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第6話 何故皇帝が一番不幸なんでしょうか

タイトルとサブタイトルを入れ替えてみました。

そういえばメインは暴君ネロですね。

ご指摘頂きましてありがとうございます。

「陛下は何故、ブリタンニクスを。貴方の息子を退けるような真似をするんですか?」


 僕は罪の意識にさいなまれていた。皇帝が自分の息子に対して無碍な扱いをするのだ。まるで初めから僕とオクタウィアしか子供が居なかったかのようなのだ。


 何度も自分がアグリッピナの本当の息子じゃないことを告白してしまおうとしたが、できなかったのだ。それでも自分の命が惜しいらしい。なんて罪深いんだ。


「あやつは信用できん。前の妻が練っていた暗殺計画を知っていて、見て見ぬふりをしていたんだ。わしは初めからオクタウィアの婿を跡継ぎにするつもりだった。アグリッピナを選んだのもそれに都合が良かったからに過ぎなかったんだ。だがこんな幸せがやってくるとは思わなかったぞ。」


 皇帝は心がキズついている。前妻に裏切られたことでキズついているのだろう。ますます告白なんてできない。


「幸せ・・・ですか。」


 僕は何を聞こうとしているのだろう。こんな自分勝手な僕でも人を幸せにできるというのだろうか。


「あの気性が激しいアグリッピナがこんなにも優しい女だとは思わなかったのだよ。それにも増して君が傍に居てくれるだけで心が温まる。」


 あの時、優しくしてあげろと言ったことが功を奏しているようだ。でも僕も裏切り者なんです。アグリッピナを挟んでライバルなんです。


     ☆


「セネカ。この国はどうして、皇帝が不幸であることを許しているんだろうな。」


 僕も皇帝が不幸になっている因子の一つだというのに他人の所為にしたいらしい。


「あの方は始めを間違った。信頼や情愛じゃなく臣下とお金で繋がりを作ってしまったのです。」


 前皇帝が暗殺された後、後継者が決まらなかったらしい。その時に近衛隊を買収して自分を擁立して貰ったそうだ。


「それは誰も愛情を傾けてくれなかったからだろう。」


 陛下の話では実の母親でさえも『怪物』だと罵ったそうだ。有り得ない。いやそんな例は沢山あるのだ。見えないだけで、現代でも子供を虐待する親もいれば捨てる親もいる。殺す親もいる世の中だった。


「さあ、どうなんでしょうか。愛情がどんなものかわからなかったんでしょうね。それで他人に何か言われると疑心暗鬼に陥ってしまうようになった。」


 セネカが言うには、最初の結婚で愛し合っていたように見えたそうだ。だが周囲の誰かに唆されて別れてしまったそうだ。その後、その奥さんが産んだ娘も認知しなかったそうだ。


 皇帝になってからも皇帝の権力を使って暴虐な振る舞いをする者が後を絶たなかったそうだ。特に前妻はあらゆる男たちに肉体関係を強要し、受け入れなければ皇帝の権力を使い処刑することを繰り返していたそうだ。


 そして最後には別の男と重婚をして皇帝を暗殺しようとしたらしい。しかもその男を皇帝の後継者にしようと目論んでいたというから、開いた口が塞がらない。


 元老院の議員の殆どと肉体関係を持ったことでそれがまかり通ると思ったんだろうということだった。


「アグリッピナ様があそこまで変わられたほうが驚きです。昔はあの方も裏切りに遭い、他人を信用出来なくなっていたんですよ。私を貴方の家庭教師に付けた頃から何かが変わったようです。とにかく貴方が幸せにして差し上げればいいんですよ。今まで通りに。」


 それは僕と出会ったから?


 いや違うな。息子を亡くしたからに違いない。息子に向けていた愛情の矛先が僕に、そして陛下に向くようになった。


「でも僕がいつか居なくなるかもしれないじゃないか。もっと沢山の人に皇帝が幸せじゃないことを知ってもらい幸せにする努力をしてほしいんだ。」


「何です急に、もしかして暗殺を疑われているんですか? 大丈夫ですよ。私もブッルスも全力でお守りします。それにブッルス率いる近衛隊は全員、貴方の味方です。安心していていいですよ。」


 僕はそんな大層な人間じゃないんだ。自分勝手で傲慢な、どうしようも無い男なんだ。でもセネカの気遣いに何も言えなくなってしまった。


     ☆


「アクテという解放奴隷に夢中になっているんですって? そんなに良かったの? 私よりも?」


 久し振りにアグリッピナと屋敷に戻ってきた。そしていきなりベッドルームに連れ込まれてエッチをした後、そんなことを言われた。まるで彼女が嫉妬しているみたいだ。


 まあそんなことは無いんだろうが。


「ちょっとした暇潰しだ。アグリッピナの方が好きに決まっているじゃないか。」


 アクテには悪いがこれが本音だ。もちろん愛情を持って接しているつもりだが、母親の病状が良くなるたび彼女の接し方が少しずつ変わっていくことが楽しいのだ。初めの頃に比べると随分違う。だが僕は欲深い男だ。もっともっと愛を感じたい。


「そう。そうよね。」


 ちょっと残念そうな仕草にムカつく。僕は強引に何度も何度も行為を要求してやった。


「とにかく、陛下には優しくしてやれよな。」


「何よ。貴方が好きになったのは皇帝なの?」


 アグリッピナがからかう様子で言ってくる。


「そうだとも、大切に思っている。だから君が陛下をお守りするんだ。万が一、暗殺なんかされたら僕は君の前から消えるからな。」


 本当はこの女が一番怪しい。僕が次期皇帝の座が約束されたならば、皇帝を暗殺しようとするかもしれないのだ。この女の目的はただ一つ僕が、いや息子の名前が皇帝として歴史に残ることなのだから。


「も、もちろん、解っているわよ。」


 やっぱり怪しいな。でも僕に使える手段はバカの一つ覚えのような脅迫しかないのだが本当に解っているのだろうか。やっぱり不安だ。


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