15話 嵐の転校生
二章開始です!
窓から射し込む朝日にゆっくりと意識を覚醒させていく。
「朝か・・・」
隣には蒼の姿は既になく、温かみがなくなっていた。
両手を伸ばして手を数度鳴らす。
「今日は水曜日か、学校じゃねえか」
あんなことがあった後で学校に行くとか憂鬱以外の何物でもないが、将来会社で働く為に必要不可欠な事だ。制服に着替え、朝食を食べにリビングへと向かう。
「お兄ちゃんおはよ~」
リビングでは蒼がメロンパンを食べており、近くの時計を見ると七時四十分を指していた。
「今日は遅刻じゃねえな」
「それなりにぎりぎりだけどね」
「間に合えば大丈夫だ」
蒼の様子もすっかり元に戻っている。しおらしい蒼も捨てがたいがやはりちょっと生意気ぐらいが丁度いいのかもしれない。
食パンにいちごジャムをのせて口に運ぶ。ブドウもいいが、今日は甘いものが食べたい気分なのだ。
食べ終わると洗面所で髪を整え家を出る。
「じゃあ、行ってくるわ」
「変な事に巻き込まれないでね?」
「大丈夫だ、早々厄介ごとには巻き込まれんよ」
外に出ると、雲一つない快晴が俺を迎える。
ほら、天候でさえも“今日は何も起こらないよ”と言っているようではないか。
輝かしい一日を確信した俺は気分を良くしながら学校へと向かう。
登校途中、同じ経路を歩く学校の生徒たちの視線が俺に刺さる、但しその視線の質は今までと違い驚きが大半を占めていた。それもそうだろう、一昨日に警察に連れていかれた奴が何食わぬ顔で普通に登校しているのだ、驚かない方がおかしい。そしてその驚愕が大半を占めていることは、それだけ多くの人に俺の事が知れ渡っていることに他ならない。いつもならここでため息の一つや二つ吐くのだが、今日の俺は機嫌がいい。『まあ、何とかなるだろ』と気軽に足を進めた。
そろそろ学校に到着する頃、校門に【メデューサ】こと二階堂先生が立っているのが分かる。
別にやましいことはないのでそのまま横を通る。
「おはようございまーす」
「ええおはよう・・・ってちょっと待てい!」
ガシッと肩を掴まれる。
振り返ると二階堂先生が驚いた表情で俺を見ていた。
「な、なんすか?」
「ちょっと来い!」
手を引かれて先生に連れられる。
校舎の中の一室――生徒指導室まで連れてこられると。椅子に座るよう促される。
まさか、俺のような品行方正な生徒がこの教室に入ることになるとは。
「それで? 一昨日お前が連れていかれた後一体何があったんだ?」
俺が椅子に座ると唐突に先生がそう尋ねる。
どうやら多少なりとも心配してくれたらしい。
「そうですね、事情聴取というなの精神攻撃を散々受けた後、最後には殺されそうになりましたね」
「何?! 実はな、田中の親は警察庁長官なんだ。だからかこちらがどれだけ訴えてもどこからか圧力がかかってもみ消されてしまうんだ。こんな横暴が許されるか?!」
「えっと・・・」
すいません先生・・・それもう知ってます。なんならその親が辞職して今頃大変なことになっているだろう事も、パリピ君が逮捕されているだろう事も知ってます。先生がまだ知らないということはまだニュースになっていないのだろうか?まあそれも時間の問題だろう。
「俺は無事だったので、今回はこれで良しとしましょう?」
「無事だったのは何よりだが、何故お前が消極的なんだ?」
もう終わったからです。と言いたいが、まだ情報が公開されていないのなら喋るのは控えた方がいいだろう。
「いえ、あまり興味がないだけですよ」
「お前の事なんだが?」
「俺は家族が無事ならそれでいいですから」
「・・・そうか」
その後生徒指導室を出ると一年の教室へと向かう。
ドアの前に立つとガラガラとスライドさせる。誰が入ってきたのかと確かめる視線が突き刺さり皆一様にその顔に驚愕の色を張り付ける。それもそうだろう、一昨日に以下同文。
「ねえ、なんであいつが来てるの?」
「うっわ、よくあんな普通に入ってこれるわね。私だったら恥ずかしくて死んじゃうかも」
「ちっ、窃盗犯が来てんじゃねえよ」
暴言の嵐である。
俺に堂々と言えばいいのに、こそこそ友達と言い合うのが俺の神経を逆なでする。今日は気分よく登校してきたというのに台無しだ。俺は机に身を伏せると寝たふりをする。
(三年だ、三年間耐えればそれで終わるんだ)
そう自分に言い聞かせ心を落ち着ける。
数分程度その言葉の針で刺されながら過ごすと、担任の岡本先生が入ってきてホームルームが始まる。
「起立、気を付け、れ――」
『うぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!』
委員長が号令をする途中上の階から大きな歓声が響く。
何事かと教室が騒ぐ中、担任が理由を説明する。
「今日は二年の方に転校生が来てるんだ。それもかなり特殊な人でな、その事もあって騒いでるんだろう」
「どんな人なんですか!」
興味があるのかクラスの男子が目を輝かせる。
「う~んそうだな、一つ言えるとしたらかなりの美人ではあるな」
「「「「おおおお!!!」」」」
これは後であいつら見に行くな? そんな転校生の事で一喜一憂できるなんておめでたい奴らだぜ。俺は既に年上美人の連絡先を持ってるんだ。そんな童貞臭いことはせん。
そのまま少し浮かれた空気でホームルームが終わる。ただし、パリピ君の席は空席のままで何人かは不思議に思っているようだった。
◇
退屈な授業が終わり昼休みになった頃、クラスの中にずかずかと入ってくる二人の姿があった。
「おいゴミ野郎! てめえ一体何しやがった!」
「場合によっちゃあぶちのめすぞごらぁ!!」
それはよくパリピ君とつるんでいたパリピ二号君と三号君である。
君たちは捕まらなかったんだね。良かった良かった肉壁が二枚も減るのはかなり痛いからな。パリピ二号君は俺の胸倉を掴むとそのまま持ち上げる。
「黙ってんじゃねえぞてめえ!」
「いや、俺は何もやってねえよ。あいつが勝手に自滅しただけだ」
「ぶちのめす!」
いやなんでだよ。
俺は至極真当な事を言ったつもりなのだが、今の回答はどうやら不正解であったようだ。
二号君は腕を大きく振り上げ俺を殴ろうとする。
「あの、そこ邪魔なんすけどどいてくれます?」
そこに女生徒の声が俺たちに投げかけられる。厳密には俺を持ち上げている二号君とそばで少女の前に立っている三号君にだ。
俺たちは少女に顔を向けると各々が驚愕の表情を浮かべた。
二号と三号はその少女があまりにも綺麗であったから、俺の理由はその少女が何故ここにいるのかという疑問から来た表情だった。
少女はそんな俺の顔を見ると、クスリと笑い、決めポーズをしながら名乗りを上げる。
「服部 鈴奈。君を堕としに学校まで来ちゃったっす!」
「いや、なんで?!」
その少女は、つい最近会った特殊能力部隊の一員である元気ガールであった。
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