表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クールなメガネ上司の裏表  作者: キョウ
8/48

8: 跡をつけるのはやめて下さい。

「如月さんと三枝さんが抱き合ってるのを見たぁ!?」

「しーっ、しーっ!!」

 いくら夕飯時で混んでるとはいえ、ファミレスに響く万由子の声は大きかった。

「それがどうして会社やめる話につながるのよ」

 万由子はハンバーグセットをあらかた食べ終え、ハーブティーを飲みながら質問してきた。

「ううっ…、紆余曲折ありまして……」


 あの日、喫茶店を出てそのまま家に帰ったはいいが、万由子からものすごい数のメールが来ていた…。

 如月さんからしつこく食事に誘われてたことすら、彼女には言ってなかったので、あの時如月さんか見せた執着になにごとが起きてるんだ!と事情聴取されるために、夜、ファミレスに呼び足された。


 かなちゃんは万由子と会ったこともあるし、一緒に飲んだこともあるくらいの仲なので、外出はすぐ許してくれた。って、なんで弟にいちいち外出許可を取らなければならないのか…。

 結局、私はかなちゃんに弱いってことなんだろうな。


 一通り説明した所で、万由子は感心したようにため息をついた。

「はぁー、あの如月さんを射止めるとはねぇ……」

「はぁ?何言ってるの?聞いてた?如月さんには三枝さんがいるの。だから、なんで私に構うのか全くの謎で……」

「イヤイヤイヤイヤ、三枝さんとのソレはなんか別の理由がありそう。奈都に対する態度はどう見てもアプローチ以外の何ものでもない」

「「イヤ」、言い過ぎ」

「だってさぁ」

 そう言いながら、万由子は自分の首すじをトントンと指で叩いた。

「?」と思っていたら

「付いてるの。キスマーク」

 絶句した。

 あの時か。応接室のソファーで寝たとき。

 あわててカバンから手鏡を出す。

「いや、多分見えないよ。ちょっと待って」

 と言いながら万由子は自分の手鏡を出して、私のと合せ鏡にして、ようやく首の真後ろの跡が見えた…。

「こっ、こここれって、他の人にも見えてたのっ!?」

 動揺のあまりどもる。

「んー、多分ね。奈都、仕事の時は髪を1つにしばるじゃん?私はその時に気付いたけど、通りすぎるだけくらいなら気づかないよ。まあ、守山は気付いて愕然としてたけどねー、あはは」

 あはは、じゃない!!

 守山くんとは後輩の男の子だ。まだ態度や言葉使いは大学生っぽさが残るものの、仕事のセンスは新人でもピカイチで、安心して任せられる度量もある社員だ。彼はなにかと私に声かけてくれたりして、お一人様好きで別に1人でかまわないのに気を使ってくれる優しい面もある。

「そのキスマーク、わざと奈都に見えない所に付けておいて、それでいて他の人にはわかる位置ってゆーのが、如月さんの執着を感じるわぁ」

 万由子までそんなこと言う。

 やっぱりそうなの?如月さんは粘着系なの?

 かなちゃんは気付いたからこそ、如月さんのことを「粘着系」って言ったんだ、とここで気付いた。


「でも、明日からは隠してきな。誰につけられたかまではわからなくても、お姉さま方に見つかったらうるさいよ」

「う、うん……」

 万由子の言う「お姉さま方」と言うのは先輩の女性社員のことだ。

 少人数の会社だから基本的には皆仲良く、和気あいあいとしている。とはいえ、女性社員はある程度のグループがある。その中でも3~4人の古参の女性社員が、いわゆるお局様的な感じで、社内の恋愛事情やプライベートの噂をよく話しているのを聞いたことがある。

 その内の1人、神崎舞(かんざきまい)さんが如月さんにアプローチし続けていることは社内では有名だった。

「神崎先輩に知れたら……。それこそ会社にいられないかもよ」

「ちょっと、脅さないでよ」

 万由子を睨む。

 確かに自分から退職願を出したけど、本当の所はやめたくない。如月さんのことはともかく、仕事自体は好きなのだ。


「奈都的に、如月さんは無しなの?」

 無し?

 恋愛対象として如月さんを考える。

 スラリとしたスタイルで背も高く、その上に男性にしてはかなり整った顔が乗っている。仕事も出来て、こないだ知ったけど二人で食事をしたときも、さりげない気遣いがサラリと出来るスマートさも持っている。元の口は悪いけど、ちゃんと丁寧語と使い分けることができる。

 こんな完璧な男を恋愛対象としてダメな女子はいるのだろうか?

 あの変な執着を見せられてなかったら、ステキな人だとは思う。

 ただ、もう私は人から好意や執着を向けられることが怖いのだ。自ら誰かを望むことも、もうあきらめた。

 それに、如月さんから「好きだ」とか言われてもなければ、そういう色恋めいたアプローチをされた覚えがない。

 突如始まった執着は、何か別の理由がありそうな気がする……。


 万由子に説明しても、いまいちわかってもらえず、別の方向につっこまれた。

「如月さんでなくても、奈都は彼氏は作らないの?」

「……う、うん……」

「守山からも、他の社員からのお誘いも片っ端からお断りしてるじゃん。なんか理由がありそうだけど、聞いてもいい?」

 万由子はストレートだ。

 見た目は女子力高い系のかわいらしい外見だが、中身はサッパリしてて男前で、私が1人になりたいときはほっといてくれるし、助けて欲しい時は全力で手伝ってくれる。年下の彼氏は万由子にゾッコンで、会社終わりによく迎えに来ているのを知ってる。ほほえましいカップルなのだ。

「……言いたくないなら、言わなくていいよ?」

 沈黙した私に気を使ってくれる所も優しい。

「うーん、万由子になら話すけど、結構長くなるからまた今度。でも、ザックリ言うと、昔に執着系の人とトラブって、もう懲りごり……って感じ」

 なるべく軽く言ったつもりだった。そうしなければ、まだ引きずってる心がザラリと嫌な感じに揺らぐ。

「ふーん、わかった。でも、いつまでもそのまま?」

 痛いとこつくなぁ。

「分かってはいるんだけどね。心が、ついていかない……」

「そっか」

万由子はそれ以上聞いてこなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ