208話 底の見えない依頼
ぬぉおお! 投稿が遅れて申し訳ない(´;ω;`)
MTの免許をとるため獅子奮迅しておりました。先日卒検に受かり、本日本免試験に合格してなんとか免許が取れたのでまた更新を再開します。
窓の縁に座り外へと視線を向ける。
垂らした左手に握られたスマホの画面には新たな依頼文が映されていた。
「はぁ・・・・・・」
依頼者は中国政府。
内容は推定Bランク以上の怪物達の討伐である。
昨夜、カイラス山上空に出現した物体の内部へと入る事に成功した調査隊。
内部は不可思議な空間であったらしい。空間が確立されていないのか、そもそもがそういうものなのかは分からないが、観測する度に光景が変わっていくという。
ただし、その場にある建築物などは普遍であったらしい。
一つの建築物を捜索している途中、調査隊メンバーはある壺を見つける。
壺に蓋はなく既に開け放たれた状態。
内部を見ても何もなく、取り敢えずサンプルとして持って帰るが、その帰り道でのことだ。
空間から出た瞬間、なにもなかったはずの壺から突如として怪物が出現する。
その数は三。なんとか対処しようとした調査隊であったが、怪物の強さに抗う力はなく、何人かが逃走して命からがら生き残った。
現在は中国の特殊対策部隊が怪物の掃討のために出動しているが、怪物はその姿を消して居場所を把握できていないとのことだ。
「壺、壺か・・・・・・」
壺に関する怪物の例は少ない。
カノポスの壺、ミイラの傍に添えられたものだ。
その建築物が安置所のような場所であったなら、死んだなにかの内臓などを入れておくために壺がおかれる可能性はある。しかし、あれはそもそも壺が四つ必要だったはず。もしも一つの壺に全部を詰め込んだとしても、でてきた怪物は三、数が合わない。
七つの星なんかにでてくる壺などは害悪になりそうなものではないし、今回が初めての・・・・・・
「いや、待てよ」
思い出したのは、破壊神の権能を操る白髪の少年だ。
あいつはなにやらおかしな箱を以て俺の権能を封じた。
そう箱だ。壺ではない。
しかし、ある神話では箱か壺か曖昧な記述で定められていないものがある。
「――パンドラ・・・・・・とか、言ってみたり。ははは、まさかな」
なに、ただただ新種の怪物が出現したというのが最も可能性が高いだろう。
選定者である俺が神々に創られた女性に狙われる事の方がおかしいと考えるのが普通だ。
色々と浮かび上がる可能性を一度消し去り、外用の服に着替える。
「行ってらっしゃい」
「おう、できるだけすぐ戻ってくる」
シャルティアさんと蒼に見送られ家を出て向かうのは特殊対策部隊の本部だ。
『私も着いて行きましょうか?』と言うシャルティアさんの提案は断らせてもらった。俺よりも蒼を守って欲しいというのが一番で、もう一つは既に一人助っ人が来ることが決まっているからだ。
ちなみに本部へだが、勿論会うのはサリーではない。緊急時に動物と戯れていたら後々のバッシングが恐ろしいからな。残念ながら少しの間おあずけになるだろう。
本部に足を踏み入れ約束の場所へと移動する。
普段はあまり使われていない会議室。その扉を開けた先に彼女の姿はあった。
「おひさ~ 隼人っちは元気してたかな?」
「お久しぶりです。色々とありましたけど、一応元気ですね。西連寺さんもお変わりないようで」
西連寺麗華。特殊対策部隊の一員で【空間転移】の能力者である。
彼女と会うのは久しぶりだが、よそよそしさなど皆無で、棒付きの飴を口に含みながらけらけらと笑っている。
「まあね~ 私はそこまで頻繁に戦闘する訳じゃないし。それに比べて君は大変そうだ。足を向けて寝られないよ~」
平気で足の裏を向けて寝てそうだ。
っと、そんなことはどうでもいい。本題は別である。
「あはは、それで統括支部を通して依頼が来てると思うのですが」
「ああうん、来てるね。中国のカイラス山付近への転移依頼。少し離れた場所になるけどいいかな?」
中国には転移能力者がいないため、日本の西連寺さんが代わりに俺を転移させるという訳である。
「はい。それでお願いなのですが、俺の他にもう一名お願いしてもいいですかね?」
「別にいいよ~ 鈴奈っちかな?」
「いえ、他の人なんですが」
そう言うや、西連寺さんは溜息をついて指を振る。
「駄目だよ~ ちゃんとあの子のことを考えてあげないと。はぁ、それで? どの女の子を連れて行くつもり?」
「なんで女の子だと決めつけているのかは分かりませんが違いますよ。一緒に行くのは男です」
「えっそうなの?」
丁度、スマホで連絡が来て同行者の準備が整ったとの連絡がきた。
西連寺さんと共に本部を出ると、厚着の服に黒色の帽子を被った男が目に入る。
「すまないねお嬢さん。今回は俺も同行させて貰おうと思って我儘を言ってしまった」
「えっと、あなたは?」
帽子を外し、ニヒルに笑って男は答える。
「柳篤、そこの愚息の父親さ」
そう、今回の任務には父さんが同行するのだ。
◇
「えっと、ここでいいんすか?」
(ええ、ここで待っていたら大丈夫ですよ)
空港。中国行のチケットを片手に、まだ時間に余裕があるため椅子に座って窓から外の光景を眺める。
何故私がここにいるのか。
それは私に憑いている某女神がそうするように言ったからだ。それが結果的に隼人君のためになると言われて。
半信半疑であったが、隼人君へカイラス山の上空に出現した物体に関する任務が出されたと聞いて行くことを決断した。
とはいえ、私は特殊対策部隊の一員。それも戦闘部隊の一番槍的な存在だと認識しているため他国へ行くのは難しいかと思われたが、不思議なぐらいに物事がとんとん拍子に進み、なんの柵もなく私は今ここにいる。
さて、それじゃあ寂しい一人旅をと思ったのが、どうやら女神の話では私と似たような人物がもう一人来るから一緒に行ってみてはどうかと言われたのだ。
「誰かぐらい教えてくれてもいいじゃないっすか」
(それでは面白くないではありませんか。大丈夫ですよ、悪い子ではありませんから)
女神の様子からどうやら私の知っている人物らしい。
何人か候補は上がるが、確信は持てない。
(考えても無駄か)
なあに、悪い子じゃないというなら大丈夫だろう。
そもそも私は自分のことをやっていればいいのだ。一緒に行動する必要もないはず。
「それよかカイラス山で出現したあれはなにかってことっすよね。分からないんすか?」
(予想はできていますが、近づかなければ確証はできません。なので到着してからになりますね)
「なるほど」
「お母さん? あの人ずっと一人で喋ってるよ?」
「駄目よ指差しちゃ。女の子は物思いに耽る時間も必要なのよ」
「・・・・・・」
この真っ赤になった頬をどうしてくれるというのだ。
いつもは屋敷にいたから人の目を気にせず喋っていたが、それが逆に駄目だったか。外では少し意識して念話的なあれで会話した方がよさそうだ。
「じゃああの人もそうなの? 歩きながらずっとお口を動かしてるけど」
「そうねえ。もしかしたらそういう季節になったのかもしれないわね」
私以外にも独り言を言っていた人物がいるらしい。
なんとなく恥ずかしい気持ちを減らしたくて子供の視線の先へと顔を向ける。
「え?」
思わず声が出た。
その人物が私の知り合いであったからだ。
顔を真っ赤にしたその子も私に気が付くと目を見開いて驚きの声を上げる。
「えっ、どうして服部さんがここに?」
雪のような真っ白の長髪と金色の瞳を持つ少女。
かつて柳君をスカウトする為に学校に編入した時に出会った実力者、七瀬真鈴の姿がそこにはあった。
かなり期間が空いてしまったので、お詫びとしまして、何話か一日二日おきに投稿しようかと考えております(*´▽`*)遅くなってごめんね?





