157話 神が見ているぞ
祝・一周年!(昨日)&50万字!(*´▽`*)
「そうだな。十二分に猶予はある。ここは一つ、俺が実戦で、終着点の一つを見せてやろう」
隼人の身体、しかし隼人ではないモノ――太陽神がそう告げる。
圧倒的な存在感を前に、本能で危機を感じ取ったのか、【ドッペルゲンガー】は大きく後退し、素早く刀身が欠けた千鳥を納刀する事で、抜刀の構えを取る。
太陽神は周囲をチラリと一望し、何事かを確認すると、軽く首を回してから怪物へと視線を戻す。
「ま、その前に反省だな。隼人よ、お前は少々敵を過大評価する癖がある」
『雷切』
怪物が、千鳥を抜刀する。
視界内全てを両断する雷閃が宙を駆けた。
対する太陽神は、何もしなかった。否、する必要がなかった。
その場に佇み攻撃を待ち受ける。
ただそれだけで、太陽神の眼前で雷閃が分解するように霧散した。
「これだぞ? 確かに見かけだけは立派に繕ってはいるが、その攻撃には権能の理が存在しない。お前の敵ではないはずだ」
呆れるように息を吐くと、両手をポケットに入れる。
手を出しておく必要すら感じさせない敵だ。否、敵ですらない。太陽神にとっては、隼人に教鞭をとる教材でしかないのだ。
『位階上昇――荒れ狂え、英雄神』
武御雷では有効打にならないと判断したのだろう。
権能を英雄神のものへと切り替える。
『捻り潰せ』
怪物の声に呼応するように、地面が裂け、ダムが決壊するように水が勢いよく溢れ出る。
「単純だな。炎は水で消火しましょうってか? あの体術馬鹿と同じ思考かよ」
洪水は蜷局を撒きながら戦場を踊り狂い、上から圧し潰すように迫る。
太陽神は軽く上を見上げ、
「――頭が高いぞ」
世界が一瞬、色を失った。あまりの光に他の色を判断できなくなったのだ。
キインという音が響く。
洪水が動きを止め、一瞬赤熱したかと思えば、次の瞬間には、その尽くが霧散した。僅かに残った水滴さえも、宙でその姿を消す。
「そもそも俺は燃えているのではない。熱と光を生み出しているだけだ。幾ら水をかけたところで意味はない」
太陽神の背後。何時の間に距離を詰めたのか、怪物が鍬を片手に上空から振り下ろす。
「二度目だぞ」
――頭が高い。
淡々と、しかし背筋が凍るような怒りを含んだ声。
宙に体を置いている怪物はその瞳を見開く。
怪物が右手に持っていた鍬の神器マルンは、己の右腕と共に、腕の付け根から全ての存在が消えていた。
太陽神は視線だけ後ろに向けると、口を開く。
「滅爆」
視界内全てが漆黒の炎に染まる。
爆発の轟音が鳴り響き、余波が周囲の瓦礫を文字通り消し炭にした。
「ちょちょちょっと~?! 危ないんだけど! ボク死んじゃう所だったんだけどっ?!」
どこからか声が聞こえてくるが、気のせいだと判断すると、眼前の怪物に目を移す。
まともに直撃を受けた為、上半身はない。下半身だけが地面に横たわっている。
「手加減も難しいな。隼人もこの程度は出来て貰わないと困るぞ? お前の封印も解けたんだ。いい加減、一柱でも権能を使いこなせ」
横たわる怪物の傷口から、時が巻き戻るように体が再生していく。
【魔王】による超再生だ。完全に体が再生すると、鋭い眼光で太陽神を睥睨し、両手を振るう。手の先からは、薄っすらと糸が見える。
『模倣――破壊神』
失笑を浮かべる太陽神の地面が割れ、下から糸――天網久遠が姿を現す。
太陽神の周囲を瞬時に囲うと、繭の結界を作り出す。
隙間から光が漏れ出し、凄まじい熱量によって、繭が燃え尽きる。
光をかき分けるようにして怪物が間に割り込む。
地面に亀裂が入る程に踏み込み、眼前で構えを取る。
『三番、破獄螺旋』
腹部に右手が添えられ、衝撃が駆け巡る。
英雄神のポテンシャルに破壊神の権能を合わせた合技。
「ほぅ? 中々だな」
直撃を受けた太陽神は何食わぬ顔で呟く。
よく見れば腹部に巨大な穴が空いている。ただ、傷口の周囲で炎が上がっており、一際大きく炎が燃え上がると、幻覚であったのかと思う程にあっけなく、傷が消えた。
「【魔王】で模倣した権能には実には届かなくとも理があるとは。それよりも破壊神か。確か奴は・・・・・・ふむ、そうだな。これにしようか」
太陽神の眼光が変わる。
怪物を見る目が、路傍の石から、殲滅対象に切り替わる。
『・・・・・・ッ!』
凄まじい殺気を受け、怪物が飛び退く。
「一度だ、一度しか見せない。よく見ておけよ隼人」
ポケットから両手を取り出すと、一度目を深く瞑り、再び開く。
ひりつくような空気に誰もが声を出せずにいた。
今の隼人を遠目から見る者は、触れれば火傷では済まない劇物に見えて仕方がないのだ。
先程からの異常な強さとその存在感から、いつもの隼人とは違うのは明白。
それがいいのか悪いのか、現状で判断が付かない為、下手に動くことが出来ない。
絶対者であるソフィアすら、眠たげな眼をせずに戦場を見ている。
ただ、飛び火が怖いだけかもしれないが、それは本人以外は分からない。
「神象――」
太陽神が嗤う、哂う。
最早かの者を止められる者は存在しない。
賽は投げられたのだ。
敵に与えられた行動は、祈りのみ。
「万物滅ぼす凶星」
世界が揺らめく。
周囲の建物がその姿を保てずに崩壊し、次々に地面が裂ける。
崩壊を始めた世界を塗り替えるように、地面が青黒く燃え出す。
ソフィア達の足元からも炎が噴き出すが、触れても火傷をする様子はない。それは遠方の服部や桐坂の場所でも同様だった。
つまり、太陽神は世界の全てを掌握をしている事に他ならない。
たった数秒、その間で世界が変革された。
「分かるか隼人。以前に破壊神が同様に世界を変革しようと、技を放ったことがあっただろう。あれは不完全なものだったが、これが完全な状態での変革だ。お前、あのままなら死んでいたかもしれんぞ」
太陽神の姿が変わっていた。
左目からは青い炎が漏れ、揺らめいている。
背後では漆黒の小さな太陽が、淡い光を漏らしながら浮遊している。
「神象の具現、世界の変革。敵にフィールドのルールを強制し、自身を超強化する。俺の神象にうざったいルールはないが――必要もないだろう?」
既に、【ドッペルゲンガー】を除き、世界全ての怪物が炎に焼かれ消滅していた。
【ドッペルゲンガー】すらも、【魔王】の超回復と英雄神のポテンシャルでなんとか生存できている状態だ。
一個人の能力にしては明らかに逸脱している。
この上厄介なルールでもあるものなら、この存在に敵う者など存在するのだろうか。
「これが終着点の一つだ。身体に刻み覚えろ」
ゆっくりと上空に浮遊し、怪物を見下ろす。
「オーバーキルもいいところだが、幕を下ろそうか」
軽く左手を振るう。
「祈れ、神が見ているぞ」
――救済の死炎
世界が浮き上がったように見えた。
怪物を囲う周囲全ての炎が、まるで母親が優しく手で覆うように怪物に押し寄せる。
防御していたのかもしれない。
なにか大技を放っていたのかもしれない。
全てが、かもしれないとしか、判断できない。
炎が収まったその先には、怪物の姿は、その一片すらもこの世に残ってはいなかった。
「これが俺の権能だ。再度言おう。お前は少し慎重になり過ぎだ。権能は精神の作用も受ける。傲慢になれ、俺達の権能が使えるお前が負けるはずがないんだよ。どれかじゃない、全てを手に入れるつもりで生きろ。でなければ、大切なものを失うぞ」
そう言い放つと、太陽神は権能を解き、目を瞑る。
直ぐに目を開くが、先程の瞳とは違って、呆れたような色を映している。
「・・・・・・いや、神基準で言われてもなあ。ていうかあの人化け物過ぎるだろ。あの空間じゃ滅茶苦茶手加減してたんだな」
惨状に溜息を吐く。
本格的に修行でも始めようかと考えながら、踵を返す。
何はともあれ捕まっていた人達は解放できたのだ、後は裏で裏切っていた者達の処遇が残ってはいるが、事件の解決に笑みを浮かべた。
昨日投稿するつもりだったのに、寝ちまったぜ(^_-)-☆





