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万能の神、仲間を増やす

宿で日を跨ぎ、私達は今日も元気にギルドへ依頼を受けに行く。

いや、分かってるのよ?拠点を移して旅しなきゃってのは。でもね、ほら、情報がないことには、動こうにも動けないでしょう?ね?


「ねぇ、これ、気にならない?」


オーエンが掲示板を見て私を呼ぶ。

何か見つけたようね。次の行き先を決めてくれるようなら良いんだけれど。


「うん?」


オーエンが指した張り紙に目をやる。


クラウス山の洞窟 ランクA

依頼主 ギルド

報奨金 15000G


近隣に鎮座するクラウス山の麓に洞窟が確認された。村が近いこともあり、未探索のままでは何が現れるか分からない。実力のある者に探査して貰いたい。

既に何人かが探査に行ったが、不思議なことに、皆、洞窟に入ってから出るまでの記憶を失って帰ってくる。これでは何も分からない。


ちょっと、記憶喪失とか、なかなか危険じゃない?


「どうやら、事は深刻そうね。」


「深刻と言うよりも、え、寧ろ普通の旅人とか冒険者に攻略できるもんなの?」


「さぁ?でも、オーファンならできるでしょ?」


いや、そうだけどね。ほら、万が一って事があるじゃない?記憶喪失とか、物騒で仕方がないのだけれど。


「そう思うなら、尚更、急いだ方がいいんじゃない?」


「思考を読む力はあなたは持ってなかったでしょ。」


「カンよ。さ、じゃあ、この依頼で決まりね。カウンターに持って行ってくるわ。」


嫌な予感がするのは私だけ?万能の力があるなら問題ない?考えすぎかしら。


「じゃ、行きましょうか。」


「ねぇ、」


「んー?」


「あなたって、私に会う前から、こう…「無謀?」


言い切る前にオーエンが言葉を挿す。


「うん、それ、昔から言われてるんだ。」


あれ、地雷だった?


「でも、ほら、今はオーファンがいるからさ、それに、オーファン1人じゃ何処へ行こうかとか迷うんじゃない?」


「そう言う事。そうね、あなたが行ってる事は間違ってないと思うわ。それでいいと思う。」


「そう言ってくれると救われるわ。」


オーエンはいつもより少し暗めの、ぎこちない笑顔を向けた。


ふーん。この子はこんな顔もするのね。考えなしって訳でも無さそうだし、任せてもいいのかな。


「でも、」


「ん?」


「本当にヤバい時は、止めてくれると助かるな。」


この子、私に会うまでどうやって生きていたの⁉︎


「あ、ここみたい。」


「え、」


歩いて1時間もないじゃない!ホントに近いわね!こりゃ、中に魔物でもいようものなら、村人はここら休まることあらずね。


「じゃ、行きましょうか、オーエン。」


「うん。」


洞窟の中は全く整備されておらず、真っ暗だった。さて、どうしたものか。


「オーファン、洞窟を照らせる?」


「出来るけど、魔物が居たら気付かれるわよ?」


「バッチコイだよ!レベリング大事!」


レベリングとか言ってるよ。そういや、あんまり気にしてなかったわね。レベル。あまり差があると呪詛魔法とか干渉系のスキルが無効化せれるのよねぇ。気をつけよっと。

私は自分とオーエンを中心に2つ分の照明を生成する。


「おー、めっちゃ遠くまで見える。何これ、」


「LEDって言うみたい。」


「えるいーでぃー?なんかの略称かな?」


「多分ね。詳細は知らないけど。」


「バウワウ!」

「 「ワウワウ」」


雑談をしていると犬型の小型魔物に囲まれて居た。どれどれ〜

私は意識下にて無詠唱でライブラを使う。実際はライブラではないけれど、それをイメージするのが一番速く、やりやすい。


ウルフA レベル6

HP120 MP20

1.噛みつき攻撃を行います。


弱点 物理 魔法 火 有効 毒 暗闇 混乱 睡眠 麻痺 遅延 停止 即死

耐性 水


ドロップ

狼の毛皮 狼の牙 狼の爪

レア

狼の耳 狼の尻尾


ライブラよりも乱雑だが、より欲しい情報を獲得できた。


ん?次ページ?

私は興味本位で次ページへと意識で捲る。

あ、そうそう、因みに、今は私達の思考以外の時間は止まってるみたい。親切設計ね。


ニホンオオカミ レベル8

HP200 MP40

1.切撃の物理攻撃を行います。


弱点 火 有効 毒 麻痺 暗闇 睡眠 遅延 停止 即死

耐性 水


ドロップ

狼の耳 狼の尻尾

レア

ニホンオオカミの耳 ニホンオオカミの尻尾


ニホンオオカミ!!あの真ん中ボス格っぽいのか!いや、しかし、驚く程にレベル低いな。これでランクAの依頼?となると、やっぱり、最奥が臭うぞ?にしても、ニホンオオカミだって!!


「ねぇ、オーエン、あの真ん中の奴、麻痺にして、眠らせて捕獲出来ない?」


「え、あれ、捕まえるの?」


「だって、既に絶滅したはずじゃ?」


「ワウワウッ!」


内1匹が先陣を切る。


ガシッ

「うーん?違う。コレジャナイ。」


こう、漫画みたいに、ゴキッと。あ、出来た。私、割と物理力もあるみたいね。今更か。


尽きたウルフを端にほっぽり投げて、戦闘体勢を整える。


「ちょっとやってみるか。『パララ』!」


純粋な麻痺魔法ってあんまりたいんだよね、オーファンも無茶言ってくれるよ。ホント、でも、新しい魔法が出来るのは悪くないかも。


ウルフ達の動きが一気に鈍る。


よし、効いてる、効いてる。


「続いて、『スリプラ』!」


そうして、ウルフ達はそのまま深い眠りについた…


「さて、こっちの子には御陀仏になって貰おうかな。」


私はウルフの方を慎重に見分け、心臓を人指しする。ウルフの鼓動が止まり生き絶えたのを確認する。


「そういうの、平気なんだね…」


「え、ダメなの?」


「あはは…得意ではないよね…」


「そう、次からは気をつけるわ。」


旅人でも、生き物が血を流したりするのはあまり好まないのか。オーエンは平和主義なのかな。ま、私にかかれば問題ない。


「さて、」


私は、眠っているニホンオオカミを優しくワームホールへとぶち込む。


「それは?」


オーエンが興味を示す。気になって当然だよね。


「これは、ワームホール。本来、地上なんかには発生しないんだけどね。まぁ、転移装置みたいなものよ。」


「ほえー、便利なもんだねぇ」


言いながら私は、別にワームホールなんて大層なものでなくても、軽い転移装置にしておけば良かったなんて、どうでもいい後悔をする。


ウルフから取れる素材を殆ど回収して先へ足を運ぶ。回収してる間、オーエンには後ろを向いて貰って、音を消した。かわいいものね。


「オーエン、怪我とか大丈夫?」


「大丈夫だよー、オーファンが強いからね〜 私は補助しかできないし〜」


「補助も戦闘には欠かせない要素よ、落ち込むことないわ。」


「うん、ありがとう?」


何故か疑問形。私が万能だから、補助も出来るはずという事が引っかかってるみたい。


「私は、自分だけでやるより、仲間とやる方が楽しいから。」


「ふーん、嬉しい事言うじゃん。そんなこと言うと、張り切っちゃうぞー」


「無理はしないでね?」


「分かってるって」


雑談を交わしていると少し開いた空間にでる。

いやー、これは怪しさ100点満点でしょう。

⁉︎


「ちょっ、オーエン、ストップ!」


「えっ?ーっきゃぁぁああ⁉︎」


ズガァァアと音を立てオーエンが私の方へ吹っ飛んでくる。急いで回復魔法で体勢を整える。


「オーエン、大丈夫⁉︎」


「あ、ありがとう、それより何? 何が起きたの?」


「十中八九敵ね。やるわよ!」


「うんっ」


中に居たのは人型をしていた。


「闇の軍勢、《クウェーロント・フェルナ》。オーファンズ・スカーレット、ここで消えてもらうぞ!」


彼女、クウェーロントは肩の右上に氷の、右下に雷の、左上に炎の、左下に草の翼を持っていた。

言葉を終えるや否や翼を広げ、四属性を纏いながら突撃してくる。


闇の軍勢…?聞いたことないわ。というか、自分から言うのね。


「失礼だけど、私はあなたを知らないわッ」


オーファンは動き遅れたオーエンの前に二重の魔法障壁を張り彼女の動きを止める。


「オーエン、こいつに遅延魔法をお願い。」


戦闘中にも似つかわしくない落ち着いた声でオーエンの耳に囁く。

あれ、反応がない?


「闇の…軍勢… ・・・」


「オーエン?」


「ん?あ、いや、なんでもないよ?大丈夫。遅延だよね。『スロウ』!」


「くっ、動きが!」


彼女は咄嗟に距離を取ろうとするが、いかんせん、動きが遅い。


「さて、鈍ったうちにやっちゃいますか!」


「えっと?氷、雷、炎、草。となると、土が相性良さそうね!」


「まだ、死にたくない!せめて!これを!『四元の平定クウェーロント・アリスタミスタ』!」


四属性の魔法弾が弾幕のように飛んでくる。

私はそれを、依然、魔法障壁であしらいながら、

土魔法を詠唱する。


「『ウォール・オブ・タイタン』」


地面が手前から広がっていくように隆起していく。彼女が放った魔法弾もそれに阻まれ、彼女自身に命中した。


「うぐぅ!」


「まぁ、倒れないよね。私としてはもういいと思うんだけど。」


隆起する土が依然と彼女を襲うなか平然と語る。


「先に奇襲をかけたのはそっちなんだよね。」


「どうせ… 貴様を処理できずに、逃げ帰っても… 消されるだけだ。 殺すがいい…」


「あらそ、じゃあ、私達は先に行くわ。行くわよ、オーエン。」


「え、いいの?きっとまた」


「いいのよ。アレが言ってるのは真実だし。次会うときは味方になってるわ。」


「凄いね、オーファンは。」


「あなたが居てこそよ。」


「ふん。そんな甘い考え方ではこの先で後悔をすることになるぞ。」


「後悔は後でするから後悔なのよ。」


「愚か者が。」


彼女が力尽きたのを確認して先に進む。そういえば、ライブラを使わなかったわね。まぁ、見た目が見た目だったし。


「何もないね… 依頼のランク、間違えてないかな」


「オーエンもそう思うわよね?どうなってるの?」


すると、突き当たりで木造の扉を見つける。


「これを開けるしかなさそうね。私が突入するから、後に続いて頂戴。」


「うん、分かった」


バァン!

勢いよく開いた扉の先に少女の姿を見る。


「『ロスト・メモリー』」


飛んできたスペルを片手で返す。


「あなたね、入ってくる者の記憶を消してるのは。」


「そうですけど。ん?あれ?効いてませか?」


「今、弾いたのよ。」


「え、オーファン、今何したの?」


「記憶消されそうだったから、ついね」


「「はぁ」」


扉の向こうはさほど大きくもない六畳くらいの部屋になっていた。そこにいたのが件の人物。

その人物は両手を挙げ攻撃の意思が無いことを示す。


「いや、無理です。調子に乗ってました。すみません。もう、アレが弾かれたとなると、私はあなたに太刀打ちできません。」


やけに素直に謝る。何か裏があるのかな?


「私の名前は《アンフィアナ・テルファン》。情報を操る力を持っております。」


「情報を操る?」


「それで人の記憶を消していたのね。」


「はい。もちろん、戻すことも。」


「取り敢えず、先ずは戻して貰える?」


「はい。」


「で?オーファンがあなたのえーっと」


「あ、アンフィスとお呼び下さい。」


本当に、やけに礼儀正しい。


「アンフィスは随分、腰が低いけど、なんで?」


オーエンンン!流石、ストレート!


「私の力を跳ね除けられる程となれば、神の類しかあり得ません。それも、かなり上位の。」


「それでか。」


「はい。戦闘は無駄だと。それで、1つ提案なのですが、」


「聞こうかな」


「私に旅のサポートをさせて下さい。」


「「えっ?」」


「私は情報を操れます。そのために、すべての情報を把握しています。この情報を是非にと思いまして。」


「オーファン、私は構わないよ?仲間が増えるんでしょ?」


「戦闘はできないので、直接ついて行くことはできませんが、ここからでも、情報提供と支援攻撃は可能です。」


「あ、そうなんだ。残念。」


「いえ、いつでも、お互いにコンタクトできるようにしますので、寂しがることはありませんよ?」


「それ、あなたにメリットは?」


「オーファンさんの旅が面白いから1枚噛んでおきたいのです。あと、私が今、ここで死なずに済むからですかね。」


嘘は吐いてない…か。信じてみようかな。


「分かった。よろしくお願いね。」


思わぬ場所で新たに仲間を加え、そのまま何事もなく洞窟から外にでる。


「んあぁぁぁっ 外の空気はおいしいな!」


「今回もなんか疲れたわ…」


[少し運動してはいかがです?]


「おおー、ちゃんと聞こえる!」


「テンション高いわぁ」


「取り敢えず、先ずはギルドに報告だね。」


「えぇ、そうね。」


ギルドで報告を終えた私達は宿に戻って休みを取る。


「そろそろ、この村を出ようと思うのだけれど。」


即席で再生した牛丼を食べながら今後のことについて話し合う。


「うん、いいと思うよ?んで?どこへ行こうか。」


[私の出番ですか? んん⁉︎ 何やら美味しそうなものを食べてますね!私も今日はそれにしましょう。]


「おおかたそんな感じね。」


[夕飯についてはスルーですか。まぁいいですけど。そうですね… そこから大分西になるんですけど、小さな村があってですね、その近くに何やら怪しげな屋敷があるそうです。経験値ついでに行ってみては?]


「そうね、私そこでいいと思うわ。」


「私もオーファンに賛成〜」


この日は冒険の疲れもあっていつもより早めにぐっすりいってしまった。

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