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クールなメガネ上司の裏表  作者: キョウ
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41: 返して下さい。

『神沢くんかね!私と連絡を取りたがってる、と聞いたのだが?』

 電話の向こうは高科教授だった。

 神沢さんが状況を説明する。電話をスピーカーにすることに許可を得て、皆で話せるようにした。

『まったく……あの子は…。すまない。いつまでも結婚せず、ずっと如月くんのことを引きずっていたから、これを機にキッパリ振られればあきらめもつくかと思ってやったのが、裏目に出たな……』

「!?、教授、理人と莉乃ちゃんをくっつけたかったんじゃないんですか?」

 神沢さんがすかさず聞いた。

『確かに私は親バカだがね、大学の時から如月くんが莉乃に全く興味がないことくらいわかっていたよ。それに見合いの話をした時に、彼女がいるからと断られた。あの朴念仁に彼女が出来たなんて、よっぽどだろう?それを今までダメだった莉乃が覆せるとは思わんよ』

 お見合い、教授的にはそういうことで進めてたのか……、と理解はしたけど、自分の娘のために他人を巻き込まないで欲しい。親バカは親バカだ、と思った。

『そこに、如月くんの彼女もいるのかね?』

「は、はい!日向と申します」

『すまなかったな、悪いことをした。莉乃は今どこにいるのか、私にもわからんのだよ。昨日の夜に自宅で会って、如月くんとの見合いは中止になった、と聞いて、今朝は私が起きた時にはもう出かけていてな』

「あの……、莉乃さんの携帯番号を教えてもらってもいいですか?」

『……ああ、そうだな。かまわんよ』

 教授はちょっと躊躇したものの、番号を教えてくれた。

『私の方でも探してみる。連絡は神沢くんにすればいいかな?』

 神沢さんも教授と連絡先を交換しあって、ひとまず通話は切った。


「さて、どうするかな……。とりあえず莉乃ちゃんに拉致られた、としたら理人の身の安全はあると思うんだが……」

 神沢さんは考えこんだ。

「それにしても、理人さんがいなくなって、自分の娘が犯人じゃないかって言われてんのに、教授、あっさり認めてましたよね?もっと、こっちに噛みついてくるかと思ってました……」

 かなちゃんは呆れぎみだ。

「教授は莉乃ちゃんの性格を把握してるってことでしょ。まさか誘拐までするとは思ってなかったでしょうけど」

 道香さんもげんなりしてる。


「あの……、私が莉乃さんにかけてみてもいいですか?知らない番号からじゃ、出ないかもしれませんが…」

 みんなを見渡して言った。

「……そうだな。ダメだったら、また考えよう。日向さん、かけてみて」

 こくりと頷いて、教授から教えてもらった莉乃さんの携帯番号にかける。


 圏外にはならなかった。

 コール音が続く。

『……もしもし』

 女性の声がした。莉乃さんだ。

「莉乃さん……、理人を、返して……」

 前振りも何もなく言った。

『奈都さんね?りーちゃんなら、ここにいるわ』

「出してもらえます?」

『今はダメね。寝てるもの』

「じゃあ、迎えに行きます。どこにいますか?」

『大丈夫よ。りーちゃんのお世話なら、私がちゃんとやりますわ』

 声が、常に嬉しそうで怖い。

「理人は……、いつから寝てるの?」

『そうねぇ…。昨日の夜からだから……』

 それを聞いて更に怖くなった。

「他には、そこに誰かいるんですか?」

『いないわ。もう、大丈夫って言ってるじゃない。お料理も、お洗濯もちゃんと出来ますわ』

 どうやって居場所を聞き出せばいいのか考える。何かヒントでもいい。

「理人が、好きな食べ物知ってますか?」

『えっ…。知らないわ。ぜひ教えて下さらない?』

「親子丼。三つ葉を上に乗せるの」

『まあ、三つ葉はないわ。買いに行ってもらわないと……』

「スーパーで普通に売ってますよ」

『近くにないもの。……そうね、なくても大丈夫よ。りーちゃんは優しいもの。ねえ、そろそろいいかしら?私、早速作ってみるわ、親子丼』

 何か答える前に唐突に切れた……。


 3人が不安げな顔でこちらを見てる。

「多分、理人は強力な睡眠薬を飲まされたんだと思います。昨日の夜から今まで寝てる……って…」

 自分で言ってるうちから、震えてきた。

 怖い。

 莉乃さんが怖い。

 そんなに長い時間寝てるような睡眠薬は、きっと強い薬だ。それを平気で自分の好きな人に使えるその神経が怖い。

「料理と洗濯が出来る所。お付きの人はいないけど、買い物とかはお願い出来る状況。近くにスーパーはない……」

 今の会話から得られた情報はこれだけ…。

「料理や洗濯が出来る……って、ホテルとかではないってこと?一軒家かマンション、コテージとか?」

 かなちゃんが言う。神沢さんもそれに続く。

「待てよ。一軒家やマンションで近くにスーパーがないのはおかしくないか?よっぽど田舎ならともかく普通は生活圏内にあるだろ。お嬢様の莉乃ちゃんがそんなに田舎に行くとは思えない…」

「買い物をお願いする、ってきっとお付きの人よね?じゃあ、その人はどこにいるの?っていうか、教授はその人の携帯番号知ってるんじゃない?」

 道香さんの話を聞いてる途中で、神沢さんは教授に電話をかけだした。


「付き人の番号は知ってるが、さっきからこっちもかけてるのだが、繋がらんのだよ」

 教授もあちこち探してくれていたようで、教授の知ってる限りの友人、知人に片っ端から聞いてくれていたようだった。

 こちらの情報を話す。

「ウチは自宅以外に所有してる物件などはない。どこかで莉乃が借りたりしてれば別だが……。本家はいくつか別荘があるようだがの」

 本家―――。

 ふと、莉乃さんに私のことを誰に聞いたかを思い出した。

「あっ、あの!教授、相楽さんは親戚とお聞きしましたが、相楽さんは本家の……?」

「そうだが……」

 いぶかしそうに答える教授に説明する暇はない。

「相楽さんだ!莉乃さんは、私と会う前から私のこと知ってたの。なんで?と聞いたら「利之お兄様から聞いた」って。多分、これも相楽さんが協力してる……」

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