると、目的の場所に到着しエレベーターがゆっくりと開き始める。
「おお、すげえ!」
その空間は公園にあるような草木が一面に広がっている場所だった。
「あははは!」
「待つのです!」
「ワン!」
そして草原の中を走り回る影が三つ。楽しそうにじゃれついている。
二つは服部さんと桐坂先輩のものだ。そしてもう一つ。俺はその影を目視すると驚愕に目を開いた。
「サ、サリー!」
「ワウ?」
不思議そうに辺りを見回し俺を探す白い物体。
「ワン?!」
そしてようやく俺を見つけこちらに駆け出す。
か、可愛い!!
俺が引っ越す前、隣駅のペットショップで売られていたのがポメラニアンのサリーだ。
不運な事にその付近に怪物が出現した事で建物が倒壊し、サリーは救助隊に引き取られたはずだったのだが、まさかまた会える日がこようとは・・・
「ワン!」
元気に飛びついてくるサリーを優しく抱き留める。
「・・・最高だ」
このモフモフ感、凄い癒される。今までの疲れが吹き飛んで自由に空を羽ばたくような感覚だ。
「柳君久しぶりっす! その子と知り合いなんすか?」
素早く移動した服部さんが元気に尋ねる。
その後ろにはバテバテの桐坂先輩が地面に座り込んでいた。
「はい。以前住んでた場所の近くのペットショップで。それよりもどうしてサリーがここに?」
「ええっと、サリー?ちゃんは牙城さんが任務終了後に偶々寄った救援隊の施設で保護されていたのを連れてきたみたいなんすよ。あの人何だかんだ可愛いものとか見るの好きですからね」
牙城先輩、俺達と同じ特殊対策部隊の一員で左目を髪で隠した寡黙な男性だ。何だか近寄りがたい雰囲気を出していたが、そこまで怖い人ではないのかもしれない。今度犬のぬいぐるみでもプレゼントしてみようかな。
「はあはあ・・・その子の体力、おかしいのです・・・どれだけ走り回っているのですか!」
「いやあ、萌香ちゃんが体力無さ過ぎだと思うっすけど?」
「戦闘隊員の基準で考えないで欲しいのです! こちとら身体能力は一般人と変わらないのですよ!」
「ははは、一杯遊んでもらえて良かったな」
「く~ん」
サリーを優しく撫でると体を俺に摺り寄せて来る。
・・・もう、ここに住んでもいいですかね。可愛すぎだろこのヤロー!
正午までの数時間俺は二人と一匹で遊びまわった。
ちなみにサリーはここの八階にあるフリールームで飼う事になったらしい。いつも気軽に会う事が出来るようになった。新しく飼おうと思っていたが、これからはサリーで癒されようと思う。グヘへ
今回から四章の開始です!
隼人に与えられた任務はまさかの護衛任務。しかも敵の数は未知数!
最後まで守り切れることは出来るのか!最後までハラハラマックスでいきたいと思います(*´▽`*)
人物紹介があと少しで完成するのでちょいとお待ちを。





