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神々の権能を操りし者 ~能力数値『0』で蔑まれている俺だが、実は世界最強の一角~  作者:
第十一章 暴食編

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166話 奪われた呪具

 服部さん、上月さんと軽く話をして別れるかと思いきや、その後に「皆の話も聞いてみたいわ! 今から集めようかしら」と言い出した上月さんが、その場でスマホを取り出し、暇なメンバーを全員会議室に招集した。知らないメンバーについては服部さんにアドレスを聞いていたので、桐坂先輩や菊理先輩はいきなり大先輩から連絡がきて驚いている事だろう。


 ちなみに、俺は帰ろうとしたのだが上月さんに笑顔で強制連行でされた。


 会議室では机を対面に並べ、各々が椅子に座っている状況だ。

 メンバーは金剛さん以外の特殊対策部隊全員が集まっている。要請が無ければ基本的に忙しくはないのだ。


「あぁ! 可愛い!」


「「・・・・・・」」


 桐坂先輩と菊理先輩からの視線から逃れるようにさっと顔を逸らす。


 二人は今、上月さんの膝の上で強制的に座らされている。

 先輩方が緊張しながら部屋に入ってきた途端に、魔の手が襲い掛かり、数秒もしないうちに上月さんに拘束されてしまった。


 好き勝手に愛でられ続け、数分もしないうちに心の壊れた人形みたいになり、感情の見えない瞳がずっと虚空を眺めている。惜しい人達を失ってしまった。


「もぅっ! 私がいない間にこんなかわいい子が入隊してきたなんて! ふふっ、昔の鈴奈ちゃんを思い出すわね。あの頃はずっとおどおどしてて・・・・・」


「恥ずかしんでやめて下さいっす?!」


 分かった事、この人は魔王だ。

 誰もこの人に逆らえない。行動力と天真爛漫な性格が彼女を構成していると言っていい。言い換えれば脊髄で動いているブレーキの無い暴走車だ。


 俺の隣では牙城さんが気配を精一杯に消している。俺の傍に居れば影として潜めると考えているのだろう。


「もう! 牙城君も会話に入らないと駄目よ! あとそろそろ前髪切りなさい!」


「う、はい・・・・・・」


 ミスディレクションも無意味であったようだ。


「柳君もスマホばっかり弄ってないでほら!」


「あはは、そうですね。えっと、この五年間の事でしたっけ? 俺はまだ活動を始めて数か月なので、内容は薄いですがいいですか?」


「勿論! じゃんじゃん教えてね!」


 スマホでメールを送信し終わったので、俺も会話に加わる。


 内容は上月さんがいなかった五年間について、話しているのは主に服部さんと西連寺さん、吉良坂さんの三人だ。二人は人形化、一人はミスディレクション、そして俺は学校で燻っていたいたため仕方ない。喋れるとしたら直近のことぐらいだ。


「え、待って。SSって倒せたの?!」


「アランさんとの共闘でなんとか、といった感じですね。【リヴァイアサン】に関しては一撃で終わったとか訳の分からない報告を受けましたが、あれは三位がおかしいだけだと思います」


「ふぇ~ あれを人間がねえ。私も【テュポーン】を見た事はあるけど、戦おうとは思わなかったな。大き過ぎて攻撃が通る気がしなかったし」


 SSの事、絶対者になった経緯、最近の趣味、どんな女子が好みなのか。

 途中から明らかに話の流れがおかしくなってきた気はするが、ここは変に意見しない方がいい。痛い目を見る事はマイマザーで経験済みだ。


 時間も経ち、話の区切りになりそうなタイミングでスマホが振動した。

 ちらりと確認すると、俺が送信したメールに対しての返信である事に気付く。


「すいません。ちょっと用事が出来たのでそろそろ抜けさせていただきます」


「わざわざ付き合わせて申し訳ないっす。上月先輩の事は後で金剛さんに伝えておくっすから、柳君は家で寛いでて大丈夫っす!」


「えっなんで?! むぅ、分かったわ。牙城君も今日はありがとうね。いい情報も集まった事だし、今からは女子だけで恋ば、ゴホンゴホン大事な話をするわ!」


 用済みになった牙城先輩と共に会議室を出る。


「・・・・・・本当に、嵐みたいな人だよ」


「だ、大丈夫ですか?」


「ありがとう。まあでも、あの人がいるだけで雰囲気ががらっと変わるから。助けられた事なんて両手に収まらないよ」


 苦笑しながらそう呟く。

 なんとなくだが、分かる気がする。こんな仕事だ、あれだけ天真爛漫な人は、そこにいるだけで皆の支柱になるだろう。思えば、服部さんがあれだけ笑うのも上月さんに憧れているからなのかもしれない。


 牙城さんと別れ、俺は道中でスマホに送られてきたメールの返信を確認する。


「・・・・・・奪われた呪具は二つ、内一つは能力不明か」


 俺がメールを送った相手は統括支部だ。

 レオンさんの件について、奪われた呪具と相手の容姿について俺は尋ねた。


 その返答として、呪具の名前と能力。そして敵の容姿を絵にしたファイルが送られてきた。


 呪具二種、一つは球体型の呪具。

 この呪具は、触れた対象を球体内に封印する能力を持つものらしい。対象が死亡した時のみ、球体から解放されたという実例が書かれている。


 二つ目の呪具は鏡だ。

 能力についてはまだ不明な点が多いが、鏡の中を覗いたものが発狂したとの事だ。おそらく精神に作用するものだろうと考えられる。


 そして敵の容姿、添付された画像を見たが、間違いない。

 ――俺達の敵だ。


 記憶の中の姿と全く変わっていない。

 人なのかそうではない何かなのか、神ですら全容を把握できないというのは不可思議だ。奴と俺の守護する神殿。神の予想外が二つも存在している現状は果たして平穏と言えるのか。道行く人の笑みを見ていたらそんな疑問が湧きあがる。


「問題は何故この二つなのか、だが」


 歴代の選定者を殺してきた相手だ。今回も狙いは俺だと考えるのが自然だろう。

 封印と精神攻撃の呪具。まあ俺に通用しない事もないだろうが、果たして決定打と言える程の呪具だろうか。


 もしかしたら別の絶対者を狙っている可能性もある。

 今の俺の傍には二人の絶対者がいる。シャルティアさんに封印系の呪具を、ソフィアさんに精神系の呪具を当てると考えている可能性も十二分に考えられるかもしれない。


「もし、そこのお兄さん」


 ふと、声を掛けられそちらに顔を向ける。


「ちょっとこちらにおいでなさいな。考え事はまず冷静にならないと」


 そこには、お洒落なカフェのテラスで寛いでいる吸血鬼のスぺさんの姿があった。

 今日も紅のドレスを身に着けており、周囲から完全に浮いている。カップを一度机に置くと、俺に笑みを向けてこちらに来いと手招きをする。


 無視をする訳にもいかないので、俺も店に入りコーヒーの注文をしてスぺさんの席に移動した。


「お邪魔します」


「ええ、どうぞ」


 う~ん、やはり何を考えているのか分からない。

 取り敢えず、カップを口に持っていき、コーヒーを喉に流す。


「はぁ・・・・・・」


「困っている時は誰かに相談する事をおすすめしますわ」


 それは暗に自分に話せと言っているのだろうか。


「話せば答えて貰えますか?」


「ふふっ、貴方の血を少しだけ飲ませて頂ければ」


 舌なめずりをしてそう提案する姿は完全に捕食者だ。

 にしてもやっぱり対価は求めるのか。でも血だけで情報が貰えるのなら案外安いのかもしれない。


「血を吸血されると眷属になったりします?」


「そんな作用はありませんわ。貴方は少しだけ貧血になるだけ、それに、今回は飲ませてくれると約束さえ頂ければ後払いで構いませんわ。質問を先に答えましょう」


 大盤振る舞いだな。ちょっと、いやかなり怪しくはあるが、足踏みするのも時間の無駄の気がする。

 仕方ない、今回はこの人を信用してみよう。


「分かりました。俺の血でよければ次の機会に飲んで頂いて構いません。それで早速質問なのですが、鏡型の呪具の能力って知ってますか?」


「ふむふむ、鏡型の呪具ですか。幾らかありますが、おそらくあれでしょう。呪具保管施設に存在していたものですね?」


「はい。・・・・・・というか、当たり前のように機密事項も知ってるんですね」


 本当にどうやって情報を得ているんだ?

 流石に俺よりも早く情報を入手してはいないだろうが、謎過ぎる。


「あれは映した対象の過去を脳内に流す、精神汚染の呪具ですわ」


「過去ですか?」


「ええ、ただし、単なる過去ではありません。恐怖を抱いた過去を、更に残酷に歪めて対象の精神を侵すのです。催眠に近い作用もありますので、それが現実だと思い込み、並の精神であればすぐに崩壊するでしょう」


 近い効果は思い描いていたが、直接言葉で言われるとかなりえげつないな。

 鏡を見るだけで即アウトか。少し対策を考えた方がいいかもしれない。


「ありがとうございました。少し整理がついた気がします」


「それは良かった。では、今度血をいただきにお伺いしますね」


「はは、お手柔らかにお願いします」


 スぺさんの妖艶な笑みに、少しだけ急いた行動だったかもしれないと冷や汗が流れた。


牙城さん・・・・・・強く生きて(/ω\)

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終焉都市の雑草
連載開始です(*´▽`*)
神々の権能を操りし者2
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