真の裏側
――なにがどうなってるんだ……!?
僕は必死に状況を呑み込もうと脳を働かせた。
ルハネス・アルゼイドはたしか天使に殺されたはずだ。
なのにこうして星合の間に姿を現した。
そしてあろうことか、創造神ストレイムを殺した。
おかしい。
僕と同程度の実力を持つ創造神を殺せる者なんて、そうそういるはずがないのに……!
「おやおや。さすがに肝を抜かれてしまったかな。大魔神よ」
ルハネスの口調からは、かつての丁寧語は消えていた。
いつか魔王城で見たような、圧倒的なる威圧感を放ちながら、ルハネスはクククっと笑ってみせる。
「言ったではないか。すべての要素は駒……世界を思い通りにするためならば、私は自分自身さえも犠牲にするのだよ」
「…………あ」
その言葉に、僕はようやく合点がいった。
「そうか……。なるほどね。はは。はははは」
乾いた笑いしか出てこない。
「気づけなかったよ。君も《そう》だったんだね。暗黒神……ルハネス・アルゼイド」
「……は!?」
遠くのほうで、シュンが素っ頓狂な声を発する。
「おいおい、嘘だろ!? こいつも神だったってのか!」
僕はこくりと頷くと、ルハネスをきっと睨んでみせた。
「最初からおかしいとは思ってたよ。君は有力貴族だったけど、素性を隠すためにあえて《無能なフリ》をしてたみたいじゃないか。でもそれだと変なんだ。いくら君が有力な貴族でも……魔王ワイズが失脚して、魔物界が大変なときに、そんな奴が魔王に選ばれるわけがない」
「ほう……?」
「つまり、なにかしら強大な力を使ったわけだ。僕のサイコキネシスや、創造神の《幻惑五感》のようにね」
「ふふふ。はっはっは」
ルハネス・アルゼイドは愉快そうに笑い出すと、ナイゼルの首を投げ捨て、片頬を吊り上げた。
「さすがは大魔神、といったところか。なかなかの観察眼だよ」
「お、おいおいおい。ルハネスのおっさんよ……!」
シュンが厳しい目を暗黒神に向けた。
「あんた、前に首都サクセンドリアに《精鋭部隊》を派遣したよな。あいつら一体一体、とんでもねえ強さだった」
そういえばそんな話もあった。
全員が魔王城の兵士より格段に強く、なぜそんな連中をルハネスが抱えているのか――という話をした記憶がある。
「――なるほどね。そういうことか」
僕も同じく、ルハネスをきっと睨んでみせた。
「すなわち、その精鋭部隊とやらが天使だったわけだ。たしかに彼らならサクセンドリアを滅ぼせる。そして、いまトグラス塔を襲っているのも――」
「その通り。この私……暗黒神の天使たちさ」




