9話 魔法
朝食が終わった後、部屋に戻りベッドの脇にある机の上に置いていた魔法書を手に取りベッドに腰かけた。
「『子供でも分かる魔法の仕組み』か。50ページくらいだし読めそうだな」
表紙にはポップな絵が書かれており、ページををめくると最初の前書きに魔法の在り方が説明されていた。要約すると、『魔法とは、自分の体内にあるエネルギー(魔力)を使って行う奇跡のようなもの』らしい。魔法が発見されて何百年もたつが未だに原理が解っていないことから、『奇跡』と表現しているようだ。
2、3ページあらすじがあるが、これを6歳が理解するのはなかなか難しいと思う。僕の体も6歳よりも2、3歳成長が早い気がするし、この世界の人は比較的成長が早いのだろうか?
魔法に関係ないことを考えながらページをめくり書かれていることを読んでいく。絵が多いので思っていた以上にはやく読み終わった。
とりあえず魔法の使い方はだいたいわかった。詠唱は必要で、それに魔法の名前を言い『イメージ』『魔力収束』『魔法構築』『放出』という手順があるようだ。
『イメージ』しなくても良いがした方が、より魔法が構築しやすい。
『魔力収束』自分の体内にある魔力を魔方陣を展開する所に集めること。
『魔法構築』は詠唱と魔法名を言ったときに魔方陣を構築するのを言い、自分の中の魔力を魔方陣に流して魔法を作ること。
『放出』もそのままの意味だ。耕畜した魔法を放出する事の意味
一般的にはこの過程が必要で、熟練すると無詠唱や魔方陣を相手に分からないように展開したり出来るらしいのと、一部例外などがあるようだ。
他にも注意事項などが書かれていて、魔法発生中に集中が途切れると魔法が暴発する可能性があったり、魔法を一回発生させるとキャンセル不可能だったりすらしい。(構築はキャンセル可能のようだ)まだあるが長いので以下略。
意外と内容は薄かったうような気がするが、重要なことは把握できたのでよしとする。だが、魔法名は書かれていなかった。子供用の本だから間違えて発生させるのを防ぐためだろうか?もう少し詳しく書いてそうな本はないかと思い、さっき読んでいた本を机の上に置きまだ読んでいない本を漁る。
すると、奇妙な本を見つける。10ページほどだが、古びた黒表紙に赤文字で『闇魔法師の報告書』と書かれている。読んでみると、どうやら闇魔法師とは魔法師が闇落ちしたもので強大な力を手に入れる代わりに、精神を蝕まれるものらしい。
妙な本を見つけたな、と思っているとノックとともにカティアが部屋に入ってきた。
「アルス様、お飲み物はいかがですか。おや、その本は……」
「あ、ああ。カティアが持ってきてくれた本の中にあったんだけど……読んじゃだめだったかな?」
間接的に僕のせいじゃないですよアピールをしておく。別にビビっているわけではない。
「いえ、読んで大丈夫だと思います。おそらくですが、30年前のものがまだ残っていたようですね。申し訳ありません。間違えて持ってきたようです」
カティアが済まなそうに頭を下げる。
「いいよ、そんなことで謝らなくて。それでちょっと聞きたいんだけど30年前にこの闇魔法師がいたの?」
カティアはお茶を入れながら、
「はい、30年前に全界戦争があったことは話しましたよね」
「ああ、人族が仕掛けたっていうやつだよね」
時期が一致しているってことはなにか関係があるのだろうか。
「そうです。その仕掛けた人族というのがこの闇魔法師と言われています。もともと人族は他種族と友好的な関係を望んでいましたが、闇魔法師の宣戦布告でそれが叶わず戦争になりました。他種族は闇魔法師に同族を何人も殺されていて、話し合いどころじゃなかったそうです」
「つまりそれって、闇魔法師が意図的に戦争を勃発させたってこと?」
「そう言われています」
しかし、何故そんなバカな真似をしたのかという疑問は残る。闇魔法師になると精神が蝕まれるらしいからその影響だろうか。
「ですが、戦争後に闇魔法師は一掃され今ではいないと言われていますが……」
「そうなんだ。なら安心だね」
「はい……。そうですね」
カティアが歯切れ悪くいう。表情もいつもより暗く、なにか思うところがあるのだろうか。
「カティア、どうしたの?」
問うと、カティアはいつものキリッとした表情になって「いえ、なんでもありません」と、答えた。
「そうか?だったらいいけど」
カティアのことは気になるけど、本人が言うつもりがないようだからしょうがない。だが、疑問が払拭されスッキリする。
「また気になることがあったら質問させてもらうね」
「はい、いつでもどうぞ」
カティアは少し微笑んで答えてくれる。なんだかんだ物知りだから心強い。
「それでは私はこれで」
そう言ってカティアは部屋から出ていった。僕はまた読書に戻ることにする。カティアの入れてくれたお茶を飲みながら読むことにしよう。
そうして時は過ぎ、僕は1ヶ月後を迎えた。
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