表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

116/126

あいつの正体

 アルスの強さは無尽蔵だった。


 道中、何度も天使に行く手を阻まれた。

 そんなテロリストらを、アルスはすべて一刀のもとに斬り殺していったのだ。もはや達人の域をも超えた、神技とでもいうべき実力だった。


 アルスいわく、「むかし神殿で戦った数に比べりゃどうってことない」ということだが、では一体、過去にどんな修羅場を潜り抜けてきたというのか。どうすれば彼のように強くなれるのか――


 一緒に戦っていくうち、ルイスは勇者に興味を持ち始めていた。


 人間に惹かれるなんて、絶対にありえないと思っていたのに。わかりあえない種族だと思っていたのに。

 いつか、聞いてみたい。彼の半生を。


 どれだけ進んだだろう。

 魔物を助けつつ、夢中で廊下を走り続けていると、ふいに《異様な光景》をルイスは見た。


 天使だ。

 死んでいる。

 しかも一体やニ体ではない。それこそ何十体、何百体もの天使の遺骸が、廊下じゅうに転がっている。


「これは……なんだ……?」


 知らず知らずのうちに眉をひそめてしまう。


 天使たちはみな武器を手に持っていた。つまり死ぬ間際まで何者かと戦っていたということだ。


 ――俺たちの他にいるのか? 天使どもを倒している者が――


 そんな疑念を抱きながら走っていると、行く手に懐かしい姿を見た。


 緑色の髪。柔弱な手足は、一度も外に出たことがないかのように白い。

 忘れるはずもない。

 同じくノステル魔学園の生徒――エルだ。


 彼はルイスたちの姿に気づいたようだった。一瞬だけきょとんと目を見開いたが、数秒後には、いつもの微笑みを浮かべる。


「へえ。驚いたよ。君たちも生きていたんだね」


「生きていたんだね、じゃない……。おまえ、これはいったいなんなんだ……」


 無意識のうちに声がかすれてしまう。


 ――出会ったときから、デタラメに強い奴だとは思っていた。

 シンキュウマホウとやらでルイスを一撃でノックアウトし、学園内でも時々ありえない魔法を披露していた。


 だが――こんなにも多くの天使たちを倒すなんて。

 改めて思う。こいつはいったい何者なのかと。


 そのとき。

 ルイスは見た。

 エルの背後で、一体の天使がこっそりと武器を構えているのを。

 いまが好機とばかりに、静かにエルに歩み寄っている。


 ルイスは思わず絶叫した。


「おい気をつけろ! 後ろに……!」


「――ああ。わかってるってば」


 エルは、肩越しにひょいと裏拳を見舞ってみせた。

 それは見事に敵の顔面を捉え、天使は悲鳴すらあげぬままにその場に崩れ落ちる。


「…………!」


 ルイスはまたも激しい驚愕に見舞われた。


 ――馬鹿な。


 アルスも一撃で天使を倒したが、エルはさらに上をいっている。適当に拳を振り回すだけで天使を倒すなど……


「そうか。わかったぞ」

 ルイスの隣で、勇者アルスが得心のいった笑みを浮かべた。

「おまえが風に聞く神……大魔神エルガー・ヴィ・アウセレーゼだな」


「な、なんだと……!」


 大きな衝撃に打たれ、ルイスは我を忘れて叫んでしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ