41話 強がりの勲章
修正がちょっと時間かかりそうなので終わり次第また報告します。
今回はちょっと時間なかったので話を二つに分けて前編と言う形になります。
その後の話をしよう。
怪物に取り込まれた空間が崩壊し、洞窟へと戻った俺達は襲い掛かってくる雑魚を蹴散らしながら洞窟からの脱出を果たした。移動の最中、何やら口笛を吹きながら気分良さげな服部さんを見るに、多少なりとも彼女の力になれたのではないかと思う。
するとそこには、今まさに洞窟に再突入をしようと試みる金剛さんと西連寺さんの姿があった。そしてその隣には桐坂先輩と何故か菊理先輩の姿もあった。
俺達の姿を見て、皆一様に安堵の表情を浮かべ、事の経緯を尋ねてきた。簡単に説明し、帰還を優先しようとするも、その後の菊理先輩の質問攻めと桐坂先輩の号泣が兎に角凄かった。
まず菊理先輩だが、何があって予言を覆すことが出来たのかをひたすらに聞いてきた。
「何があったんですか! 隕石でも降ってきたんですか! 教えて下さい!」
という具合に必死な表情でこちらに顔を寄せてきた。
それに対して俺の回答は「超頑張りました」というもの。繰り返すが、俺は今回の件について何か陰謀的なものを感じているため、出来るだけ己の手の内は晒したくないわけだ。
当然そんな答えに満足しない菊理さんは服部さんにもどういう事かを問うが、俺は事前に俺の能力について喋らないで欲しいと伝えているためほとんど俺と同じ回答しか返ってこなかった。
徐々に眉間に皺が寄りだす菊理さんに対し、金剛さんが「まあ、今はいいじゃないか。それよりも早く二人の治療をしないとな」と言って諫め、菊理さんはそこでようやく俺達の状態に気付いたようで己の行動を恥じる様に顔を赤くしていた。まあ、ぱっと見はそこまで怪我してるようには見えないのでそこは仕方ないだろう。
俺に軽く視線を飛ばしたところを見るに、金剛さんは何やら気付いていたようだがあえて口に出さなかったという事は彼も今回の任務について疑問に思うところがあるのかもしれない。
そして次の号泣した桐坂先輩についてだが、
「何で治らないのですか!!」
と、俺の火傷が全く治らない事に嘆いておられた。
怪我の患部に手をかざして治癒しようとするも一向に俺の火傷が引く様子はない。
まあ、この結果は最初から分かっていたことだ。
仮にも神の炎で焼かれたのだ。そう簡単に回復するはずがない。
ちなみに先輩の能力が劣っているという事は断じてない。服部さんの怪我をその患部に触れるだけで一瞬にして全快させたところを見るに、非常に優秀な能力者である事が分かる。ただ、今回は相手が悪かっただけの話だ。
「ふっ、その程度では治りませんよ」
「どうして得意気なのですか?! 怪我してるの後輩なのですよ! やっぱり菊理ちゃんの予言は当たっていたのですよ、このままじゃ後輩が死んでしまうのです!」
と俺を回復し続けながら泣きじゃくっていた。
先輩が心配して俺の体をさすさすと撫でていたのが最もダメージが大きかったのは口が裂けても言えない。叫ばなかった俺を誰か誉めてくれ。
その後、俺は緊急で特殊対策部隊の持つ医療機関に搬送された。
◇
そして、現在。
「口を開けて下さいね~」
「あ~ん」
任務翌日の今日。
結局、俺の火傷を治すことはかなわず、完治するまでここで療養する事になった。
目の前には非常に魅力的なメロンを揺らしながら天使の様な笑みを浮かべるナースさんが俺の看病をしてくれている。眼福である。俺はこの時のために今回頑張ったのかもしれないと思う程だ。
「ナースさん。連絡先教えていただけませんか? 一生幸せにしますよ」
「ふふふ、ありがとうございます。でもごめんなさいね? 私には愛する夫がいますのでお気持ちだけ貰っておきますね」
「・・・」
絶望である。俺は天界から一気に地獄へと叩き落とされた。このナースさんは天使ではなく清い新品男性を弄ぶ淫魔であったらしい。
ハイライトの消えた瞳で朝食を食べる。俺の心境はぼろぼろだが、淫魔さんはにこにこだ。
・・・
それから十分後。
地獄の生殺しタイムをようやく終えた俺は不貞腐れるように布団に潜る。あんなダイナマイトボディを思春期男子の前に出さないで欲しい。俺達は繊細なお年頃なんだ・・・
この世の不条理を嘆く最中、病室のドアがガっと開け放たれる。
「柳君体調大丈夫っすか!」
そこには何やら香ばしいポーズを決めた服部さんが立っていた。
「・・・何やってるんですか?」
何故かナースのコスプレをした・・・
えっ何? 今ナースのコスプレ流行ってるの?
つい最近にもどこぞの妹殿が同じことしてたよ。
「これはその・・・元気になってほしくて・・・」
恥ずかしそうに頬を赤く染め腰をフリフリする姿は大変可愛らしいが、その発想が蒼そのものである。俺はそんなにコスプレ好きの変態だと思われているという事なのか? 全く、勘違いも甚だしい。ただ脳内に永久保存するだけだというぐらいだ。
「その気持ちは嬉しいのですが・・・や、いいです。それよりも先輩の方こそ体調は大丈夫なんですか?」
「ええ! 萌香ちゃんのおかげで元気いっぱいっす! もういつでも任務に行ける状態っすよ!」
「はは、それは良かったです。ですが、もう無茶はしないで下さいね?」
「も、もうしないっすよ! だって・・・柳君が守ってくれるんすよね?」
うん・・・なんか今日の先輩はいいな。
元気の中に恥じらいがある。
「ええ、守りますよ」
正直この言葉は強がりが大半を占めている。
俺は自分の事を最強などとは微塵も思っていないし。誰かを完璧に守り切れる程の余裕があるとも思っていない。
しかし、そうだとしても服部さんの笑顔が見れるのならそれでいいさ。ちょっとぐらいかっこつけてもいいじゃないか。
「っ?! えへへ~」
嬉しそうに照れていらっしゃる。チョロ過ぎて少し心配になるレベルだ。
弟に褒められて照れる姉の様な感じだろうか?
「あっ、そうそう報告があるの忘れてたっす」
「報告?」
思う存分照れまくった後、思い出したようにそう言葉をこぼす。報告の方が圧倒的に重要だと思うのだがそれでいいのか・・・
「ええ、今朝、突如として迷宮がその姿を消したんすよ!」
「消した? あのバカ広い空間がですか?」
「そうっす! 跡形もなく消えたらしいんすよ」
何かあったのか? 俺達があの怪物を倒したからか?いや、それだと何故今日まで消えなかったのかが謎だ。
それとも誰かが消した? どうやって? そんな能力は聞いたことがない。う~ん、考えても分からん。
やはり今回の件は何か裏がある気がする。完全に勘ではあるが、こういう時の勘は案外馬鹿にならない。ここから退院したら少し調べてみるか・・・
次話29日朝予定
追記:30日の朝でした・・・てへ。ちょいデータが飛んだので昼頃になるかもです(;´д⊂)
 





