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謎の四人

「……いったいどういう風の吹き回しだい?」


 僕はそう聞かずにいられなかった。


 ルイスがなにを言い出したかと思えば――よもや、ルハネス・アルゼイドが僕を呼んでいるだと? 


 たしかに僕も彼に用事があったところだし、渡りに船とも言えるが、しかし僕はルハネスと面識がない。なぜ呼ばれるのか、まったく見当がつかないのだ。


「さてな。父上の考えることは私でも予想がつかない」


 これは本音なのだろう。ルイスはやれやれといったふうにため息をついた。


「ともかく、貴様たちもついてきてもらおうか。私だって貴様などと同じ空気を吸うのは御免なのだ」


「……へぇ。言うねえ君」


「ふん。今朝の仕返しといったところだ」


「へー」


 バチバチバチ。


 僕とルイスが目線で火花を散らしていると、

「まあまあ」

 とコトネが仲裁してきた。


「エルくんも、ちょうど良い機会じゃない。ここは素直に連れてってもらおうよ」


「ふん。ま、それもそうだね」


 コトネに免じて許してやろう。魔王の息子だかなんだか知らないが、こんな奴、僕にかかれば一瞬で殺せるのだ。


 周囲の、奇妙なモノを見るような視線に晒されながら、僕たちは校舎を出た。僕たちの半径三メートル以内には誰も近寄らない。


 そんななかにあって、転校生ユイは相変わらずニコニコ笑いを浮かべている。本当にすさまじい胆力だ。


 校舎を出たところで、ルイスは誇るように胸を反らした。


「見るがいい。あれが我が家の馬車だ」


 手の回ることに、校庭にはすでに馬車が用意してあった。僕たちは外履きに履き替えると、ルイスを先頭にしてそこに向かった。


「ご苦労」

 ルイスが護衛の騎士に声をかけると、騎士はぴんと背筋を伸ばし、敬礼した。

「ルイス様。もうお帰りになられますか」


「ああ。彼らは一名を除いて大切な客人だ。丁重に接してくれたまえ」


「イエス、ユアハイネス」

 騎士はもう一度敬礼すると、僕たちに向き直った。

「ただいまより魔王城へご案内致します。道中揺れますのでご注意ください。――さあ、どうぞ」


 案内に従い、僕とコトネ、ユイは順番に馬車のなかへ入る。

 内部には向かい合う形でソファーが設えてあった。遠慮なく腰を下ろしてみる。


 さすがの座り心地だ。ふんわりとした弾力が返ってきて、尻への負担がほとんどない。


 視線を横に向けると、レース付きの窓があった。このレースにも金箔が施してあり、細かい部分にも贅が尽くされているように感じられた。


 それらを見渡し、ユイは僕とコトネの向かいに座ると、満面の笑みを浮かべた。


「さすがは魔王様の財産ですわね。住む世界が違います」


 と言いつつも、動揺している様子はまったくない。


 常時じょうじ笑顔の彼女は魅力的ではあるが、そのぶん感情が読みとりづらいのである。


「小さくなることはない。くつろいでくれたまえ」


 最後にルイスが入ってくると、当然のようにユイの隣に座る。


 魔王の息子、ルイス・アルゼイド。

 謎の転校生、ユイ。


 そんな奇妙な面々を乗せて、馬車は動き出した。


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