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女性にしかわからないこと

 それからは軽い授業が行われた。


 いきなりお勉強とは鬼畜だと思ったが、魔物界のトップを誇る学園である以上、このくらいは当然だとルーギウスが言っていた。


 さて。

 そのおかげで、僕はいくつかの情報を得た。


 まず、一番納得がいかない《ステータス》というシステム。

 これはなんと、あの魔王ワイズが《創造》したことになっているらしい。


 自身の強さを数値化することで、より魔力を客観的に把握できるようにする。それが狙いらしい。


 自身の「強み」と「弱み」を理解し、一転特化を目指すか、あるいは弱点を克服するか……そのように考察しながら修行してほしいとのことだ。


 たしかにそれ自体はとても画期的だと思うが、どうにも腑に落ちない。


 第一、あの魔王にそれほどのことができるのか?

 話を聞く限りでは、人間側にも《ステータス》が存在するという。

 それも魔王ワイズが作り出したものだというのか?


 一般の魔物たちは魔王ワイズを盲信しており、そのためこの内容をすっかり信用してしまっているようだ。


 こればかりは後で直接聞くしかあるまい。正直言って、あのジジイにそこまでの能力があるとは思えない。たしかに一般の魔物よりは格段に強いのだけど。


 生徒たちはこれをさも簡単な事実として覚えているようだが、僕には到底受け入れ難かった。


 そのようにして、初日の授業は幕を閉じた。








 放課後。


「ふう……」


 背もたれに体重を乗せ、僕は今日一日の疲れを吐き出した。


 謎。謎。謎。

 目覚めてからずっとこればっかりだ。

 古代竜リュザークの言っていた《盟主》の正体も突き止められていないし、僕が眠っていた十年間に、いったいなにが起きていたのか。


 もしかすれば。

 僕が封印されていた理由も、このあたりにあるのかもしれない。


 現時点では、それも単なる推測でしかないけどね。


「エルくんっ」


 物憂ものういしている僕の肩を、コトネがちょんとつついてきた。

 初めての学校で不安だったのか、授業中、ちらちらと僕を見てきた。そんな可愛らしさに久々の癒しを覚えながら、僕も引き出しの教科書をバッグに詰める。


「……コトネ。さっきのルーギウスの視線……」


「そう。私もそれ言いたかったの」


 やはりか。

 女性の対異性センサー――という表現が適切なのかは知らないが――は男性が思うより敏感だ。


 自分に下心を抱いているであろう男性を、いち早く察知することができる。

 それでもだいたいの生徒は、イケメンなルーギウスに見取れてしまうあまり、そのことに不快感を抱いてもいないようだが。


 コトネは教室を見回し、先生がいないことを確認してから、小さい声で言った。


「あのヒト、やっぱりおかしいよ。女の子のことじろじろ見て」


「それは僕も思ったけど、男だったら誰でも多少は……」


「ううん。あの目つきは、普通を明らかに超えているよ。異常だよ」


「……なるほど」


 まあ、このへんは僕には察することができない。

 大人の女性として成長し、抜群の色気を放つコトネだからこそわかることだ。


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