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神々の権能を操りし者 ~能力数値『0』で蔑まれている俺だが、実は世界最強の一角~  作者:
第三章 迷宮編

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43話 密会

 そこは人が寄り付かない廃ビル。


 その中の一室。仄かに暗い空間に数人の影があった。


「ふむ、まさか倒されるとは思っていませんでしたねぇ」


 そう言葉を零すのは、丸眼鏡をかけた白衣の男だ。

 怪しげに笑い、その瞳にはおぞましいほどの狂気が宿っている。


「はっ! やはり俺様が出るべきだったんだ! あんなもやし野郎じゃ話にならねえよ!」

 

 怒声を上げる男の容姿は、明らかに人間のものではなかった。

 額からは禍々しい角が二本、肌は黒に近く、ドクンドクンと赤黒い血流が流れているのが分かる。


 誰が見ても分かるその存在の名は――『鬼』だ。


 それは日本の民話などで語られる伝説上の存在だ。

 頭に角を生やし、その手には棍棒を持ち、人を襲い喰らう。地獄の獄卒としても有名だろう。

 ただ、この場にいる鬼はその手に棍棒を持たず、何故か酒を握っていた。


 怪物と人間が同じ場所で喋っている。それだけでもこの場がどれだけ異常な状況であるかかが分かるだろう。


「さあ、それはどうかのう」


 ひしゃげた老人のような声が響く。

 鬼と白衣の男はその声を発した人物へと目を向けた。


 そこには何とも形容しがたい靄があった。

 いや、僅かに人の輪郭が見えるが、何故かしっかりと確認する事が出来ない。その何処か掴みどころのない姿は意識しなければすぐにでも消えてしまいそうになる程だ。


「どういうことだ?」


 鬼が尋ねる。

 本来であれば、己の力を疑われるような言葉を言われれば激怒するほどにこの鬼は血の上りが早い。

 にも関わらず、靄に冷静に問いかける姿から、その靄がただものではなく鬼が認めるほどの存在である事が分かる。


「あ奴は臆病な奴じゃ。絶対に勝てる相手しか空間に引きずり込まん。今回も勝てると踏んで挑んだのじゃろう・・・しかし、負けた。これの意味する事が分かるか?」


「弱かったからじゃないのか?」


 死んだ者にさして興味の無い鬼は、どうでもいいと言うように淡々と言い放つ。それに続き白衣の男が口を開く。


「ふむ、イレギュラーの存在ですかね。彼は物理攻撃で仕留める事は不可能に近い。何せ空間全土に存在する核全てを破壊するには圧倒的に射程が足りませんからね。考えられる可能性としては二つ、絶対者クラスの能力者がいたか、可能性は限りなく低いですが・・・多重能力者(マルチ)がいたかですかね」


「いやいや多重能力者はありえないだろ! あれは理論上は能力の複数所持は不可能ではないと言うだけで、まず魂の器が持つはずがねえ?!」


 すかさず白衣の男の意見を鬼が否定する。

 何せ多重能力には大きな欠陥があると知っていたからだ。


「いや、もしかしたらあり得るかもしれんぞ」


「何?」


 多重能力者、それは人類が求める絶対的な存在だ。かつて、あらゆる機関がその全霊を持って多重能力者を造り出そうとした。その結果はある意味では成功であり、同じく失敗でもあった。


 多重能力者を造り出すことには成功した。その力は研究者達の想像通り、いや、想像をはるかに超え、圧倒的な力で以て怪物の尽くを殲滅した。


 ・・・しかし、その一週間後。猛威を振るっていた多重能力者は命を落とすことになる。

足りなかったのだ・・・何もかもが。その肉体も魂の器も、複数の能力を持つには狭すぎた。


 各国の機関はこの結果をもって多重能力者の研究から手を引いた。研究に必要な莫大な費用とそれによって得られる結果が釣り合わなかった為だ。


 だから鬼は言った。あり得ないと。

 しかし、その事は目の前の靄も当然知っている。故にその根拠を述べる。


「お主の意見は尤もなものじゃ。じゃが、儂が迷宮を回収に行った時、微かじゃが炎の能力を使った痕跡が残っておった。炎と言えば、あ奴が最も警戒すべき存在じゃ。僅かでも己が敗北する可能性があるのなら空間に引きずり込むような真似はしないはず・・・つまり、あ奴にとって予想外の人間が炎を操ったことになる。可能性としては多重能力者の方が高いのではないかと儂は思う」


 突如として消えた迷宮。その犯人こそこの靄である。誰にも気付かれる事なくあの廃工場に近づき迷宮を回収したのだ。


「まさか・・・天然(ナチュラル)ですか?!」


 目を大きく開き、興奮するように顔を赤くする白衣の男。


 国が秘密裏に多重能力者の研究を続けていたという可能性もゼロではないが、多重能力者という特別な存在を今回の様な不確かな任務につけるはずがない。それに、何か動きがあれば多少なりとも情報が回ってくるぐらいには男の地位は高かった。


 総合して、その存在が多重能力者であった場合。人工的なものではなく、何にも手を加えられていない天然の存在であるという事だ。その価値は計り知れない。


「欲しい! 何としても手に入れましょう! ああ、早くその体を解剖したい! どれだけ貴重な情報が手に入れられるのかっ!」


「落ち着かんか。先を急げば足をすくわれるぞ」


 呆れるように諫める靄によって白衣の男は平静を取り戻し軽く咳払いをする。


「失礼」


「いや、よい。貴様にも目的があるのだからな。じゃが今回集まった理由は他にある」


「何か見つけたのか?」


「ああ、面白い能力者を見つけた。その能力の名は【起源昇華(オリジンサブライム)】。生物に限らずあらゆる物の能力を底上げする力を持っている」


「ほう、面白い能力ですね。その人物を攫うのですか?」


 白衣の男は面白そうに薄く笑う。

 その力をこちら側に引き込めればかなり戦力が強化されるだろうと。

 そしてその際、能力者の意思は関係ない。脳さえ無事であればいかようにも出来る。ならばそのおもちゃでいくら遊んでも構わないだろうと考えていた。


「ああ、そのつもりじゃ。問題はかなり警護が固いという事だ。何分そ奴の身分がかなり高いようでのう、優秀な能力者がわんさかおる」


「そりゃ楽しみだ! 今度こそ俺が出てもいいよなあ!」


 獰猛な笑みを浮かべ闘志を燃やす鬼。その覇気によってか建物に亀裂が入る。


「まあ、良いじゃろう。近々別の場所に移動する為外に出るらしいからの、その時を狙って確保せよ」


「はは! 腕がなるぜ! 何なら特殊対策部隊の奴らも来ねえかな、多重能力者とも戦ってみたいんだが」


「貴重な存在ですからもし居たとしても壊さないで下さいよ? 貴方は少々やりすぎますからね」


「そりゃあ相手次第だな。ふざけた攻撃ばっかするようじゃあついつい潰してしまうかもしれん」


「はあ・・・本当に脳筋ですね」




 新たな闇が表舞台に踏み出す。


これにて三章は終了です。間に人物紹介を挟むかもです。

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終焉都市の雑草
連載開始です(*´▽`*)
神々の権能を操りし者2
― 新着の感想 ―
[一言] お初じゃ無いコメ失礼します。ラーでしたか、闘いのイメージが無くててっきりインドの方のスーリヤかブラフマー、いっそのことジヴァかと思ってました。主人公には素手以外にも神器とか持ってて欲しいです…
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