表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/126

大魔神の大魔神たる理由

 僕は思い出した。

 入学試験の面接において、相当に疲れ果てていた魔王ワイズを。

 その疲労を癒すためか、警備隊ぐるみで誘拐事件を起こし、女生徒を思うがままにしようとしている。


 僕は思い出した。

 姉を連れ去られ、さりとて誰にも助けてもらえず、泣き寝入りしていた女子生徒を。

 感情が混濁こんだくし、まともに喋れなくなってしまったリノを。


 そしていまも、魔王はコトネをも連れ去ろうとしている。

 十年前のあの日、コトネの人生を棒に振るったにも関わらず、またしてもあいつは……!


「許さない……!」

 知らず知らずのうちに俺は呟いていた。

「魔王ワイズ……目にものを見せてやるよ……!」


「……おまえ、まさか……魔王様と喧嘩しにいくつもりなのか……?」


 かすれ声を発するアリオスに、俺は毅然きぜんと言い放った。


「喧嘩じゃない――殺しにいく」


「……本気か。あの魔王様を相手に」

「駄目か? 止めるならおまえとて殺すまでだ」

「……いや」

 アリオスは首を横に振った。

「俺だって魔王のやり方に疑問を持っていた。犯人が魔王なのであれば……いくら魔物界のトップといえど見捨ててはおけぬ」

「……そうか」


 なら話は早い。二人で魔王をぶっ殺しにいくまでだ。

 俺はゆっくり目を閉じ、ふうと息を吐くと、遠くに屹立する魔王城を見据えた。


「だが、派手な襲撃はしないつもりだ。もし魔王の崩御ほうぎょが人間側に知られたら、それはそれで厄介事を引き起こすからな」


 魔王の奴も言っていたが、人間の国王――ナイゼルは相当に狡猾こうかつな男だ。弱みを握られないためにも、ここは慎重に、かつ静かに魔王の首を狙いたい。


 俺の言葉の意図を察したか、アリオスは力強く頷いた。

「なるほど。承知した」

 そして椅子から立ち上がり、俺を見下ろす。

「しかし、大魔神か……。いま、その所以ゆえんがわかった気がするな」

「……御託ごたくはいい。いくぞ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ