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第3話 彼女はアニオタ?

 一条さんと目が合った。


 そして一条さんは俺が持っているストラップに気づいた。


「なんであなたが持ってるの?」


 え、なんか怒ってる?


 怖い顔してます。

 目を細くしてこっちを睨んでますよ。

 なんかヤバい感じ。

 もしかしてこれは彼女の持ち物なのか?

 ってことは彼女はこのアニメのファン。

 しかも限定品を持つほどの重度なファン。


 それなら彼女は『アニメオタク』なのか?


「あ、これ。一条さんの物なの?床に落ちてたよ」


「ち、違います。それは綾杉さんの物です。彼女がそれを無くしたと言って探していたので、私も探していたんです。もしかしてあなたが持ってたんですか?」


 俺今床に落ちてたって言ったよ。

 それに自分の物じゃないって即座に否定して、俺が泥棒したように聞こえましたけど?


「いや、だから床に」


「一人で教室は残ってたのが怪しい。あなたが盗んだのね。この泥棒、変態、痴漢!」


 ちょっと待って!

 泥棒はともかく変態や痴漢は違うでしょう。

 ここは誤解を解かないと。


「俺は盗んでないよ。床に落ちてたのを拾っただけだよ!」


「そんなの信じられない。だってそれを大事そうに持ってるじゃない。それの価値をあなたが知ってるって証拠じゃない。白状しなさいよ!」


 俺は取ってないのに~。

 いや待て。

 それの価値って言ったか?

 と言うことは彼女はこの限定ストラップの価値を知ってるのか?


「このストラップの事知ってるの?」


「ふん。当たり前じゃない。そのキャラクターを知らないなんてあり得ないわよ!」


 一条さんは『常識よ』と言った感じで胸を張っている。


 当たり前ねえ。うん、確かに!!


 このストラップのキャラクターはアニオタなら誰でも知ってる深夜アニメのキャラだ。

 近未来の学園を舞台にしたロボットアニメで、ロボットよりもキャラクターの人気が上の作品だ。

 作画も力が入っていて、作画崩壊が全くなかった希有なアニメだ。

 そしてストーリーも秀逸で主人公とヒロインが結ばれた後に最終決戦。

 最後は涙涙の神ラストで俺は最終話を見たその日は何度も何度も見直した。

 お陰で次の日は寝不足で授業中に居眠りをしてしまった。

 そんな思い出の有る作品のストラップだ。


 そして今持っている限定ストラップのキャラクターは、主人公がラストシーンで着ていた戦闘服を着ているバージョンの物なのだ!


 これはDVDに付いている応募用紙で応募しないと手に入らない限定品。

 しかも限定品は二つも有って、これと主人公ロボットのどちらかしか選べないようになっていたのだ!

 俺は悩みに悩んだ末にロボットを選んだ。

 本当なら二つ欲しかったが、悲しいかな金銭的理由で泣く泣く一つは諦めたのだ。


 その無念の品が今、俺の手に有る!


「一条さんもあのアニメ見てたんだね。俺も見てたんだ。一条さんはどっち派? やっぱり主人公のルーシュ。それともスバル? 俺は断然主人公だよ!ラストなんて特に燃えるよね。それにエンディングがまた……」


 あ、しまった。

 ついつい熱弁してしまった。

 これは退かれる。

 女の子にこんな話したら絶対に退かれる。


「私はスバルよ。あの一途でヒロインだけしか見てないあの姿が良かったわ。ルーシュはダメよ。だって自分は完璧って思ってるけど、たまに抜けてるところがあるし。でもそこが良いって言う人もいるけど、私はやっぱりスバル派よ!」


 お、おお。凄い食いついてきた!

 やっぱり彼女はアニオタなんだ。


「って、そんな事よりもストラップ返しなさいよ。ほら」


 そう言うと彼女は俺の手からストラップを強引に奪った。


「あ、さっきの話だけど。スバル派なのは綾杉さんだから。私はそのアニメ見た事ないから。それじゃ」


 そして彼女は去っていった。


 え、違うの?

 彼女アニオタじゃないの?

 でもさっき私はって言ってたよね。


 はっ、しまった!

 誤解が解けてない。

 これじゃあ明日学校に来たら俺が泥棒扱いされてしまうじゃないか!


 それも綾杉さんに!


 それは困る。

 とっても困る。

 急いで一条さんを追いかけないと!


 俺が一条さんを追って廊下に出ると彼女の姿は何処にも見えなかった。


 玄関口に急いで戻ると清隆が居た。


「清隆。一条さん見なかった?」


「え、さっき皆と一緒に帰ったぞ。お前まさか。もう一条さんにコクったのか? はは~ん。さてはフラれたか。そんでコクったのを口止めするを忘れて追いかけてきたのか? ははは。こりゃ明日には噂になってるかもな。初日から飛ばしすぎだよ。お前は」


「そんなんじゃないって」


「分かった。分かった。今日はとことん付き合ってやるよ。そんでお前の傷心を俺が癒してやるよ。くっ、なんて友達思いなんだ俺は」


「違うし。そうじゃないし」


「分かってるよ。さあ帰るぞ」


 結局その日は清隆が俺の家にやって来て泊まっていった。


 清隆に事情を説明して明日俺のフォローをちゃんとしてくれるように頼んだ。

 そして清隆はそれを了承してくれた。


「たい焼き三枚な」


 ……賄賂も忘れなかった。


 しかし、次の日学校で俺は泥棒扱いされることはなかった。


 綾杉さんからは何も言われなかったのだ。

 そして一条さんを見ると彼女はプイッと顔を背けた。


 分からん。昨日は一体何だったんだ?


お読み頂きありがとうございます。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


応援よろしくお願いします。

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