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神々の権能を操りし者 ~能力数値『0』で蔑まれている俺だが、実は世界最強の一角~  作者:
十四章 神々の争乱編

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212話 騎士殺し

 俺を中心として更地となった場所。

 前方十メートルほど離れた場所に怪物が降り立つ。


『貴様、ただの言霊使いではないな』


 十メートル、それが奴の俺に対して抱く警戒の距離。

 この光景を前に奴も慢心はしていないだろう。ただ、俺の力を正確に理解できているかは除いて。


 もし俺が俺から逃げるなら、おそらくこの世界から脱出する。


『・・・・・・そうか、思い出したぞ。その力、貴様は【騎士殺し】かッ!』


 懐かしい二つ名を聞いたな。

 俺がそう呼ばれ出したのは何年前だったか、まだ俺と秋穂が学生の頃だったはずだ。


「全くやめてくれよ。俺は誇り高い騎士を手にかけた事なんてないさ。俺が殺したのは真正の屑だけだ」


『巫女の騎士を手にかけた罪人。貴様はここで殺す』


 記憶の中にある巫女の騎士と呼ばれていた男を思い出す。

 あんな人を道具かなにかだと認識せず、己の都合に合わせて捨て去るような奴が騎士? 笑わせてくれるな。


 怪物の闇が広がる。

 周囲の環境が怪物の都合のいいように捻じ曲がり、魔境と化す。


『言霊使いの弱点は効果範囲の狭さと発動した効果の継続性が極めて短い点だ。遠距離からの攻撃を続ければ貴様はそれだけで詰む』


 よく知っている。そもそも言霊使いはあまりタイマンで戦うような能力じゃない。どちらかと言えば補助に徹する能力だろう。


 しかし、本当に恐るべき能力だ。眼前の光景全てが俺を殺しに来ている。

 ただ、それでもこいつの能力は序列二位リサ・ネフィルの下位互換に過ぎない。


「言葉って面白いよな。発言者の味方や想像した事柄によって同じ言葉でも意味が変わるんだ」


『何を言って』


「それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ」


 言葉は規模に捕らわれない。

 そして言霊使いは言葉で事象を捻じ曲げる能力者。


 ただ、殆どの言霊使いはその力を引き出せず、小さな事象に留まってしまう。


 俺の能力【帝王(エンペラー)】は所有者の意思の強さに比例して力を増す能力だ。

 それこそ、所有者次第では能力の上限はなく、操作できる事象も小さなものに捕らわれることはない。


 意思が、精神が強くあり続ける事など感情という花がある人間には難しいが、


「――俺の息子に、手出してんじゃねえよ」


 その感情と意思が噛み合ったなら、【帝王】はその真価を遺憾なく発揮する。





『終われ』





 たった一言。しかし込められた思いは一つではない。

 ――周囲の生命がその生命活動を終えた。

 ――宇宙に漂う衛星が動きを止まる。

 ――地球の自転がほんの瞬刻、自転を止めた。


「おっと」


 突風が体に襲い掛かり、Gの負荷によって僅かにたたらを踏む。

 すぐさまなにもなかったように地球は動き出すが、ほんの一秒でも止まっていたら人類は死に絶えていただろう。


「あっぶねえ。だから本気は出したくないんだ。うっかり人類を滅ぼしたら笑い話にもならない」


 そして――強制的に戦いは幕を下ろした。


 足を進め、地面に倒れ伏す怪物の前で止まる。


『・・・・・・何が、何が・・・・・・起こった?』


 怪物の体は状態を保てず、端から徐々に消滅していく。


「俺の能力は同等以上の精神力を持つ相手には殆ど通用しない」


『何が・・・・・・言いたい・・・・・・?』


「どれだけ強い能力や権能を持っていようと、お前達は弱いということだ。自分達が絶対で完成された存在などと思い上がった結果が今の状況だ」


 もしも俺の相手が規格外の力を持っていなくとも、強靭な精神力を持った相手なら結果は全くの逆だっただろう。


 怪物は最期になにも言い残さず、消滅した。


 俺は体に負った怪我を回復して軽く体をほぐす。


「うっし、これで完治と。それじゃあ隼人の元へ――」


 言葉を切り、勢いよく後ろに振り返る。

 視線の先にはなにも見えない。更地が広がり、その奥に市街地が広がっているのが見えるだけ。


 しかし、確かに感じた不快感。


「悪いな隼人。少しだけ寄り道してくる」


 山とは反対側に足を進める。




◇七瀬side




「はぁ、一体なにが起こってるのよ?」


「いやぁ驚いたっすね!」


 ボロボロの服を見て大きな溜息を吐く。


 事の発端は少し前に戻る。


 アルテミス師匠に言われるままに来た中国。

 空港で服部さんと出会い、流れで行動を共にすることに。


 一緒のホテルに泊まって、ちょっと仲良くなったりして、真鈴ちゃんと呼ばれるようになった。私は服部さんと言うのがしっくりくるからそのままだけれど、本人は頬を膨らませて不満を表しているのがなんとも可愛らしかった。


 訓練とバイト漬けでこういう旅行なんてした覚えが殆どないためなんだか新鮮で少し浮かれた。


 そんな思い出の翌日早朝。

 地面の揺れと共に目を覚まし、ホテルから急いで出た矢先だった。


 でっかい蛙が居た。


「え、気持ち悪」

「うっわぁ」


 服部さんの嫌悪の言葉と被る。

 体長は五メートル程度、でっぷりとした腹部が道路の三車線ぐらいを占領している。


 警告色と言うのだろうか。派手な紫の体表を持ち、不快な匂いを周囲に撒いている。思わず顔を顰めて鼻を塞ぐように手で覆った。


「うわぁあああ!」

「怪物だ! 逃げろ!」

「こっちにはなんの情報も来なかったはずだろ!」


 一般人が怪物の出現に気付き逃げ惑う。いきなり街中に己を見下ろす程巨大な蛙が現れたのだ、平静を無くすのも仕方ないだろう。


 ただ、その中で気になる言葉があった。『こっちにはなんの情報も来なかった』ということは別の場所では怪物の出現情報が出ていたという事だ。


(怪物の出現が予見されていた?)


 今私の持っている情報では判断が出来ない。

 服部さんなら何か知っている可能性もあるだろう。この蛙を倒した後で聞いてみよう。


(来る)


「真鈴ちゃん!」


 ――【人馬宮(サジタリウス)


 少し先の未来を視る。

 開かれる蛙の口、飛び出す巨大な舌は私の顔を貫くように飛び出す。


 そこまで視えたところで、私は半歩足をずらし体を半身逸らす。

 顔のすれすれを舌が通っていく。想像より遥かに伸びる舌は建物を幾らか貫通した後勢いよく元に戻る。


 その際、怪物の舌に付着していた粘液が飛び散った。


「ちょっ?!」


 引き攣った表情を浮かべながら全力で避ける服部さん。対して私はそこまでの速度は出ないため幾らか体に付着した。


 地面が溶けているのを見て顔が蒼くなるが、どうしてか体に異常はなく、ただどうしてかほんのりと温かいなにかに包まれている感覚だけがあった。


「ふふふっ、真鈴ちゃんの体は私が保護したから大丈夫っすよ!」


 どうやら服部さんがなにかしらの手段で守ってくれたらしい。


「ただ、いきなりだったから服は守れなくて・・・・・・」


 歯切れの悪い言葉を残し目を背ける服部さん。

 己の服に視線を向ける。


「こ、これは?!」


 粘液が付着した部分の服が溶けていた。

 霰もない姿になったことの羞恥心と、頑張ってバイトで溜めたお金で買った服があんなキモ蛙に駄目にされたことの怒りで顔が赤くなる。


「・・・・・・殺す」


 弓を召喚し、矢をつがえる。


 それからおよそ十分程、服部さんと共闘し鬱憤をぶつけるように矢を放った。


 そして冒頭に戻る。

 目の前には見るも無残な姿になった蛙野郎が息絶えている。両目、頭部、体中から矢を生やしハリセンボンのようになっている。


「ひゅ~ まさかここまで飛躍的に成長するなんて。世界記録なんじゃないっすか? 是非とも特殊対策部隊に入って欲しいっすね」


 口笛を吹いて驚きを表す服部さん。嬉しい事を言ってくれるが、今はその事を素直に喜ぶ余裕がない。


「はぁ~」


 もう羞恥心もなにもない。ただ感情が死んだ。

 ちょっとだけ残った上下。もう殆ど下着しか残っていない。


「と、取り敢えず服をどこかで調達しようか?」


「そう、ですね」


 ・・・・・・思わず語尾が消えてしまうほどに哀れな姿になっているのか。

 もうお嫁にいけないわね。


「着替え終わったら、行きますか」


「そうっすね」


 二人で見上げた先にあるカイラス山の上空。

 師匠が言うにはあそこに行けば限界を越えられるとのこと。そしてなにやらおかしなことが起こっている元凶もあれだとか。


(流石に緊張するわね)


・・・・・・


「あっこれなんかどうっすか? めちゃ似合うっすよ!」


「そ、そうかしら」


 少しだけ新しい服の調達に時間が掛かったのは女性ならば仕方ないだろう。


いつか篤の話も書きたいですね(*´▽`*)

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終焉都市の雑草
連載開始です(*´▽`*)
神々の権能を操りし者2
― 新着の感想 ―
[良い点] こんなに強い父にそれより強い母にそれをまとめて倒せる主人公... とんでもねぇな! やっぱり前にして一様はすごいんやなぁ
[一言] かっけーよ、お父さん いや、お義父さん!!
[気になる点] 巫女って隼人のお母様ですかね? [一言] いや、お父さん強すぎだろ もうあいつ一人でいいんじゃないかな
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