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三十八話『勇者、わたくし』~いつか必ず~

 何とか魔物の死体を谷底から引き上げると、兵士達は息を切らしてその場に倒れ込んだ。そんな中、ナイフを手に持って舌舐めずりをしたナミ族の兵士を、カイは止める。


「ちょいちょい、待ちなさいよ」

「ど、どうしてだよ。一匹は俺達のものになるって言うから、協力したんだぞ。今さら違うなんて言ったら、ただじゃ済まさないからな」


 ラハットは「まあまあ」と兵士を宥めた。この兵士はカイの戦闘を見ていなかったのか、と思わず苦い笑みが零れる。


 カイは溜息を吐くと、青い魔物を指差す。


「一匹ずつ仲良く分ければいいさ。だが、魔物の身体は解体せずにこのまま町の買い取り屋に直接持って行った方がいい。行商を通さないで。そして出来れば二匹同時がいい。その方が間違いなく高く買い取って貰える」

「解体しなくてもいいんですか?」


 ホムの問いかけに、カイは頷く。


「中型なら解体しない方が高くつく。使える部分も多いし、俺とラハットちゃんの粋な計らいで、最小限の傷しかつけていないから。中型でここまで綺麗な死体、それも赤と青のセットだなんてかなり珍しい。二匹セットで上手く交渉すれば、そうだな……、軽く金貨五枚にはなるんじゃないのか」


 その場にいた、ルイン以外の全員が息を呑み、そしてそれはざわめきに変わった。金貨五枚もあれば、カカの村全員が一年は余裕を持って暮らせるだろう。魔物狩りのギルドが乱立するのも頷ける。


 その時、ルインが律義に手を上げた。


「わたくし、昨日から思っておりましたが、もしお金がなく生活にお困りでしたら、わたくしがいくらか、」

「駄目だよ、ルイン様」


 カイは、袋に手を入れていたルインを少し強い口調で諌めた。普段、滅多に本気で怒らないカイが真剣な声色で言ったので、ルインは驚いた様子で手を引っ込める。


「ご、ごめんなさい。わたくし、よかれと思って……」


 カイはうろたえるルインへと柔らかい笑みを向ける。


「わかっているよ。ルイン様の優しさくらい。だけど、それは結果的に彼らのためにはならない。彼らはまだ、自分達で何とか出来るチャンスを持っている」


 ルインはホム達を見つめると、カイに視線を戻して「わかりました」と頷いた。カイは首を回すと、肩を叩きながらホム達に向かう。


「じゃ、俺達は行こうかな」

「あの、本当にありがとうございました。何かお礼を……」

「いつか頼むよ」

「えっ?」

「いつか、ナギ族とナミ族が和解して、カカの村が一つのきちんとした村になった時、この時のお礼をして貰う。それまで首を長くして待っているからさ」


 ホムはナギ族、ナミ族の兵士達に顔を向けると、照れ臭そうに笑った。


「ええ、では、いつか必ず」


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