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転生者は異世界を生きる  作者: 浅望
幼少期
9/11

8話 翌日

 しばらく母さんに同行していると、2、3mぐらいある木製の扉の前で止まった。母さんは振り向くと、


「アルス、ここが食堂よ。もう父さんたちは来て待ってるから入りましょうか」


 そう言うと扉を開けて入って行った。その(あと)に入ると大きな机に昨日も見た(あお)髪の人と、小学校低学年くらいの女の子がイスに座っており、執事が二人立っていた。


「おぉ、アルスよ。やっと来たな。体に違和感はないか?」


 父さんは僕に気付いて、不安げに聞いてきた。


「大丈夫だよ。父さん」


 僕は体を動かして、特に問題ないことを証明する。


「そうか、それはよかった」

 

 父さんは安心したのか、表情を緩める。

 

「まったく、お父様は心配しすぎです。お兄様はそんなにやわではありません」


 父さんに語りかけたのは、アルスの記憶によると今世の妹であるエノラ・アルカディアである。夜の海のような深い紺色の髪が腰のあたりまで伸びており、眼には青色のサファイアの輝きがある。視線を落とすとフリルが多くついた黒を基調にしたゴシックドレスを着ており、いわゆるゴスロリである。見ているだけで暑そうだが、不思議と汗はかいていないようだ。物腰は上品そうで、雰囲気がどことなく母さんに似ている。それに結構ブラコンが入っているようだ。(もっと)も元の人格は気付いてないようだが。ちなみに両親の名前は母さんがカルラで父さんはガルドである。


「どうかしましたか、お兄様?」


 少し見すぎていたようだ。顔が少し赤い。気を付けなければ。とりあえず誤魔化(ごまか)すことにした。


「何でもないよカルラ。カルラはいつ見ても可愛いね」


 こんなセリフ、舞姉にも言ったことないけど……。


「お兄様、抱きしめたいほど可愛いって//」


 普通に凄いブラコンだったよ、ここまでとは。


「さすがにそこまでは言ってないけど……」


 いつもはどこに座っているのかは知らないが、普通に妹の横に座った。どうやら前世の記憶は部分的に引き継いでいるようだ。だからさっき、ここの場所がわからなかった。


「あなたたち、料理が来るから静かに待ってなさい」


 母さんに(たしな)められたので、おとなしく待っていると早々に料理が運ばれてきた。


 こちらにはいただきます、とかがないようで、何も言わずにみんな食べ始めた。


(逆にあったらあったで世界観ぶち壊しだな)


 なにはさておき、今は食事を楽しもう。


 メニューはフレンチトーストにきのことベーコンのアヒージョだ。前世の価値観で言うと比較的一般的な気がする。


 フレンチトーストを顔に近づけると、バターと砂糖の甘い香りが鼻をくすぐる。口に入れると、ふわりとした感触があり、やわらかい。甘すぎるわけでもないし、薄いわけでもない絶妙な味付けだ。さらにアヒージョを食べると、甘さが薄くなりフレンチトーストを飽きさせない。このベストマッチのおかげか、それとも異世界に来て初めてのおかゆ以外の食べ物のせいか、いつもより食が進む。


 そんなことを考えていると、唐突に父さんから


「アルス、そろそろ家庭教師を(やと)ってみないか?」


 と、提案された。


「家庭教師?」


 困惑気味に返答する。


 異世界にも家庭教師があるのか?というか、なんでこんな歳から家庭教師?家庭教師雇ったことないから知らないけど。こう見えても頭は良い方だった。


「なんだ、知らなかったのか? 前々から言っていたと思うが」 

 

 すみません。よくわかりません。


「貴族は一般的に6,7歳。早くても4歳くらいから家庭教師を雇い武術や魔法を習うんだ。そして12歳になったら王都の学校で勉強する。最終的な目標はトリニティの試験に受かること」


 トリニティっていえば学園世界だったよな。そこまでの道のりが長すぎる……。


「もちろん、王都の学校にも試験があるからな。だからそれまでに家庭教師を雇うんだ」


 なるほど。6歳から貴族の子どもは自由を奪われるのか。あまり言い方はよくないが。


「できれば私は、もっと早くから雇いたかったんだがな。カルラに7歳までは禁止されていてな」


「7歳まではいくらなんでも早すぎですよ」


 母さんは呆れたように言うが、僕は7歳でも早いと思った。


「アルスは来月で7歳だからな。どうだ?」


 そういわれましても。母さんと妹をちら見するが母さんは微笑んで、妹は「お兄様ならできます」と言ってくる。そんな期待した目で見ないでくれ。


 まぁでも魔法に関しては習ってみたかったからな。武術は何とも言えんけど。


「わかった。父さん」


 笑顔でそう答える。すると父さんは


「そうか。前はあまり乗り気じゃなかったようだから安心したぞ」


 と意外なことを言ってきた。元の人格は魔法とか好きじゃなかったのか?


 少々気にはなっていた。そもそも、元の人格は存在しているのだろうか? どこかに消えたりしたのか今でも、意識だけ生きているのかもしれない。とりあえず保留!


「家庭教師には当てがあるんだ。私の家庭教師もしてくれた優秀な人だ。なかなかの有名人だぞ」


 そんな有名人と知り合いなのか。父さん、やっぱりすごい人なのか?


「その人はお前の爺さん、ロウル・アルカディアの知己(ちき)だった人だ」


 じいちゃんの知り合いでもあるのか。


「名前はヘラ・アルファリオンと言い魔界の魔王の妃で魔王が全界戦争で亡くなった後に魔界のトップになった人だ。この人に教わっていれば、トリニティに合格できる可能性がかなりある」


(そんな人に教えてもらえるのはうれしいけど、トップが家庭教師なんかして、魔界は大丈夫なのか)


 そんなことを考えていたせいか


「そう不思議そうな顔をするな」


 と、言われた。


 父さんがそう言うのだから大丈夫なのだろう。


 だが1ヶ月後、あんなことになるとは思ってなかった。

どうも浅望です。

今回は、妹が登場しました。近いうちに家庭教師と兄も出す予定です。

アドバイス、誤字脱字、質問などもできれば言ってください。返信するので!

これからもよろしくお願いします!

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