194話 行動開始
遅くなり申し訳ないです!
しかもちょい短いかも!(´;ω;`)
師匠と情報を共有した後、アンネ・クランツから連絡があり場所を移動する。
人の目が付かない裏路地にある一軒家、裏で使用されるものの一つを利用し、そこに集合した。
「そうですか。まさかあなたが勘付かれるとは」
「油断はしていなかった。おそらく奴等には特殊な器官があるんだろう。視力に頼らずとも周囲の状況を確認できる手段を持っている」
アンネ・クランツの顔は暗い。
仕方なかったとはいえ、民間人の死を目の前で見たのが幾分か効いてしまっているようだ。
それにしても本当に厄介な相手だ。
寄生でも十二分な脅威だというのに、知れば知る程異常な特性を持っている。
「これがその怪物ですか」
机の端に置かれた怪物の死体。
平べったく、甲殻類のような装甲を持っている。頭部には二本の触覚が生えており、虫に近い容姿だ。
一体しか確保していないらしいが、もう一体も同様の姿をしていたという。
「もう一度聞きますが、寄生された民間人は問題なく能力を使用していたという認識でいいでしょうか?」
「ああ、元々の数値がどれぐらいかは知らないが、おそらく劣化しているようなことはないだろう」
寄生された人間全てが能力を使えば、どれだけの被害が出るか。
約七割が寄生されていると考えても、七千万人は超える。その数が一度に暴れたら・・・・・・これは歴史上類を見ない事態だ。
早急に解決しなければ、冗談ではなく本当に人類が滅ぶだろう。
「今回は相手が悪すぎる。こういうのが得意な奴に協力を要請した方がいいだろう」
確かにその通りだが。その判断は手遅れだろう。
スマートフォンを握るアンネ・クランツの手を止める。
「待って下さい。それは当然私も考えました。ただ、敵は想像以上に知能が高い。最悪電波を傍受される可能性があります」
「怪物が傍受? ・・・・・・いや、そうか。一見して寄生された者達に異変がないことを考慮すると、奴等は寄生対象の記憶を何かしらの方法で引き継いでいるわけだ。ならば奴等が現代戦を仕掛けて来る可能性も十二分にあるか」
敵は人間の思考を持った怪物だと想定すれば、こちらの強みを理解しているはず。ならば逆算してそれらを潰すのは当然だ。電子機器はその最たる例だろう。
私が問題なく来れたのは、私という存在の危険性を敵が把握できなかったからだろう。
しかし、リサ・ネフィルは既に情報が出ている。簡単に来れるとは考えられないし、傍受された電波から私達の行動も補足される危険がある。
(でも、そうですね。リサ・ネフィルがいれば状況も変わるでしょうが・・・・・・)
現状、敵に気取られず連絡を伝える手段は皆無だ。
無理矢理包囲網を突破することは容易だが、その結果敵がどういう行動を起こすかが問題だ。
最悪、寄生された被害者全てが能力を発動させて殺し合うことになるだろう。
その先にあるのは国の滅亡では済まない。最悪、人類の存続が不可能な事態に陥る可能性も存在する。強者だけが生き残っても意味がないのだ。
「かなり不利な状況ですが、受けに回れば終わりです。ここで攻勢にでましょう」
「具体的にはどうするんだ? 監視の目が多過ぎて全く自由に動けないぞ。外に出れば常に見張られている状態だ」
「後で裏通路の地図を渡します。それで粗方視線からは逃れられるでしょう。そして最初の一手ですが、救急隊員が一度同じ方向に目を向けたと言いましたよね。まずはそこを探ります」
私の見解はアンネ・クランツ同様、この怪物の中に母体が存在すると考えている。
南アフリカ攻防戦の資料に目を通せば、統率のとれていた兵隊は母体が死んだことで一気に崩壊したという記述があった。
そして今回、先程アンネ・クランツから聞いた情報の中で、救急隊員が同箇所に視線を向けたこと、さらには透明化していたのを見破ったものとは別の存在がアンネ・クランツを追跡し襲ったことから、今回の怪物はなにかしらの方法でお互いに情報を共有できるものだと推測する。
であれば、救急隊員達は何者からの信号を受けたのか。
彼等は特殊対策部隊ほどの力はないにしても一級の能力者だ。敵からすれば優秀な駒であるはず。だとすれば、彼等に送られた信号は群体をまとめる母体である可能性が高い。
「この統率力、母体がいると仮定した方がいいでしょう。私たちが最優先ですべきは元凶を討伐することです」
ロシア全土の地図を机の上に広げ、ペンをはしらせる。
「救急隊の拠点がここ、彼等が視線を向けた方角は分かりますか?」
「記憶が正しければ北東だな」
救急隊の拠点はクラスノヤルスク。
そこから北東だと考えれば、まだ範囲は絞られる。それでも広大であることに変わりないが、ここは師匠の力を借りるしかない。
流石にあの人でも今回の件に関しては手を貸さないという選択肢はないはずだ。
「・・・・・・ここから見つけ出すのか? まだ、存在するかも確定していないぞ?」
「問題ありません。師匠を通して知り合い全員に声を掛ければ、二日あれば情報が揃います」
「そりゃ凄い。ん? 他の連中がやるならじゃあ私はなにをすればいいんだ?」
母体の捜索は裏の人間の手で事足りる。
アンネ・クランツの戦力をそこに回すのは正しい判断ではない。彼女の一騎当千の力は相手の戦力を削ぐために使用したい。
「あなたは軍事基地ならびに敵の戦力となると判断した場所を殲滅して下さい」
「おいおい、マジで言ってんのか?」
「できませんか?」
「いや、潰すだけなら簡単だが・・・・・・」
「ならお願いします。事態が解決した後は私がその穴を埋めますので。派手に破壊して頂いて構いません。ただ、姿を見られないようにだけ注意して下さい」
「全く、難しいことをいう」
母体を叩ければいいが、可能な限り敵の戦力を削っておくことにこしたことはない。
相手の選択肢を消していけばそれだけ次の動きが簡単に予測できる。
被害の大きさに母体が行動を起こすときには、師匠であれば確実にその姿は補足しているはずだ。
「じゃあお前はどうするんだ?」
「私も似たようなものです。ただ、それが表か裏かの違いだけ」
情報はある程度揃えてある。
寄生されている可能性のある組織には私が出向く。
彼等の記憶を持った怪物は危険だ。
情報もそうだが、裏家業の思想を受けた寄生体がどのような行動を起こすかが分からない。
だから、手遅れになる前に私が手を下す。
「分かった。じゃあもう動くか、時間がない」
「ええ。敵の母体が見つかり次第一度連絡します。暗号は“ジャック・グラントの墓場”としましょう」
「了解。ちょっくら基地を破壊してくるわ」
お互いの行動を伝えあった後、すぐに家を離れた。
遂に2巻の表紙が出ました!
服部さん目が凄くいいです・・・・・・
発売は来月ですが、よければ手に取っていただけるとありがたいです(*´▽`*)
画像を並列にするのが分からず下にきてしまいましたが、一応2巻の表紙を下に載せてます。





