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神々の権能を操りし者 ~能力数値『0』で蔑まれている俺だが、実は世界最強の一角~  作者:
第十三章 時の支配者編

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195話 師の心労

師匠視点

「あぁ~ 頭がふわふわするぜ~」


「朝から飲み過ぎだぞ」


 可愛い弟子に頼まれて朝っぱらから母体探し。

 この頃体を動かすことがあまりなかったからいい機会かもしれないが、どうせならもう少し違うお願いが聞きたかった。


(やっぱり俺が親代わりなのは無理があったのかね)


 立派にはなったが、女というよりかは完璧な機械人形のように他人には見えてしまうだろう。あいつの感情に気付けるのは俺ぐらいじゃないか?


「はぁ~」


「およそ考えていることは分かるが、あまり気にし過ぎるものではないと思うぞ」


「でもな、正直あいつの将来が心配でならん」


「大丈夫だ。子供はいつの間にか大人の予想を超える成長をしているものさ」


 隣を歩く男、今はアジトの一階でバーテンダーをしている相棒が分かったような口調で断言する。こいつは確か息子が一人いるからその経験から言っているのだろう。


「それならいいんだが」


「すまない。少し外す」


 相棒はトイレだろうか、一旦離れて脇道に移動する。

 その待ち時間に俺も脇道に逸れて息を吐く。


 ふらりと体が揺れて地面に座り込んだ時、偶然通った婆さんが俺の手を取って起こそうとする。


「あんた朝っぱら飲んでんのかい? 少しはシャキッとしな!」


「あははっ、反論のしようがない」


 苦笑いを浮かべなんとか立ち上がり、体に付いた雪を払う。

 去っていく婆ちゃんに手を振っていると、丁度相棒が戻りまた歩き出す。進行方向に振り向く際に僅かに手を開き中の紙を見る。


『南部 現状維持』


 よくも悪くも目立った変化はないか。

 悪化していないだけましだと考えるか。


「あっ、ライターあるか?」


「珍しいな、忘れたのか」


「ははっ、あいつの前で吸ってると怒られちまうからな」


 相棒の胸ポケットから出したライターを受け取り、俺は煙草を口にすると、その先にライターを当てながら同時に手に持った紙に火をつける。紙は一瞬で燃え広がり、塵になって空気に溶け込んだ。


「はぁ」


 煙を吐き、まだ当てのない道を二人で歩く。


 ――ああ、気持ち悪ぃ。

 本当におかしな場所になっちまったものだ。

 感情に敏感な俺だから分かる。笑い合っている家族も、学校帰りの学生もどいつもこいつも見かけに反して感情というものが全くと言って程存在していない。


 人語を話せない動物からでもなにかしらの感情が伝わってくるというのに、大きく表情を動かしているこいつらの方が無に近いのだ。だというのに視線だけは突き刺すように俺から離れない。これが気持ち悪いと思わない奴はいないだろう。


「ねえウィンディ、近くに美味しい料理を作ってるお店があるのだけど寄っていかないかい?」

「あら、それはいいわね」


 一見してカップルに見えるそんな二人、少し丸い体形をした男性と可愛らしい女性が俺達の進行方向から歩いてくる。


「でも少し食べるのを制限しないとすぐにこの可愛らしいお腹が大きくなっちゃうわよ?」

「はははっ、大丈夫さ。これでもこの頃鍛えているんだ」


 すれ違い、俺は少し進行方向を北に変える。


(西も現状維持と、残りは北と東)


 少し北東寄りに移動していくと、北にある施設の一つの屋根から綺麗な青色の旗が上がっているのが遠目からでも分かる。すぐに視線を切り、また歩き出す。


「・・・・・・我が娘の読み通りか」


「動けないのか、動かないのか」


「後者であって欲しいね~ なにせ俺の仕事が減る」


 軽口を叩きながら訪れたのはストリートパフォーマンスの一団によって盛り上がっている場所だ。


 流石に体の使い方が上手い。

 後方にいる数人が音楽を奏でて、それに合わせてパフォーマンスをしているという感じだ。その動きを見ながら、耳をそばだてて後方の音楽を聴く。


 すぐに、ほんの僅かだが一定のペースで聴こえてくる一節があることに気付く。


『タ―タ―タッタッタ― タッタ―タッタッ タッタッ タ―タ―タッタ―タッ タ―タッタ―タッタッ タ―タッタ―タ― タッタ―タッタ―タッ』


「はぁ~~」


 思わず大きく溜息を吐く。

 仕方ない。既に分かっていることなら動かない訳にはいかないな。


 俺は一段落したところでパフォーマーの元に近付き、ハットの中にお金を入れる。


「ありがとうございます!」


「素晴らしいパフォーマンスだったよ。知り合いにも紹介したいのだが、なにか広告のようなものはあるかい?」


「本当ですかっ! ではこれをお願いします!」


 少し丸まった一枚の紙を貰い、俺は相棒と共にその場を離れる。

 そのまま少し東に移動した所で裏路地に入り込み、丸まった紙を広げて裏面を見る。


 そこには北東全体の地図が記されており、そこには二点それぞれ赤と黄色で丸印がされてあった。


「黄色?」


 赤は分かる、いや、そもそも何故印が一つではないのか。


「行ってみるしかないか。先に黄色に行こうと思うが、それでいいか?」


「勿論だ。本丸を先にしたくはない」


 ごもっとも。俺達は表には出ず、裏道を経由しながら黄色で記された場所に移動する。

 数分で到着したそこは別に特別な施設が近くにある訳でも、目立った何かがあるでもない少し薄暗い裏路地の一つだった。


 周囲を軽く見通すが、戦闘痕はない。

 身を屈め、地面に耳を近づけ地下を確認するも、俺の感知範囲には特に異常はなかった。ならばこれは俺に対してというより隣にいた相棒に向けてか。


「どうやらお前さんの出番らしい」


「いいだろう。少し離れていてくれ」


 少し離れた位置に移動し、相棒の能力が発動するのを待つ。


「【記憶(メモリー)遡行(レトロアクティブ)】」


 淡い光が周囲を照らし、目まぐるしい勢いで時間を遡る。

 相棒の能力は【記憶遡行】、能力範囲はおよそ半径20メートル。その場の過去をリアルな映像で再現することができる。ただしそれらは過去の虚像であるため干渉することはできない。


「ん?」


 超速で巻き戻る光景を見ていると一瞬だけ数人の姿が見えた。

 こんな裏路地に訪れるような輩は俺達のような奴だが、どうにもそんな感じには見えなかった。


「相棒、少し止めてくれ」


 少し能力を止めて貰い、徐々に再生していく。


『こっちにね、私の宝物があるの! もうすぐ着くからね!』


『あらあら、こんな薄暗い場所で走ってはいけませんよ~』


『はぁはぁ、お父さんは体力が無いんだ。もう少しだけゆっくりと』


『全くあなたは。そんなことでは娘に見放されてしまいますよ?』


 和気あいあいという雰囲気で裏路地に入って来る三人組。

 一番最初に入ってきた小さな女の子はおそらくロシア人、そして怪物に寄生されているであろう少女だ。続いて入って来た二人は観光客だろうか。


(容姿からおそらくアジア系、日本人か? 夫婦の旅行中に災難なことだ)


 少女が動きを止める。

 体がガタガタと震え、明らかに普通ではない。


『君、大丈・・・・・・』


 異変を察した男が手を伸ばした途端、少女の背が割け中から怪物が姿を現した。

 男に飛び掛かる怪物、一瞬眉を寄せる男。なるほど、こうして寄生対象を増やしているのか。


(本当に災な――)


 何年ぶりだろうか、この俺が一瞬でも恐怖を抱いたのは。


 女の手から扇子を開く音が聞こえた。

 気付けば周囲に結界らしきものが貼られ、少女と怪物は時間が停止したように止まっている。


絶禍(ぜっか)


 扇子を閉じるのと同時に、薄紫の槍が怪物をズタズタに貫く。

 その後の変化は悍ましいという言葉が可愛く見えるようなものだった。ギチギチと音を鳴らす怪物。


 泡を吐き、痛いであろうにも関わらず体を強引に動かして逃げようとする。


『全く、私の愛する夫になにをしようと言うのです?』


 極寒の瞳が怪物を射抜き、そして槍に貫かれた箇所から怪物は紫色に腐敗し、そして体が溶けるように消えていった。


(おいおいッ、なんだこの化け物女!)


『再生』


 男の声がした。女に向けられていた視線を戻すと、背中が割けた少女の体が見る見るうちに元通りに、怪物に抉られた箇所もまるで何事もなかったように再生されていく。


「・・・・・・言霊使い」

 

 存在することは確認されている。

 ()()()最強の能力の一つになりうると言われているが、使用者の精神に比例するという性質上効果の幅が大きく、あまり期待できない能力であったはず。このレベルの傷を癒す程の能力者を俺は知らない。


『・・・・・・俺はこの子を安全な場所に預けてくるよ』


『分かったわ。私はもう少しこの場にいるから、後で合流しましょう』


『ん? 分かった』


 男がその場を去り、女が残る。

 なんのためにと思案していると、突然女が振り返り、()()()()


『随分と面白い能力ね。いずれ力を貸して貰うことになるかも? その時はよろしくお願いできないかしら』


「・・・・・・ははっ、今日は何つう厄日だ。心臓がもたん」


 過去を覗いているんだぞ。

 どうしてこの女は未来で使われた能力を感知できているんだ? ていうか俺、今めっちゃ目あってるし。さっきの男はよくこんな怪物の夫になろうと思ったものだ。


『死なれても困るから、少し助力しましょう。あなたたちの追っている怪物はあそこ』


 女はある方向を指さす。


『場所を指定しないのは、母体は地下を移動しているから。でもその大きさから活発的ではないわ』


 母体は他とは違い巨大なのか。

 これだけでも十分な情報だが。


『そしてあなたは勘づいているでしょうけど、この怪物が寄生しているのは人間だけではないわ。その体に見合い、かつ強力な能力を持っているもう一つの存在。怪物にも寄生しているということね』


「はぁ、分かってはいたが。やっぱりか」


 まだ出てきていないのは。戦力が最大まで溜まってからということか。


『残念ながら、今あなたたちを手伝う余裕は私にはないけれど、既に十分な戦力が揃っているでしょう? でも、もしもそれでも足りなかった時は神頼みをしてごらんなさい。きっとあの子が手を貸してくれるわ』


 そんな訳の分からない言葉を残し女はその場を去っていった。


「考え直しだな」


 情報は色々と集まったが、それ以上に心労が激し過ぎる。


ウエスト―ウェスト=西

モールス信号の答え=『東 危険』

う~ん本文にも記した方がいいでしょうか(-ω-;)ウーン


面白い機能が追加されましたね。

皆さんの好きな傾向が分かるかもしれないので、是非好きな話にいいねをして頂けると参考になります(*´▽`*)

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終焉都市の雑草
連載開始です(*´▽`*)
神々の権能を操りし者2
― 新着の感想 ―
[良い点] 次作も楽しみにしております。早く母体倒せるといいですね!(限られたメンバーで) [気になる点] 何故皆様、本文から見て柳夫妻だと見抜いたのでしょうか? 道行くお婆ちゃんと、パフォーマーの…
[一言] 隼人夫妻きましたね!父もそうですが、隼人母の能力や強さの一端が見れて嬉しいです!
[良い点] 隼人の父母がここで出てくるとは! あと自分は蒼ちゃん成分が不足していて辛いです 2巻楽しみにしてますね!
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