182話 オーストラリア支部
皆さんちゃんと水分補給はとっていますか!
でないと、私のように夏バテに・・・・・・
頂いた感想で気付きましたが、時刻の差がおかしいですね。
どうやらオーストリアと日本の差で調べてたみたいで、直ぐに修正しておきます。
与えられた自室に戻り、ベッドの上で仮眠をとる事数時間。
窓の先に少し赤く色ずく空を見て体を起こす。
「今お昼過ぎぐらいか」
蒼とソフィアさんは大丈夫だろうか。
蒼はまだ生きていけるだろうが、数日もすればソフィアさんは寝たまま息を引き取っている可能性がゼロではない。二人で頑張って生活していてくれ、本当に。
「早く帰れるかね~」
車椅子に腰を下ろし、部屋を出る。
朝食をとるラウンジに向かいながら考えるのは昨日の【黒騎士】についてだ。
能力は対処できる。
驚異的なポテンシャルも、先をよめない事はない。
だが、
「・・・・・・殺せないんじゃどうしろってんだか」
跡形も残さず消し飛ばしたのは確実だ。
しかし、それでもなお蘇る怪物。神話のフェニックスが脳裏に過るが、あれはまだ灰を消してしまえばなんとかなるのではないだろうか。
まだ一度目であれば、次はと考えるが、今回で既に二度目。
偶々という事はありえないだろう。
(ただ、まだ手札が無くなった訳じゃない)
物理的に消す事が出来ないのであればそれ以外で攻めればいい。
例えば、呪いとかはどうだ?
英雄神の力を以てすれば黒騎士を呪殺する事も不可能ではないはず。それでも無理なら・・・・・・まぁ、なりふり構わない方法になってしまう。なるべく都市の原型は残しておきたいがどうしたものか。
悩みながら移動しラウンジへと到着する。
中には研究員のような白衣を着た人達が数名既にいた。男女構わず目の下に隈を作っていて傍から見るとゾンビのように見えてしまう。
彼等の姿を傍目に席に着き、メニュー表から昼食を選んで注文する。
ハムやらパンやらが机に並び、写真を取れば映えそうな見た目だ。
「おっ、美味しいな。・・・・・・けど」
なんだか物足りないというか、シャルティアさんのご飯の方が俺は好みだ。
もう既に胃袋を鷲掴みされてしまったらしい。彼女が絶対者でなかったのなら家でずっと雇っていたい程には、彼女の料理に俺は侵されている。
日頃の感謝を込めて、気持ちを綴った手紙を百枚程渡そうか。いや、百枚如きでは足りないな。今は思いつきそうもないし、いっその事なんでもいう事聞きます券を贈呈してシャルティアさんの要望に応える方がいいかもしれない。完璧な作戦だ。
「もしかしてあんたが柳隼人かい?」
頭上から声がかけられてそちらに顔を向ける。
「おぉ! やっぱりそうじゃねえか。やべえ、有名人が目の前にいるぜ!」
「興奮するなって、見てて恥ずかしいから」
二人の男性だ。元気に声を出している方は金髪でちょび髭を生やした筋骨隆々の男性。その隣で恥ずかし気に目を逸らしている男性は、茶髪を爽やかに短くカットしていて、身長は百九十センチはあるだろう。
彼等の素性は着用している服装で判断できる。
胸に龍のワッペンを着けているのは特殊対策部隊以外に存在しない。
「どうも、オーストラリアの特殊対策部隊の方々ですよね? 期間がどれ程になるかは分かりませんが、【黒騎士】討伐の間よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、期待してるぜ! なんせ俺らはなんにもできないからな! はっはっは!」
「笑うところではないぞ。まあこんな奴だが、一応ここのリーダーなんだ。俺共々よろしくしてやってくれ」
「おいおい、こんな奴ってどういう事だ!」
「あはは、よろしくお願いします」
苦笑しながらお互いに握手する。
二人とも毎日ここで昼食をとっているらしく、折角の機会なので同じ席に誘って、共に食べる事になった。
「そういやまだ名乗ってなかったな、俺はハワード、で隣の茶髪はフリッツだ」
「朝はすまないな。北の方で怪物が出現したらしく、その掃討に行ってたんだ」
「いえいえ、全く気にしてないですよ。ここはお二人で?」
「戦闘に関しては大体二人だな。後はもう一人特殊対策部隊員がいるが、物質の重量を操作できる奴でな。倒壊した建物からの救助なんかをやってるな。まだ新人だが悪くない働きをするんだ」
そりゃ凄い。建物の下敷きになっている人の救助は迅速に行わなければならない。一分一秒の争いの中で、瓦礫を発砲スチロールのように軽々と除去できる能力者がいるのならどれだけ助かる事か。戦闘面でも使いどころによっては十二分に活用できるだろう。
「というか、日本の部隊は人数多いよな? それに質も高い。金剛は確か世界ランク十五、いや今は十六位か。はぁ、一人ぐらいこっちに欲しいな・・・・・・」
確かに、言われてみればそうだ。
日本は他国と比べて特殊対策部隊の人数が多いだろうと思う。稀有な能力者も何人か見てきた。しかし、これは良い事なのだろうかと、超越神との会話を終えた後では考えてしまう。
彼女は言った、神殿の力が世界を混沌に貶めようとしていると。
であるならば、それだけの能力者が集まる国はそれ相応の敵が現れるという事に他ならない。なにもなければいいが・・・・・・
「日本とは一度合同で・・・・・・」
なにかを呟こうとしてちょび髭のハワードさんが途中で固まり、顔を青くする。
「どうしました? 体調がすぐれませんか?」
「いや、一つ聞かせてくれ。噂で聞いたんだが、あの狂人が生き返ったってのは本当なのか?」
「えっと、すいません。身近には狂人ばかりなので一体誰の事か」
狂人? レオンさんか、母さんか、スぺさんか。敵も含めてしまえば両手では足りなくなってしまうな。
悩む俺の隣ではハワードさんが頭を抱えて唸っている。相当辛い記憶があるようだ。
見かねたようにフリッツさんが話す。
「上月香織の事さ。ハワードは彼女が苦手でな」
「あぁ、上月さんなら確かに生き返りましたね。いや、死んではいなかったのですが。仮死状態から戻ったというのが正しいでしょうか」
「や、やはりか! くっ、大変めでたい事だが。くそぅ、昔のトラウマが蘇って来るぞ!」
一体、なにがあったんだ。だいの大人が体を抱きしめて震えているぞ。
一度会ったが、そんなにおかしな人ではないと・・・・・・いや、初対面でガスマスクつけてたなあの人。やっぱりおかしい人かもしれない。
「一度日本との合同作戦があったんだが、その時に彼女には随分と振り回されてな。最前線で怪物と殺し合っていたハワードはそれはもうぼろ雑巾のようになっていたよ。それ以来苦手意識を持ったようだ」
「あれでトラウマにならない奴はいねえよ! いきなり海に飛び込むわ、雷をそこら中に降らすわ、人間砲台とか言って俺をぶっ飛ばしやがって! なのに結果は残すからなんも言えねんだ!」
「・・・・・・」
もし強力な怪物が日本に出ても、上月さんとはちょっと共闘したくないな。暴走しないように金剛さんが見張っているだろうから大丈夫だとは思うが。
「そ、そう言えば。【黒騎士】の資料を見たいのですが、この後に案内して頂く事って出来ますか?」
「おぅ、全然いいぜ。というか本来は朝には資料室に案内する予定だったんだ。昼食を食い終わったら一緒に行こう」
震えるハワードさんを見ていられなくて強引に話題を変える。
資料室ならば【黒騎士】の出現時からの詳細が保管されているはずだ。どこまでのものがあるかは分からないが、不滅の鍵を少しでも解き明かしておきたい。
「それと悪いんだが、後で色紙にサイン貰えねえか?」
「サインですか。別にいいですけど、どなたに?」
「おう、娘にプレゼントしたくてよ! 娘の名前も書いてくれたらもっとありがたいんだが」
「全く問題ないですよ。調子に乗ってサインを考えたはいいのですが、使うところが皆無で。逆にありがたいです」
その後、昼食を済ませサインも書いて資料室へと三人で移動する。
途中、娘にいい土産が出来たと満足げな表情を浮かべているハワードさんを見て、こっちは平和なんだなと笑みを浮かべた。
宣伝のお許しを。
25日から『神々の権能を操りし者』の一巻が発売中です。
見どころと言うか、利点としましては、
初期の再確認と書下ろし短編(服部さんとの動物園回)、後はキャラの挿絵が見れる点でしょうか。
私初の書籍でして、右往左往しながらの執筆のため、至らぬ点もあるかと思います。
購入して頂いた読者の方には、何かご要望がございましたら次巻から(続刊できれば)修正できるので、よければ感想などを活動報告か感想欄に呟いて頂けると大変助かります。
ex)もっと加筆しろやぁっ!! などなど
WEB版との違いもございますので、よければ一度ご購入の検討をお願いします(*´▽`*)





