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転生者は異世界を生きる  作者: 浅望
幼少期
8/11

7話 自分

 ――――夢を、見た。


 何度目(なんどめ)かわからない夢だ。

 それは昔、まだ僕が子供の頃の話。

 それは、まだ僕と舞姉(まいねえ)が出会ってなかった頃の話。

 父さんと母さんが、いた頃の話。


幼稚園児の頃は自分でも天真爛漫(てんしんらんまん)な子供だったと思っている。

 毎日、火月(かづき)と遊びに行っては泥まみれになって帰ってきた。

 それを見て父さんは笑って、母さんは(あき)れていたのを覚えている。

 いつも、話題の中心にいて人気者と言っても良かったのではないだろうか。

 そんな日常がいつまでも続くと思っていた。


 小学校低学年の頃、両親が共に交通事故で死んだ。

 僕はこの事実を聞かされたとき何かの冗談(じょうだん)だと思った。

 その日は僕の誕生日で、二人とも早く帰ってくると言って仕事に出かけていった。

 そう約束したんだ、絶対に帰ってくる。

 そう自分に言い聞かせ3日間飲まず食わず、ずっと帰ってくるのを待っていた。

 でも二人とも帰ってくることはなかった。

 だが、流石に3日も何も食べてなかったせいか倒れてしまい、起きたときには病院だった。

 火月が病院に連絡してくれたらしい。

 その時、両親が死んでから初めて泣いた。

 もう、あの優しかった両親は帰ってこないと、1日中泣いた。


 その後、いとこだった舞姉の両親に拾われて今まで生活してきた。

 しかも、僕が慣れ親しんだ場所がいいだろうと引っ越しまでしてくれた。

 だが最初、新しい両親を拒絶(きょぜつ)していた。


 ――僕の両親はもういないんだ。と


 そこから、復帰できたのは舞姉のおかげだといっていい。

 もしも舞姉がいなかったら、良くて不登校、悪くて自殺なんてことになりかけたかもしれない。

 あの頃の自分に()()ってくれて立ち直るきっかけをくれた。

 だから、今でも舞姉には感謝してるし、慕ってもいる。

 少し性格がおとなしくなったかもしれないが。

 それから、中学に上がったときに隆一(りゅういち)と出会い、今に至る。

 最近では、あの頃の夢を見ることも減った。 

 それでも、誕生日になると少し泣きそうになるが。

 悲痛(ひつう)な過去が無くなるわけではないが、今は前を向いて歩いている。

 

 あ、でも今僕、


 ()()()()()…してるんだっけ。


――――転生2日目 朝――――


「ん、朝…か」

 意識が覚醒(かくせい)し、目を開く。

 とりあえず、体を起こして周囲(しゅうい)を見渡す。

 カーテンから(やわ)らかな朝陽が差し込んできて、外からは小鳥たちの(さえず)りが聞こえる。

 

 コンコン 「アルス様、起きておられますか?朝食の準備ができました」


 カティアが起こしに来てくれたようだ。

 メイドさんが起こしに来てくれるってなんか新鮮(しんせん)だ。 

 寝たふりをしていたほうが良かっただろうか?

 そんなくだらないことを考えながらとりあえず返答した。

  

「うん、起きてるよ。すぐにいくよ」


 そういうと、カティアがドアの前から去って行った。

 というか、どこで食べるか分からないから待っていてほしかったんだが。

 とりあえず食堂に行く前に、着替えたほうが良さそうだ。

 今はパジャマ? のようなものを着ている。

 適当な服を着ようと思い、クローゼットの方に行くと近くにあった自分よりやや大きめの鏡に姿が(うつ)った。

 

 そこには少年がいた。

 髪は青空のように()き通った青色で、先端に(つや)のある白銀のメッシュがかかっている。

 顔は少し幼く、小学3年生くらいだろうか。

 そして、パッチリとした目に、なめらかな肌。

 女の子と言われてもわからないような中性的(ちゅうせいてき)な顔つきをしている。


「誰?」

 だが、すぐに思い直す。

 転生したから、そりゃ顔が違うだろう。

 こんな美形だとは思っていなかったが。

 

 カティアを待たせては悪いし、とりあえずこのことは保留しよう。 

 そう思い、早急(そうきゅう)に服を着替えて部屋を出る。

  

 廊下には、真紅(しんく)のカーペットが引かれており、等間隔に配置された窓がある。

 この屋敷の構造は、まだ把握(はあく)できていないので右往左往(うおうさおう)してしまう

 どうしようかと迷っていると、後ろからおっとりした声をかけられた。

 

「あら、アルス。こんな所でどうしたの?」


 後ろを振り向くとすぐ近くに母さんの心配そうな顔があった。


 一瞬ドキッとしてしまう。

 昨日は気づかなかったが、身近で見ると母さんは滅茶苦茶(めちゃくちゃ)可愛い顔だった。

 一見すると高校生くらいに見える。

 きらびやかな桃色の髪が腰まで伸びており、カールを作っている。

 髪色とは対比したエメラルド色の目が少し眠たげに細められており、ゆったりしている服装と合わさって、落ち着いた雰囲気を(かも)し出している。

 

(ってなに母親に欲情してるんだ)

 

 自分の間違った感情を取り払い、母さんに応じる。


「母さんこそこんな所でどうしたの?」  


 そう尋ねると、


「アルスが遅くて心配だったから、見にきたの」


 と、言われた。


(いや、カティアが来てすぐ着替えたからそんなに遅くはないはずなんだけど…)

 

 自分の母親の時間感覚を疑ってしまう。


「ごめん母さん、どこで朝食食べるのか忘れちゃって…」


「そうなの。たまにそういう時ってあるわよね。母さんもたまにあるわ」


 と、(なぐさ)めてくれたが内心


(ないよ! 、自分で言っといて何だけどないよ! )


 と思っていた。


「じゃあ、一緒に行きましょうか」


 母さんは機嫌がいいのか、鼻歌を歌いながら歩いている。


 僕はその後を、ついていくことにした。

 どうも浅望です。アドバイス、誤字脱字、質問などもできれば言ってください。返信するので!


これからもよろしくお願いします!



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