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万能の神、ギルドに入る

外の世界に放り出された私は、眠ったままのオーエンを抱えて近くの村で宿を取り、少し休んでいた。流石にはしゃぎすぎて、少し疲れた。通貨が違うけど問題ない。見て、作る。バレたらまずそうだけど、バレないから大丈夫。


「んん… んぅ?」


「あ、起きた? おはよう」


「おはよう? ここどこ?」


「えっと… カボスの村?」


私は記憶の中から村の看板を引っ張り出す。カボスの村。どっかで聞いたことがあるような、ないような。不思議な感覚。


「カボスかぁ、じゃあ、ちゃんと戻ってこれたみたいだね。」


「え、戻ってって… 」


「そう、私、こっちの世界の住人。」


驚く私を他所に説明を続ける。なんでも、私の世界にこっちの世界からあまりよろしくない要素、つまるところ、ラグナロクが入り込んだので、それをどうにかするために、私の世界に居たんだそうで。


「とりあえず、達成報告をしに行かなきゃだね。」


「ギルドか何か?」


「ギルドそのものもだけどね。 ほら。」


彼女から突き出されたカードに目をやる。


オーエンズ・スカーレット 女 (21)

職業 白魔道士/拳士

ギルドランクB


簡潔な情報に顔写真が添えられたギルドカードだった。


え、ランクB? 中々の手練れじゃない?まぁ、1番上が分からないから、なんとも言えないのだけれど。それに、白魔道士/拳士? 魔法しか使ってなかったけれど… あと、職業の隣に白魔道士ってあるとなんか気分が悪くなりそうね。


裏を見ると、電子版のようになって居た。


終焉する世界 完遂


わお、意外とデジタリック。


「へー、私もギルドに入れるかな?」


「少なくとも、オーファンは戦えるから、まず入れるよ。というか、入れないと私も困る。」


どうやら、先の戦闘でだいぶ信頼されたらしい。嬉しい言葉が聞けた。


「じゃあ、そのギルドとやらに向かいましょうか。」


身支度を済ませて、宿を出ると、すぐ向かいに私がギルドだとでも言い張るような出で立ちの建物が目に入る。まぁ、ギルドなのだけれども。


オーエンがギルドの扉を開けると少しの飲用アルコールとタバコ、そして歓談が聞こえてくる。


うっ… 酒とタバコの匂いはダメなのよね、私。不思議と男臭くはないけど。って、殆ど女じゃない⁉︎え、ギルドってそういうものだっけ?


オーファンは咄嗟に嗅覚を抑える魔法を自分にかける。


「クエスト終わりましたー」


「確かに、確認しました。こちら、報酬になります。」


カウンターテーブルに膨れた袋が置かれ、中から金の音がした。それをオーエンのが受け取ったのを確認した受付嬢は杖をカウンターテーブルに置いた。


「それは?」


気になった私は彼女に声をかける。特に妙な点はない。先端は尖り、上部に白い球体をつけている。


「純白の賢杖ね。白の杖の何段階か上の杖で、主に白魔法を強化してくれるわ。」


「成る程。それは便利だな」


回復もまた、戦闘の要になり得る要素だ。これを怠れば勝てる戦いも勝てないというもの。まぁ、単純に、ちゃんとバイタルコントロールしてくれるなら、私もワンマンしやすいから、助かるのよね。


パーティでワンマンする奴はクソだ。


煩いわね。


⁉︎


ギルドメンバーに登録してもらう為に、私もカウンターに立つ。


「新規登録をしたいのだけれど?」


「わかりました。では、こちらの用紙に必要事項を記入してください。」


ペンと用紙が渡された。なになに?


1.名前

オーファンズ・スカーレット


2.性別


3.年齢

年齢?今、いくつだったかしら?まぁ、いいわ。


4.戦闘経験


用紙を書き込み終え、カウンターに出す。


「んっ? えっと、本名で間違い無いですか?」


「はい。」


おや?私はいつの間にか超有名人になったかな?まぁ、万能の神とあらば、無理もないわね。


ズゴゴゴゴゴゴ....


地響き!今回はなにもしていないのだけれど、また世界が終わるのかな?


「オーファン!外!」


一足先に外に出ていたオーエンが私の名前を叫ぶ。私も急いで外に出た。


「なにあれ… ちょっと趣味悪くない?」


「そういう話をしたいんじゃないのよ。」


冷静につっこまれる。オーエンも私になれちゃったかな?

空には自分の尻尾に噛み付いた蛇をモチーフにしたかのような、空中要塞とも言えそうな機械じみた巨大なモノが浮いていた。さながらウロボロスとでも言い表そうか。


「やばそうだね!行ってみよっか!」


「それは、おかしい。」


彼女の好奇心は彼女を殺してしまいそうだなぁ。私がいればありえないけれど。

私達は文字通り飛んで向かった。


要塞の外周をぐるっと回ったが、どうにも侵入出来る穴は無いようだ。ただ、妙な者を見つけた。

それを伝える為、尻尾の上、蛇の顔付近で待ってもらったオーエンと合流する。


「多分、この要塞のボスみたいなのが、そこにいるわ。」


「そこ?」


私は蛇の顔の上を指差す。


「えっ⁉︎むぐっ」


「声が大きいわ」


頷く彼女の口から咄嗟に出た手を離す。


「むはっ それで?どうする?このままボスをやっちゃう?」


口を手で抑えられて、ちょっと赤くなってるのが可愛い。

そう、私も最初は蛇の口から突入して、最深部にいるはずの奴を倒すという計画を立てていたのに、どういう訳か、奴は外にいた。なんで?ちょっとよくわからないわ。


「うん、まぁ、それでいいと思うわ。」


驚異の排除は早い方がいい。


頭の上に登ると、男が1人、玉座に鎮座していた。


「よく、ここまで来たな。」


どこか、ラグナロクに似た雰囲気を醸し出しているが、別に、苦を感じる暇もない道のりだった。


「あなたの目的は何?」


オーエンが問い詰める。


正義心つよいなー、この子。


「この、セカイはシッパイ作だ。」


「は?」


ちょっと、今のは聞き捨てならない。


「私の名はアルバート。《アルバート・ガートレット》。」


すると奴は3本の首を持つ機械の龍に変形した。


「我が野望は今、叶う!」


「オーエン!戦闘!」


「分かってるよー!」


オーエンはそれぞれの頭から飛んでくる炎を避けながら強化魔法と呪詛魔法を唱えていく。

私は炎を魔法障壁で防ぎながら一気に距離を詰める。


「ちょっと、黙ってて!『サイレス』!」


キ-ン!


「え?効いてない?うーん… じゃあ、『ライブラ』!」


ナイスオーエン!ちょうど私もどうしようか手招いていたところよ!

『ライブラ』は相手のステータスを余すところなく調べあげる魔法!


アルバート・ガートレット 男

HP29800/35000 MP6000/6000

1、強力な炎魔法を連続で行います。

2、3つの頭があたり判定です。


物理 普通

魔法 軽減

炎 半減 毒 無効

氷 弱点 沈黙 無効

水 弱点 暗闇 有効

雷 弱点 遅延 無効

風 半減 停止 無効

土 普通 睡眠 無効

即死 無効


ドロップ

1 -

2-

レア

-


素性が判ればこっちのもんよ!


「オーエン!」


「オッケー!『バファイラ』!『エンサンダ』!もういっちょついでに、『ブライン』!」


流石、それだけ出来れば上出来だわ!


暗闇状態に陥った奴は狙い定まらないままあちらこちらと炎を吐く。


エンサンダにより雷属性が付与されたオーファンはどこからともなく取り出した巨大な剣を振り下ろす。


「隙あり過ぎ!唸れ!『カラドボルグ』!」


カラドボルグは奴の体を真っ二つに叩き割った。

すると、空がガラスのように割れると、昼だったのが一変、夕暮れのように空は赤く染まった。


パキパキパリ-ン!


「なっ⁉︎」


「いいだろう。このセカイ最後の余興だ。愉しませて貰おうか。」


「好き勝手言ってくれるねぇ。」


今度は人型になって現れた。オレンジ色のようなバトルスーツといえばいいだろうか。そんな物を身につけ、六枚の羽のように配置された板とそれに似たもので王冠を模した物が頭上に浮いてる。


「貴様にしてはオーバーテクノロジーじゃないか?」


「っ!『ライブラ』!」


咄嗟にオーエンがライブラをかける。


アルバート・ガートレット 男

HP100000/100000 MP10000/10000

1、火、氷、風属性の魔法攻撃を行います。

2、6枚の羽板で、高速飛行を行います。

3、羽板で強力な物理攻撃を行います。


物理 半減

魔法 普通

炎 半減 毒 有効

氷 半減 沈黙 無効

水 弱点 暗闇 有効

雷 普通 遅延 無効

風 半減 停止 無効

土 無効 睡眠 無効

即死 無効


ドロップ

1 アルバートの羽板

2 アダマンタイト

レア

ダークマター


「物理半減が面倒だな…」


「膝まづけ!」


アルバートが何枚かの羽板をまとめ、剣のように振り下ろす。


オーファンは魔法で剣を再生し、対応する。


「くっ!見た目通り重いな!ぱっとでだから、舐めていたが、これは、ラスボス級だな!体力一万って!」


鍔迫り合いしながらも無駄口を叩く。


「命乞いをしろ!」


オーファン達を取り囲むように上下3枚ずつの組みを作た羽板が回転する。

すると、羽板同士の間から小さな突風が発生し、鎌鼬となる。


「小賢しいなぁ!『海怒界滅アトランティカ・エンドワールド』!」


「えっ⁉︎ オーファン、それって?」


「見よう見まねで真似してみる!」


かつて、使われた技を自らで再現する。出来ないはずがないのだ。彼女は万能たがら。しかし、万能故に、彼女は彼女が何ができるのかを把握しきっていない。だから、いつだって、戦闘は行き当たりばったりなのだ。


発生した海にも似た大波は鎌鼬の発生元を洗い流す。羽板が機械製だったのか、機能を失って落下してゆく。


「なるほどな。水が弱点とはそういうことか。耐水性がないんだな。」


「言ってる場合じゃないよ⁉︎」


「再び…かの夢を叶えん『昇天への近道ニーア・ヘブンリィ』!」


「再び?何を言って…⁉︎」


先と同じ仕組みの、先よりもさらにふた回りほど

大きい刃が、今度は禍々しい気を放ちながら、2人を襲う。


「おい!それ!」


「即死の付与効果⁉︎」


即死が付いた以上、アレには触れられないか。ウンターが1番楽なんだけどなぁ…残念。


再び刃が振り下ろされる。


「オーファン!危ない!」


「『アンクラフト』」


刃はオーファンの目前、髪一本の距離で止まる。


「「えっ」」


すると、奴のバトルスーツは機能を失い、解除されていった。羽板で構成されていた剣も形を保つことなく崩れ落ちた。


「シッパイ作に止められるとは。私もまたシッパイ作に過ぎなかったか。」


「この世界は失敗作なんかじゃない。」


オーエンは口に出して反論した。


「否だ。人々は魔物との戦いに身を削り、貧富の差が大きく、女尊男卑のセカイだ。このセカイもまた、シッパイ作だ。」


「それ、この世界作った神様に聞かれたら、痛いどころじゃ済まないわよ。」


「まぁよい。せいぜい、このシッパイ作の中で、ゆっくりと朽ちていくがいい。」


ゴゴゴゴゴゴ...


「地響きが多いわね。」


「いや、地響きというか、多分、要塞が崩れ落ちるんだと思うんだけど。」


「あそっか。脱出するわよ!」


「はーい」


気絶したのか生き絶えたのかわからないわアルバートをそのままに脱出した私達が振り返ると、空中要塞が崩れ落ちていくのが見えた。


ギルドに戻ると皆の歓喜の声が上がった。話によると、空中要塞が現れた瞬間に、魔物ではない敵対生物が出現、激増し、それの対応に手が回らなかったらしく。空中要塞が崩れ落ちるのと同時に敵対生物も消えたので、そうじゃないかという話になったそうだ。


「オーエンさん!オーファンさん!」


受付嬢が呼んでいるので行ってみる。そういえば、咄嗟のことだったから、ギルドカードを受け取ってないわ。


「あ、まず、こちら、オーファンのギルドカードになります。」


ギルドカードを受け取ると、ランクがAになっていた。


「オーエンさんも今回の緊急の完了でAランクに昇格になります。」


「えっ?本当に?やった!」


人が嬉しそうにしているのを見るのが私は好きなのかもしれない。ふと思っていると。


「あれ、オーファンもAランク? え、じゃあ、オーファンはAランクスタート?」


「はい、今回の緊急は本来、Aランクの緊急だったので。」


「ふーん」


「へー、まぁいいや。オーファンとお揃い〜」


「それと、こちら、報酬金になります。」


以前貰った袋より一回り大きく袋いっぱいに金が詰まっていた。


私達の疲れはピークに達していたので、一先ず、宿で休むことにした。


「あ゛〜疲れだぁ〜」


「女の子がなんて声上げてるの。」


グルルルルゥ


「あー オーファン、お腹空かない?何か食べに行かない?」


「んー?私も疲れてんだよねぇ… 何が食べたい?」


「焼きそば… 焼きそばが食べたい!」


「はい。」コトッ


「えっ」


「えっ」


「「えっ」」


目の前に出てきた焼きそばに驚きを隠せないオーエン。


「あー あー そっか、そっか。万能だもんね、そっかぁ、ふーん」ハムハム


「どう、美味しい?」


「ぱっと出てきたのに美味しいのが腹立つ。」


「ほーう?そんなこと言っちゃうんだ」


「あ、いや、嘘です、なんでもないです、めっちゃ美味しいです。」


「よろしい。」


2人でベッドの横に腰掛け、焼きそばを食べる。


「さて、寝ますか。」


皿を片付け(消滅)、ベッドに横になる。実は、旅費削減のため、シングルベッドに2人で詰めているのだ。彼女の吐息が聞こえて、きっと私じゃなかったら寝れないと思う。まぁ、私は?いくらでもなんとでもできますし?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それで、この落とし前はどうつけるつもり?」


「落とし前?感謝こそされど、恨まれる筋は無いと思うんだけどな。」


少し暗い部屋。玉座に座る女王らしき人物に見知った顔、ラグナロクがかつての装備を解いて、膝まづいて話をしていた。


「何を言っているの?」


「少なくとも、僕たち四天王は皆、貴方の計画を知ってる。」


「な、何の話?」


「別に、とって食おうって訳じゃないよ。ただ、僕たちは四天王だ。ボスのお気に召すように動かなきゃね。」


「っ… はぁ、本当に、あなたたちは優秀ね。」


「お褒めに預かり光栄の極みです。」


「しかし、表向きには貴方には罰を与えねばならないのよ。」


「はい。なんなりと。」


「奴の監視、若しくは排除。以上よ。」


「御意。」


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