32話 引っ越し
頂いた技が凄すぎて鳥肌立ったΣ(・□・;)次話で出るかもです。
「蒼、ちゃんと準備出来たか?」
「もう完璧っすわ、何時でも出れるぜ」
「それは上々」
ニヒルに笑みを浮かべサムズアップする蒼。
俺達は今引っ越しの準備中だ。
荷物をまとめて持ち運びやすいようにしておく。
あっちの方で順次運び出して貰えるらしい。
ちなみに両親には引っ越すことも俺が特殊対策部隊に入隊した事も既に連絡済みだ。その返答が『お? 何か面白そうなことになってんなあ、こっちが一段落したらそっち帰るわ~』と何とも軽いものではあったが息災の様で何よりだ。
ピンポーン
そして丁度その準備が完了したところで玄関のチャイムが鳴った。
「じゃあ行くか」
「うん」
手に持てる軽い荷物だけ持って玄関のドアを開く。
まず目に入るのは黒服のダンディーな男性と後ろの滅茶苦茶高級そうな車。
確かあれは、り、リムジン? だったかな。アニメとかでよく見る奴だ。まさかこれに乗る日が来るとは。
「お迎えに上がりました柳 隼人様、蒼様。どうぞお乗りください」
「「は、はい」」
慣れない対応に二人して声が上ずってしまう。
そのまま黒服の人に車内に誘導され乗り込む。
「広っ!」
こんなに奥行きがあっても無駄じゃないのか?
庶民の俺には何処に需要があるのかさっぱり分からん。
「凄いよお兄ちゃん! VIPになったみたいだよ!」
うん、VIPだからね。
お兄ちゃん一応特殊対策部隊の一員になった訳なんだけど、蒼の中では何も変わっていないのかもしれん。
「それでは参ります」
「あ、お願いします」
おお、車が動いているのに全く音が出ない。これが高級車か。
「お兄ちゃんどう? セレブっぽい?」
椅子にもたれ掛かってすっかり馴染んでいる蒼に目をやる。
蒼はオレンジジュースの入ったグラスを呷ると、サッと髪をかき上げる。その際流し目も忘れない。
「そうだな。服部さんの前でやってみたらどうだ」
「ふふ、鈴奈さんが私の美しさに羨望する姿が目に浮かぶよ」
よし、その時は全力で他人のフリをしよう。
恥ずかしくて死んでしまうからな。
およそ三時間走行し、ようやく目的地に到着した。
市街地から少し離れた場所に建つ重厚な建物。
そしてこの建物こそが日本の最強部隊、特殊対策部隊の本部だ。
「ふっ、俺も遂にここまで――」
「お兄ちゃん早く行こ! ひゃっほ~い!」
「・・・」
ひゃほ~い! じゃあねんだよ。
今俺決め台詞言おうとしてたんだけど! 何途中でブレイクしてくれちゃってんの?
黒服の人が少し笑ってるじゃん。
俺は幾分か顔を赤く染めながら蒼の後を付いて行く。
・・・
「おお~」
建物内は最新鋭の機械で埋め尽くされていた。
空中を浮遊している球状の物体や人型の物まで存在している。
今まで俺達が見てきた世界とは明らかに違っていた。隣の蒼も興味深げに目を輝かせている。
俺も色々と心を惹かれる物もあり見て回りたいが、それよりも気になる事があった。
ジーっ、
と、こちらを凝視する少女が一人。
小学生ぐらいだろうか、髪の毛を三つ編みにし、その瞳は大きく可愛らしい。
しばらく俺を凝視し続けた後悪い人ではないと思ったのかトテトテとこちらに駆け出す。
目の前まで辿り着くとその小さいお口を開く。
「お兄さん達はお客さんなの?」
「お客さん・・・ではないけど、これから厄介になる者だね」
「何この子めっちゃ可愛い!」
一人盛り上がる蒼、こらこら止めなさい。フルフルと怯えてるじゃないか。
「わ、私を子ども扱いしないで! これでも萌香は特殊対策部隊の一員なのです!」
おいおいマジか、全然そんな風には見えなかった。こんな少女が本当に戦えるのか?
「妹が失礼しました。今日付けで特殊対策部隊に就任することとなりました、柳 隼人です」
少女、もとい俺の先輩の頭を撫で続ける蒼を引っぺがし頭を下げる。
俺は上下関係はしっかりとするタイプだ。たとえ相手が年端もいかない様なあどけない少女だとしてもそれは変わらない。
「おおう! 萌香はあなたみたいな人を待っていたの! いつもいつも子ども扱いされるからムカムカしていたの!」
「ちなみに御歳は?」
「十歳なのです!」
うん、ばっちり子供ですね。
もしかすると伝説のロリBBAかと少し期待したが、夢は夢であったようだ。
「おそらく皆さんは先輩の美しさに嫉妬しているのでしょう」
「先、輩! そ、それなら仕方ないですね。萌香が美しすぎるのがいけなかったのです」
「ヤバイ、ロリに美しいとか言うお兄ちゃんがキモ過ぎる件について」
「ちょっと黙ってろ」
今先輩が喜んでる最中なんだから。
機嫌良さげに揺れる三つ編みが何とも可愛らしい。
「ふふふ、萌香は治療担当の能力者なのであなたが怪我をしたら死んでさえいなければ完璧に治療してあげるのです!」
成程、彼女は戦闘員ではないのか。
それにしても治癒タイプの能力とは珍しい。実際に見たのは初めてだ。
「君が新しい隊員か」
背後から男性の声がした。
振り返り確認するとそこには無精髭を生やした男性が立っていた。
筋骨隆々とした逞しい肉体が彼が実力者であることを物語っている。
「はい、柳 隼人と言います!」
「うん、元気がいいね! 俺は金剛 武って言うんだ、よろしく」
「お疲れなのです! もう討伐してきたのですか?」
「ああ、Bランクの奴だったからな、結構早く終わったよ」
一人でBランクの怪物を倒してきたのか。
やはり実力者だな。どんな能力を持ってるんだろうか?
そんな俺の考えを見透かされたのか、
「お? 柳君は俺の能力が気になるのか?」
と尋ねられる。
少々動揺したが何もやましい理由はないのでそれらしい事を言っておこう。
「えっ! あ、そうですね。今後任務を共にすることがあると思いますので互いの能力は把握しておいた方がいいのではないかと」
「尤もな意見だな。よしっ! じゃあ俺とちょっと遊ばないか?」
「遊ぶ、ですか?」
勿論それが本当に文字通りの遊びではない事は分かる。
しかし、俺達が能力を使えるような場所があるのか?
「ああ、ここの地下にドデカい訓練場があるんだよ。そこで軽く手合わせしよう」
「へえ、そんなのがあるんですね。ではお願いしてもいいですかね」
「そうこなくっちゃな! 後ろで乳繰り合ってるお二人さんもどうだ?」
乳繰り合ってる?
後ろを振り返ると嫌がる先輩に頬ずりしながら抱き付いてる蒼の姿があった。
勿論マッハで止めに入った。
『ありがとうなの!』と抱き付いてくる先輩にトキメキました。
まあ、俺はロリコンではないので何も心配する事はないです、安心めされよ。
◇
「じゃあ、始めるか」
「お願いします」
地下の訓練場。
その広さたるや東京ドームぐらいはあるのではないかと思う程の広さだ。
女性二人は離れた場所で観戦している。
先輩は終わったら治療するからと、蒼は何か面白そうだからと。
間違えそうになるが前者が小学生で後者が中学生である。
「それでは行きます――戦神」
特殊対策部隊の実力。
胸を借りるつもりで行かせて貰おう。
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