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謎が謎を呼んで困っちゃいます

 僕が黙りこくっていると、コトネはちょっと自信なさそうに言った。


「ねえエルくん……推測でしかないけど……あのヒト、犯人だったりしない、かな……」


 その気持ちはわからないでもない。

 僕が誘拐事件の調査をしているとカマをかけたとき、明らかに動揺していた。


 あの反応は少なからず事件について知っていると思われるのだが、彼はそれでいて知らないと言っていた。


 たしかに――彼を容疑者のひとりとして考えることはできるかもしれない。


 けれど。

 ルーギウスはただ《視線が嫌らしい》というだけだ。


 そんなことで犯人と決めつけるのは早計である。こっちにはなんの確証もない。


 僕のそんな考えを察したのか、コトネはさらに声量を落として言った。


「じゃあ、その……サイコキネシスで自白させるのはどう……?」


「ふむ……」


 僕もそれは考えた。

 けれど。

 僕はふうと息をつくと、肩をひょいと持ち上げた。


「さっきみんなにサイコキネシスをかけたとき……僕はたしかに感じたんだ。たぶん、ルーギウスには《あれ》が仕掛けられている」


「え……」


「君も覚えているだろう? ニルヴァ市で……君を殺そうとしたローブの人間を」


「う、うん。大勢の人間を陽動に利用して、私を殺そうとしたんだよね」


「そう。ルーギウスには、あいつと同じような仕掛けが施されているよ」


「えっ……」

 コトネは大きく目を見開いた。

「じゃあ……ルーギウスも、あのときみたいに爆発するってこと……?」


 彼女の震え声に、僕はこくりと頷いた。

 秘密裏にコトネを暗殺しようとした赤ローブは、僕のサイコキネシスに耐性を持っていた。僕に操られる寸前で、病院もろとも大爆発を起こしたのである。


 ルーギウスも奴と同じ匂いがする。

 あれ以上サイコキネシスの強度を高めたら、きっとルーギウスの身体は塵となっていただろう。そしてそれは、学園そのものが焼失することを意味している。


「そ、そんな……なんで同じ仕掛けが……?」


「わからない。でも……なにかが起きてるね。一般の魔物たちが気づかないところで」


 しかし、これも決め手に欠ける。ルーギウスを犯人と断定するには、まだまだピースが必要だ。


「私、嫌だよ。これ以上、女の子が大切なものを奪われるなんて……」


「そうかい……」


 僕だって彼女と同じ気持ちだ。

 アリオスとも口約束をしてしまっったし、どうにか犯人を捕らえたい。


 けれど、さすがに一朝一夕で解決できることではない。

 相手からまんまと尻尾を出してくれたら、また話も変わってくるのだが……


 そのように考えていると、

「よう」

 ふいに話しかけてくる者がいた。


「エル君といったか。あの自己紹介は大変感銘を受けたよ」


「君は……」


 たしか、僕のサイコキネシスに乗って誘拐事件の証言をしてくれた男子生徒だ。


「えっと……友達の友達が急にいなくなったんだっけ?」


「その通り。……思えば、あの事件は違和感しかなかったな」


「違和感?」


「親御さんが警備隊に相談しても、まったく取り合ってもらえなかったんだよ。泣きながら、どうか娘を助けてください、捜してください……そう言っても、警備隊は話を聞くどころか、親御さんを突き飛ばしたらしい」


「…………」


「フン、それから俺は警備隊なんか信用しなくなったが……やっぱりいま思い返せばおかしいよな。なんで取り合ってくれなかったのか」

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