集落よりI
「着いたわ…ここが私達の集落、素朴ではあるけど生活に不便はない筈よ」
「凄い…本当に魔物だけの…」
僕はミアの案内…助け舟で当面はこの集落に居させて貰えることとなった。
先ほど僕が阿鼻叫喚をしていたのが国境付近の前線だったらしい…ミア曰く
『誰だってリビングにいきなり知らない人が現れたらビックリするわよ』…だそうだ、
集落の中には武器、防具屋の類や宿、食事処、民家、そしてミアの『占いの館』のようなもの…果ては子供用の遊具施設…公園のような場所までー
「ん?」
「どうかした?…あぁ、あの子達ね」
その公園で遊んでいる子供、人間の僕からして見てもかなり痛々しい怪我の跡がある…手当はされているが充分ではないようにも思えた。
「…やられたのよ、勇者にね」
「え、でも勇者は正義の味方ー」
「そう、だからよ…この世界ではね、勇者が現れたら私達は悪になるの、そういう決まりなの」
「そんな…っ」
「あなたにも経験ない?小さいから、気に入らないから、見た目が悪いからって理由で虫をいびり殺してしまった経験」
「…あ……」
「ね?仕方ないのよ…」
ミアは少し寂しそうにしたけど笑っていた、
「さ、ここが私の家…皆がビックリするかもしれないから当面は此処に居てね?」
僕は見ないフリをするのか?
「お風呂は…行水みたいになっちゃうけど、ちゃんとあるから安心していいわ」
笑顔を浮かべた彼女の手が震えていたのを
「それとも一緒に入る?…なんて」
部屋の中にある、彼女には不釣り合いな
小さなベッドを
「…どうかした?」
髪をかきあげるその指にはめられた指輪を
「あはは…ちょっと調子乗っちゃったかな…」
違う
「あ、あの…っ」
僕が憧れた勇者は
「?」
確かに滅茶苦茶な設定だらけだけど
「僕が…」
こんなことはしない、間違ってるッ
「僕が…なんとかしますッ」