13話 スカウト
ジャンル別日間で50位台になってました。嬉しい(*´▽`*)
これからも皆様の意見を取り入れながらより良い作品にしていこうと思っております。今後もどうぞよろしくお願いします。
金髪ギャルと元気ガールに連れられること三十分。
俺たちは今、少し高そうな店の個室に入っていた。
ちなみに首につけられていた能力をある程度封じる道具は既に外されている。金髪ギャルが俺の首に触れると何処かへと消えていったのだ。彼女の能力だろうが面白い能力だ。
「あの、それで俺に何の用でしょう」
出来るだけ低姿勢で喋る。
相手は天下の特殊能力部隊の一員だ、少しでも気分を害そうものなら俺など一瞬で終わる。
「まあ、お話の前になんか食べないっすか? 柳君もお腹空いてるっすよね。お姉さんが奢ってあげるっす!」
「は、はい。ありがとうございます」
受け渡されるメニュー表。
というか緑髪少女は年上なのか? 一こ下かタメだと思ってたんだが。
メニュー表を見て比較的安いオムライスに決める。
「決まったすか?」
「ええ、オムライスにしようかと」
「麗華先輩は?」
「うちはクリームパスタで」
「オッケーっす! すいませーん」
緑髪の少女が店員を呼び、注文する。
「オムライス一つとクリームパスタ一つあとこれとこれとこれ、あーあとこれもお願いするっす!」
ってどんだけ食べるんだよ! 店員さんも、え?そんなに食べるんですか!みたいな顔して若干引いてるぞ。
「ご飯が来るまでの間軽く自己紹介でもしましょう。私の名前は服部 鈴奈、こう見えても特殊能力部隊の一員なのでそれなりに強いっす!」
と自慢げにない胸を張る服部さん。あっ一瞬殺気向けられた。考えるのはやめよう。
「うちの名前は西連寺 麗華。よろしくね~」
となんだかお嬢様みたいな名前をしている金髪ギャル。まあ、化粧も薄いのでそこまでギャルって訳でもないんだけど。陽キャ感がめっちゃ出てるから俺とは別世界にいる住人のようにしか思えん。
「えーと、俺は柳 隼人です。なんかよく分からないですけど助けていただいてありがとうございます」
俺が目的だったのなら既に色々と知っているだろうが、一応挨拶をする。
「いえいえ、当然の事をしただけっすよ。ほんとあんな奴らを見るとなんだか虚しくなって悲しくなってくるっす」
彼女たちは命をかけて日々戦っているのだ。そんな人たちからしたらああいう存在は許せないのだろう。・・・今までに仲間も失っているのなら尚更だ。
少ししんみりした空気が流れたとこで、タイミングよく食べ物が運ばれてくる。
「さあ食べましょう! 話はそれからっす!」
俺も彼女にならい運ばれてきたオムライスに口をつける。
うん、うまい。西連寺さんは音も立てず黙々と食べ、逆に服部さんはとんでもない勢いで平らげていく。
その姿は正にすべてを喰らうドラゴンのようだ。
そんなに食べて大丈夫なのだろうか? その小さい体の何処に消えているのか完全に謎だ。
数分後、すべてを食べ終わった俺たちは一息着くと本題へと移る。
「それでお話とは?」
「うん、君には特殊能力部隊の一員になってもらいたいんすよ。一応上の方にも柳君の事は伝えたんすけど全く信じて貰えなかったので、こうして自分の脚でスカウトに来たっす。本当、あの爺共は頭が固すぎるんすよ」
「・・・えーと? ああ、なるほど裏方的な仕事の事ですね。少しだけ考えさせてもらってもいいですかね?」
服部さんの言葉に思わずフリーズするが、すぐに戦闘員として必要とされている訳ではない可能性に気づく。俺の事を調べたというのなら能力数値が『0』であることも当然知っているはずだ。
おそらくだがパソコンをいじったりする仕事を頼まれるのだろう。今までパソコンなんてまともに触ったこともなく、『そんな理由でスカウトされる訳ないだろ、現実を見ろよ』と俺の中の悪魔が囁くが絶対そうに違いないのだ!
「いえ、戦闘員としてっす! 」
・・・ドウイウコト?。
なぜだ! なぜ数値『0』の俺がスカウトされるなんて事になるんだよ!
いや・・・まだだ、まだ挽回の余地はあるはず。神よ!俺に力を!
「あはは、またまたご冗談を。俺の能力数値は『0』ですよ、怪物はおろかそこら辺にいるガキにすら勝てるか分からないのにそんなの無理に決まってるじゃないですか」
「う~ん、そうなんすよねぇ。なんで君の数値が『0』になってるのかが不思議なんすよねえ」
「不思議、とは?」
なんだか嫌な予感がするがそう問いかける。
「実は私、先日Aランク級の怪物の討伐を要請されたんすけど、私たちが殺り合う前に既に一人の少年が戦ってたんすよ!」
「へ、へー。いったい誰なんですかねー」
・・・神は死んだ。
まさか、戦闘を見られていたとは。精一杯俺じゃないアピールをするが、服部さんがなにやら顔をにやにやしているのを見ると俺だと確信しているのかもしれない。何か根拠でもあるのだろうか?
「それが驚いたことにその少年は柳君にそっくりなんすよ!」
「まあ、世界には同じ顔の人が三人はいるらしいですからね。たまたま俺に似ている人がいても不思議じゃないですね」
絶対に俺だとは認めない。特殊能力部隊なんかに入ったらいくら命があっても足らん、何が良くて自分を死地に追いやらねばならんのか。守りたい人が大勢いるならばともかく俺は家族さえ無事ならばそれでいいのだ。
「ふ~ん、そっすか。まあ、そういうこともあるかもしれないっすね」
と頷く服部さん。どうやらそれが別人であるとわかってもらえたようだ。
これで俺も家に帰れ――
と、気を緩めた瞬間。目の前から高速で短刀が迫る。虚を突かれた俺は思わず力を発動し、それを掴み取り砕く。
「ちょっ! 何するん――」
力を使わなかったら確実に死んでいた攻撃に文句を言おうと服部さんを見たところで、その顔がいたずらが成功した子供のような表情になっていることに気づく。
(嵌められた!)
「あれぇ、おかしいっすねえ。今のを数値『0』の無能力者が止められる訳がないんすけどねぇ」
「い、いや、今のは・・・その、偶々で」
「ありえないわね。最低でもEランクは屠るほどの威力を持った刃を傷一つなく受け止め、それだけに留まらず特注の刃を破壊するなんてのは無能力者には不可能ね」
なんちゅう攻撃してくれてんだ。人に易々とするようなもんじゃないだろ・・・
このままではマズイ。彼女たちのペースに巻き込まれてしまう。
「俺は!・・・その、その・・・・違うんです」
・・・なんという素晴らしい語彙力だ。蒼の爆笑間違いなしだな。
「まあ、すぐに決めなくてもいいっす。ただ入ったらそれなりに待遇はいいと思うっすよ。なんなら妹さんも連れてきて全然大丈夫っす」
蒼のことまで知っているのか。
俺の警戒を一段階上げる。本当に厄介な連中に目をつけられたものだ。
「気が変わったらここに連絡してくださいっす。私のメールアドレスと電話番号っす」
差し出される一枚の紙。
それを見て俺の警戒は彼方へと吹っ飛んでいく。
スマホに両親と蒼の番号しか入ってない俺からすると、それは禁断の果実だ。
「いえ、それは受け取れません!」
「・・・いや、もうしっかり取ってるんすけど」
「え?」
己の手を見るとそこにはなぜか服部さんの連絡先を記す紙が存在していた。
ばかなっ! 受け取ってしまったものはもう貰わないといけないじゃないか!
紙を強く握ると、誰にも取られるわけにはいかないとばかりに強く握る。これは決して舞い上がっているわけではない。受け取ったものを大事にするのは人として、男として当然のことだからだ。
服部さんと西連寺さんは俺のそんな漢気溢れる様子を見ると、感極まってしまったのか手を口に持っていき、笑い声をあげる。・・・泣いてもいいだろうか。
その後は服部さんが会計を済ませて、店の前で別れた。
久しぶりの家への帰宅である。蒼が怒ってないことを願う。
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