Cheek
ダンデライオンとチークダンスを
荒れた大地
乾いた風が吹く荒野に
一匹のライオンがいました
彼はこのところ狩が失敗続き、
雌にも振られてばかりで
ひどく落ち込んでいました
喉もカラカラ
その後ろ姿は抱きしめたくなるほど
切ないものでした
しかし彼はライオン
抱きしめてくれるものなどいません
とりあえず水だけでも飲もう
彼はオアシスを探しました
どれくらい歩いたでしょう
ライオンはやっとの思いで
小さな水たまりをみつけました
ライオンは夢中で喉を潤しました
一安心した彼はごろりと横になりました
すると突然話しかける声
「こんにちは」
ライオン「?…誰だ‼︎」
「私はダンデライオンといいます」
ライオン「…花が喋った!」
ダンデライオン「よかったら私と踊りませんか?」
ライオン「空腹で動けないんだ」
ダンデライオン「ではわたしが踊るのをみていてください」
ダンデライオンは天使の羽のような綿帽子をかぶり
ゆらゆらと踊りだした
するとどうでしょう
その天使の羽がふわり、ふわりと抜けて
ゆるやかな風に飛ばされて行きました
ライオン「待って、君どこへ行くの‼︎」
ダンデライオン「どこへも行きませんよ
さあわたしに顔を近づけて
あなたも踊りましょう」
ライオンはそっと顔を近づけた
ふわふわ柔らかくてくすぐったくて
なんだかとてもいい気分
ライオンは一瞬で恋に落ちた
ライオン「君が好きだ」
ダンデライオン「私もです
ずっと遠くからあなたをみていました」
ライオン「僕を知ってるの?」
ダンデライオン「ええ、叶わぬ恋と思っていました」
すると突然、北風がビューと吹いて
みるみるうちに綿帽子が吹き飛ばされて行きました
ライオン「ああ、なんてことだ‼︎」
ダンデライオンは見るも無残に消えてしまいました
悲しみにくれたライオンはその場に倒れこんでしまい
このまま死んでしまいたいと思いました
何日たったでしょう
飲まず食わずのライオンは朦朧とした意識の中で
足音がするのに気づきました
重い体を起こし顔を上げると
そこには穏やかな、だが凛とした雌ライオンが立っていました
言葉を交わす間も無く
急な雨が降り
二匹は身を寄せ合いました
ー春ー
一匹の男の子をもうけた
二匹のライオンは
平凡ながら慎ましやかに暮らしていました
子ライオン「お父さん、僕も狩がしたい!」
ライオン「よーし、父さんの動きをよーくみておけ」
ひとしきり親子で遊んで
家路につこうとしたとき
急な雨が降り出しました
親子はいったん、木陰に身を隠し雨が止むのを待ちました
子ライオン「お父さん、この黄色いお花はなんていうの?」
ライオン「さあ、父さんも知らないな」
雨が止み親子は家路につきました
ー晩春ー
子ライオンとライオンは
いつものように狩の練習をしていました
すると心地よい風が吹いて
ふわり、ふわりと白い綿毛が飛んできました
ライオン「…これは‼︎」
綿毛を追いかけて野原に行ってみると
あたり一面にダンデライオンが咲いていました
ダンデライオンは
ライオンの幸せを祝福するかのように
天使の羽を羽ばたかせながら
ゆらゆら、ゆらゆら揺れていました
ーThe Endー