31話 立つ鳥跡を濁す
他作品と技名が被ってしまったらしいので「星穿ち」を「星穿」としました。・・・ほとんど変わっていないのは技名が思いつかなかったからです! 技や好みのヒロインを募集します! 感想お待ちしております(*‘ω‘ *)
それから二日経ち、怪我という怪我も特になかった俺はすぐに病院を退院し、今現在学校に登校しているところである。
「ふむ」
おかすぃ~
おかしいぞこれは、俺めっちゃ避けられてね?
確か蒼の話では掌返しがトリプルアクセルぐらい凄いって話だったはずなんだが・・・
はっ?! トリプルアクセルってことは三周回って元に戻ってるじゃないか!
何という巧妙なトリックだ、全く気付かなかったぜ。
※トリプルアクセルは三回転半です。
いやまあ何も変わってない訳じゃないんだがな。
俺を見るその瞳が以前とは明らかに違う。
その瞳に映るのは困惑、疑惑、そして畏怖。
「何故だ?」
どうして恐れられる?
怪物を倒しただけなんだが。たったそれだけで恐れを抱かれるなら誰も特殊対策部隊に憧れたりしないよな?
う~ん、わからん。
(見下されるよりはましか・・・)
もう俺は他人に舐められる訳にはいかないからな。
今まで蒼に迷惑掛けた分これからは一切自重などしない。
・・・
今までとは違い堂々たる様で教室に入る。
クラスメイトは俺を視界に入れると体を少しビクつかせながら顔を近づけて小声で会話をする。
何を言っているのかは聞こえんが、俺の事を言い合っているのだけは分かる。
ちょいちょい視線を向けてきてるからな。
どうでもいいので、とりあえず自分の席に座る。
(始業のチャイムまで寝るか)
机に体を倒そうとした時、
「おい、インチキ野郎! 何堂々と学校に来てんだよ!」
「あん?」
喧しい怒声に体を元に戻しそちらに顔を向ける。
そこには少しビクつきながらも高圧的に俺を見下ろすパリピ二号と三号君の姿が。
それよりもインチキってなんだ?
今までテストのカンニング何かしたことはないが。カンニングしてたら補習はしてねえよ。
「インチキって何だよ?」
「とぼけんじゃねえ! ごみカスのお前があんな力持ってるわけねえだろうが!」
「そうだそうだ! 潔く退学しろ!」
その声にはどこか怯えの色が含まれていた。
息も荒く緊張しているのが分かる。
(成程な・・・)
そこで俺はようやく皆から向けられる畏怖の視線について納得した。
彼等は恐れているのだ、今まで見下してきた存在が自分達に牙を剥く事に。
散々馬鹿にしてきたのだ、それ相応の事をし返されるかもしれない。
だから否定する。
そんなはずはない、こいつは無能力者だ、俺達よりも下の存在何だと自己を正当化する為に。
ふん、全くもって馬鹿らしい。
わざわざ仕返す訳が無いだろう、時間の無駄だ。
――と少し前の俺だったら思っていただろう。
俺は笑みを浮かべる、それを見たパリピが小さく悲鳴を上げ一歩下がる。
こいつ等は未だ俺を舐めている訳だ。
蒼の兄を舐めているのだ、その間違いを正さなければいけない。
どうせ俺は今日限りでほとんど学校に通うこともなくなるだろうしな。
立つ鳥跡を濁しまくって去ってやろう。
――戦神
教室と言う狭い空間で、突如として現れる絶対的強者の威風に誰もが言葉を無くし顔を青く染め尻餅をつく。
「じゃあやろうか」
「な、何だ?! 体が震えて。いや、俺がビビってる訳ねえ! お前は無能力者だ、そうじゃなきゃいけねえんだよ!」
「そう思うならば、そう思いたいならばかかってこい。その代わり一度手を出せば・・・生きていることを後悔させてやろう」
「ひっ! あ、あああああああ!!」
悲鳴を上げながら教室を飛び出す二人組。
途中何度も躓き地面を這いながら逃げていった。
・・・これで大丈夫だろうか。
もう俺は見下される対象ではなくなっただろうか。やはり一人ぐらい殴って
「馬鹿たれが」
ポコンっと子気味良い音を立てて俺の頭に何かが当たる。
顔を向けるといつの間にかとなりには二階堂先生が立っていた。
その手には出席簿が掲げられていることからそれで殴られたのだろう。
突然の事でしばし唖然とする。
頭に上った血が急速に冷めていく。
「ほら、もうチャイムが鳴ってる。貴様も早く座らんか」
「う、うっす」
「ったく。これじゃまともに授業も出来んではないか」
二階堂先生はざっと教室を見回す。
腰が抜けて数名立てない者や今だ震えている者がいる。
「お前らも早く席に着け、授業の時間だ」
「で、ですが」
「私は早くしろと言っているんだ」
生徒の訴えを即断すると、その眼光で鋭く睨みつける。
「人を侮蔑し見下す暇があるなら、授業ぐらいまともに受けろ」
こ、怖ぇ~。
睨まれた生徒が恐怖で固まってるよ。流石【メデューサ】、その二つ名に違わず睨んだ者を石に変えてしまうのか・・・
「そして柳、貴様は放課後職員室に来い」
「は、はい」
おっと、これは指導されちゃう感じですかね。
よしっ、土下座の準備をしておこう!
・・・
「ふ~」
開ける、開けるぞ。
いや、まずはノックだったな。
職員室のドアの前で緊張しながら俺は立ち尽くす。
「お? もう来てたのか」
「ひゃ?!」
思わず変な声が出てしまった。
振り向くと俺の後ろには二階堂先生が立っていた。
「まあ、中に入ってから話そう」
先生に促されるまま職員室へと入る。
二階堂先生の席はドアの近くで先生が座ると空いてる席に座るよう指示される。
「差し当たって、特殊対策部隊就任おめでとうと言っておこう」
「え? あ、はい。と言うか何で知ってるんですか?」
「まあ、色々とこっちに連絡がきてな。正直生徒が死地に行くことは私としては全く許容は出来ん。さりとて対校戦での貴様の力を見て、私は確かな希望を見たよ。今世界には貴様の様な存在が必要なのだろう。私から言えることはただ一つだ、絶対に死ぬな」
本当に・・・生徒思いの先生だな。
柄にもなく少し胸が熱くなった。
「そして貴様を呼んだ理由がもう一つ」
先生は後ろから一つの紙袋を取り出す。
その中にはなにやらずっしりと紙の束が入っていた。
「これ、何ですか?」
「全教科の問題プリントだ」
「・・・すいません。聞き間違いだと思うんですけど今問題プリントとか言いました?」
「聞き間違いではない。各担当の先生方が徹夜で作ったありがたいプリントだ。貴様が特殊対策部隊に入ろうがこの学校の籍が消える訳ではないからな。しっかりと勉強しておけよ」
・・・冗談だろ。
見た感じ広辞苑の二倍の量はあるぞこれ。
ああ、一応説明しておくと怪我などで俺が戦闘できなくなった場合を考え学校に籍は置いたままにして貰った。卒業さえすれば父さんの友人が雇ってくれるらしいからだ。
「ありがとう、ございます」
俺はハイライトの消えた目でそれを受け取る。
・・・おっも。
◇
「真鈴。もう怪我は大丈夫なのかい?」
「本当に心配したわ・・・」
「うん、もう大丈夫だよ。私よりも梓のお見舞いに行ってあげて?」
「勿論梓の方にも行くが、あんなものを見たらやっぱり心配になってな・・・」
対校戦から三日経つが私はその間ずっと怪我の治療で入院し続けている。
両足複雑骨折に肋骨が二本折れ一本は罅がいっていたらしい。
内臓に刺さっていなかったのはかなり運が良かったのだろう。
そんな状態の私を当然両親も心配し、二人とも涙を流していた。
本来あんな状態になったら生きて帰ることはまず出来ないであろうことも拍車をかけているのだろうと思う。
・・・彼は今何をしているだろうか。
少し物思いに耽っているとふいに病室のドアが開かれる。
「どうも~ あなた方が七瀬さんのご家族で間違いないでしょうか?」
「・・・はい、そうですが」
入ってきたのは黒服にサングラスを掛けた男性だった。
軽薄な態度とは裏腹に相当な実力者である事が分かる。
相手を注視しながらいつでも能力を発動できる準備をする。
「あ~ 警戒しなくても大丈夫ですよ。別に怪しい者じゃ、いや初対面だと怪しく見えるか・・・」
「あの、それで何か御用が?」
お父さんが戸惑いがちにそう尋ねる。
「お~ そうでしたね。実は上の方のご要望で、あなた方のご家族である七瀬 梓さんのご病気を治す為に世界最高峰の医者を準備しましたので、皆様に治療をするご許可を頂こうと思いまして~」
「ど、どういう事ですか?!」
梓の病気が治る?!
というより一体誰がそんな事を?
いや、その前に本当にこの人の言葉を信じてもいいのだろうか。
「あ、その方からひと言ありまして『先輩、貸し一つですよ』とのことです」
その言葉で私はその人物が誰か分かってしまった。
私の周りでそれ程の権力を持てる可能性がある人物は一人しか思いつかない。
「・・・お父さん、お母さん。あの人の言葉は信じてみてもいいかもしれない」
「どういうことなんだ?」
「お母さん全く話に付いていけないんだけど」
「大丈夫、後で説明するから」
今は出来るだけ早く梓の病気を治すのが先決だ。
あの子も頑張っているけどもう我慢も限界に近いだろう。
「では了承していただいたという認識でよろしいでしょうか?」
「・・・まだ納得できない部分は有りますが真鈴がそこまで言うのなら」
「オッケーで~す。では私はこれで、一応忙しい身なので」
黒服の人はそう言うや否や病室から退室する。
「は~ こんな大きな借りどうやって返せばいいのよ」
柳君は何を望んでいるのだろうか。
・・・分からない。
でも、何となくだけど、私が強くなる事がいずれ彼の為になるのではないかと思った。
新しい目標が出来た為かどこか体が熱い。
でもなんで頬が赤くなっているのかは分からなかった。
今日から第三章!
さあ、今回の敵はどんな奴等なのか! それと隼人の能力が遂に明らかに!
と、ちょっと興味を引くような予告をしておきます。
楽しみ! と思っていだ抱けましたら評価やブクマをして下されば覚醒します。





