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引きこもりこそ至高の時間

 喫茶店、ロウニー・ミュウス。


 一通り情報交換を終えた僕たちは、最後のまとめに入ろうとしていた。


 時刻は二十一時過ぎ。

 まもなく閉店のはずだが、さすがは人気店というべきか、この時間でもまずまずの盛況っぷりである。声量にさえ気をつければ、会話内容が聞かれることはないだろう。


 言うまでもなく、僕とシュンたちは協力関係を結ぶことになった。


 創造神ストレイムの脅威もまだ残っているが、懸念すべきはそれだけではない。


 人間界の王、ナイゼル。

 魔物界の王、ルハネス。


 この二者の出方によって、サクセンドリア大陸の行く末が決定されると言っても過言ではない。そしてそれこそが、創造神の狙いであるかもしれないわけだ。


 まったく情勢が読めない以上、シュンたちが味方になってくれるのは非常に心強い。


「三大国平和会議、か……」

 僕は呟いた。

「このときにどうにかしないと、ほんとに戦争もありえるって話だよね」


 僕の言葉に、シュン国王はしっかりと頷く。


「ああ。なんとか開戦は回避できたが、あくまで一時的な処置でしかないからな。根本的な解決が必要だろ」


「根本的な解決……」


 すなわち、両者による平和条約。

 どうにか話をうまい方向に持っていき、停戦に結びつけるのが僕たちの目的だ。


 戦争が始まってしまえば、それだけで多くの被害者が出る。勝敗も大事だが、なんとか開戦を避けるのが大目的と言えるだろう。


「…………」


 話を聞いている間、コトネはずっと黙りこくっていた。なにやら意図的に黙り込んでいるようだ。


「どうしたんだい?」

 と聞いても、

「ううん、大丈夫」

 と返ってくる。


「ま、とにかく」

 シュンが言った。

「エル。さっきも話したが、俺たちもまだ創造神の目的が掴めていない。事によっちゃあ、会議中にいきなり天使の軍団をぶっ放してくることもありえる」


「……それはまあ、たしかにね」


 天使ら一体一体の戦闘力は、(エルたちにとっては)たいしたことがない。


 だがそれでも魔王ワイズよりは強いし、なにより数が段違いに多い。


「だから、アンタには会議中、会場を見回っててほしいんだが……頼めるか? もちろん、会議を聞いてても構わねえが」


「……そうだね。それが合理的だろう」


 僕のサイコキネシスで会議内容を都合の良い方向に持っていくことも考えたが、敵側には創造神が控えている。そんな安易な手段は通用しないだろう。


 かといって会議に参加するのもね。ちょっと自信ない。


「会議の詳しい日程は追って連絡する。それまで……なんとか出来ることをお互い頑張ろうぜ」


「だね。幸い、ルハネスにコンタクトを取る当てがないこともない」


「ほーん? 知り合いなのか?」


「ま、知り合いの親御さんってとこかな」


 ルイス・アルゼイド。

 彼を伝って、ルハネスの思惑を探りにいくつもりだ。それだけで会議がすこしは楽になるだろう。


 最後に魔王ロニンがちょこんと頭を下げた。


「今日は二人とも、来てくれてありがとうございます。とても助かりました」


「いえいえ……」

 コトネが恐縮したように片手を振った。

「でも、なんでこの喫茶店を選んだんですか? なにか理由がありそうですが」


「え? そ、それはその、コッペパンが美味し……」


「コッペパン?」


「あー、こほん」

 シュンが良いタイミングで咳払いをかました。

「ってことで、詳しいことはまた連絡しよう。エル、おまえさんはワープ……もとい、空間転移はできるか?」


「ふふ。面倒だけどできないこともないよ」


「あー、ありゃあかなり疲れるよな。めんどくせえのもわかるぜ」


「うん、できればずっと寝て過ごしていたいね」


「だよな。ずっと引きこもるのが人生で一番しあわ――」


「ううん、こほん」

 ロニンが良いタイミングで咳払いをかました。

「ってことで、また会いましょう。今日はありがとうございました」


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