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プロローグ 後編

旅路も半ば、私たちは小さな森の上を飛んでいると、妙なものを見る。


「水が…蠢いてる?」


森の中。完全な陸地のはずなのに、水が波を立てていた。


「と言うよりも、移動している?」


「少し、見に行ってみようよ。」


好奇心の塊かよ…

心の中で思う。言っても無駄だということはついさっき学んだことだ。


地に足をつけると、男がいた。

彼は海を操る《エンテント・アドミル》。

話を聞くと、この先にいる天地を操る三人組に用があるらしい。


「口ほどにものなかったぞ。」


「何? 戦って、しかもお前が勝ったのか? なら、丁度いい、お前が俺の相手をしろ。」


「ないな。」


「なんだと?」


隣でオーエンがたじろぐのがわかる。


「単純明快だ。私たちは先を急いでいる。」


無益な殺生を愉しむほど私は歪んでない。


「この先に現れた奴はかなり強いぞ。俺にびびってるようじゃ、そいつには手も足もでないだろうなぁ」


煽りよる。私の力量も測れぬ者が。

どうにも私は短気でいけない。


「大口を叩いたことを、後悔せよ。」


オーエンが私の口調から察したのか、やれやれとその場から少し離れる。


「『ハイドロ・フルール』!」


水が何本もの槍を形成し、本人が持つ剣と共に突撃してくる。


どうにも私は、捻くれてもいるようだ。


「『久遠たる焔』(エターナル・フレイム)


水属性に火属性で返す。冒険者でなくとも、これは愚行だと考える。彼も例外ではなかった。


「くははは!愚かなり!水属性に火属性な… どぉぉぁぁぁぉぉおぉおおおおお!!??」


「何故! 何故に水が燃えるのだ⁉︎」


焔は彼が放った水を焼き尽くしても尚燃え盛り、終いには、彼に燃え移った。


ザバ--ッ


彼は急いでその身を外から水で包む。


やはり、人は常識の外へ連れ出すと面白いな。


「『久遠たる焔(エターナル・フレイム)』は永遠の焔。己をも燃やし、尽きることのない焔。」


とはいえ、まだ完成してないから、酸素がないと燃えないんだけどね。


「おぉー」


オーエンが何も分かってないままに歓声を上げていることが私にはわかった。


「ならば、これで決める!『海怒界滅アトランティカ・エンドワールド』!」


「なるほどな。それがお前のラストスペルか。」


まるで、海が襲ってきたかのような巨大な高波。常人であればこれが天災であることを疑わないであろう。しかし、彼女は違った。


「海であれば、やはり、コレに限るよな?」


やはり、彼女は誰という訳でもなく、独り言を呟く。まるで、ここには自分1人しかいないかのように。


「『モーゼの奇跡』」


すると途端に、高波が真っ二つに割れる。

その水は彼女を囲むように背後へとまわって、流れていった。

彼はその延長線上を避けた。


「『久遠たる焔(エターナル・フレイム)』に『モーゼの奇跡』だと?馬鹿げてる… お前は、何者なんだ…?」


息も切れ切れに彼が問う。


「なに。通りすがりの、しがない万能の神さ。」


彼はただ、呆然と立ち尽くした。


「さ、行こうか、オーエン。後が詰まってる。」


「えぇ、そうね、行こうよ。」


オーエンもこの発言に驚きを隠せないようで。

オーエンの視線がちょっと痛い。


邪魔が入ったが、道中、強敵と言える魔物も居なかったので、予定よりだいぶ早く目的地に到着した。


「ここだな。オーエン、準備はいいか?」


「いいけれど、え、本当にここ?間違ってない?」


オーエンは半信半疑か。無理もない。空の裂け目も異変もない。何故ならば


オーファンはなにもないはずの空間に手を出して、少し力を入れた。

パリ--ン

硝子が割れるような音と共に、空には裂け目が現れ赤く淀み、大地の草木は枯れ、異質がそこには居た。


あれが元凶とみて間違いなさそうね。


「うぉっ⁉︎ びっくりしたぁ なにあれ、あれを相手にするの?」


「そうね。」


私が集中したいのを察したのか、オーエンも静かになってくれた。つくづく気の利く子だ。


「ほう。即席とはいえ、我が結界を破るとはな。中々の手練れとみた。名は。」


彼は自らを《ファイナル・ラグナロク》と名乗った。格好つけてるつもりなのかな。ん、なんか冷たい視線を感じる…

視覚的に闇と光が入り混じったような見た目とごちゃごちゃした取り巻き?艤装?が全体的な混沌感を醸し出している。


「我が名は、オーファンズ・スカーレット!全てを操る万能の神也!」


「私はオーエンズ・スカーレット。そうね、うーん、と。あ、旅人!そう、旅人をしているわ!」


なんだろう。アホっぽい。ちょっと可愛いが、鼻につかないのがまた腹ただしい。

それにしても。


「ファイナル…ラグナロク…? ふふっ」


「だめだ、オーエン、思い出すな、笑ってやるな…くふっ」


「だって、最後の…終焉… ふふふっ」


「分かってる、分かってるから…くふふっ」


可哀想なラグナロク。誰がどうみたって、元凶でラスボスなのに、名前を笑われるなんて。少し同情するわ。少しね。


「もう良いか?」


Oh本人様はいたって真面目みたい。それどころか、笑われても崩れない威厳…大したものだわ。


「動かぬなら、我から行くぞ!」


「分かった、私が動くよ。」


「『ゲラ』」


『ゲラ』見よう見まねで使ってみた。効くかな?


「最後の… くふっ 終焉」


「ダァーーハァッハッハッハッ!!」


あ、効いた。威厳たっぷりでも、中身は素直なのね。


刹那、奴はその巨体を瞬間でオーエンの前に置くと、二本の剣を振り抜き、二本のカノン砲で撃ち抜いた。


しかし、剣は折れ、カノン砲は哀れ爆発四散と相成った。


そこにはオーファンの姿があった。誇らしげに。


「このくらいして貰わねば困る。」


「『ムーブ・バインド』!」


オーエンの支援魔法が奴に刺さる。


『ムーブ・バインド』は対象の移動能力のみを奪う。これにより、魔法練成の効率を最大限に引き上げたバインド系の派生魔法である。

これ、テストに出すよーっと。


「小癪な。」


「エネルギー120%充填完了!『波動砲』斉射!」


先刻の茶番でたっぷり稼がせてもらった波動砲三本分のエネルギーを剣1本もない至近距離で放ち切る。普通ならこれで十分だが、私にはこれで倒せたという確たる自信がない。

私は間髪入れず、次手を打つ。


「『トネール』!」


「小癪だと言っている!」


電撃が空間に充満する。勿論、奴はこれをもろにもらい、一瞬、麻痺状態に陥る。私がそれを見逃すはずもなく。


「『シュトゥルム』!」


「なに!?」


嵐のような密度の風を纏いながら、奴の取り巻きを穿つ。奴はバランスを崩し、やはり、隙を作る。そのまま私は奴の背後、空中へと舞う。


「『マジックブースト』!」


もとより、さほど無かった距離をさらに詰め、奴が振り返る前に決める。


「『剣一閃』!」


右手を幾重かの魔力障壁、つまり、シールドが包み、その拳を、硬く、強く、確かなものにしていく。一閃。奴後頭部を捉えた。


「ぐぅっ」ゴッ


とても鈍い音がした。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ


「え、な、なに? 何が起こるの?」


オーエンは狼狽える。

私は笑ってしまうのを堪えて、俯いていると、奴の声が聞こえる。だいぶ弱々しいけど。


「終焉だ。」


「「物語は幕を閉じ、」」


「何⁉︎」


ラグナロクは狼狽する。

奴の台詞を奪って、私は続ける。


「新たな物語が幕を開ける。」


「貴様…何者だ…」


「通りすがりの、しがない万能の神さ。それより、締めの台詞だ、一踏ん張りだよ。」


「ふん。貴様ごときに云われなくとも。」


「「幕は閉じねば開くことすら叶わぬからな。」」


「礼を言うよ、ラグナロク。これでやっと外の世界を観れる。さようなら」


私は隣で気絶してるオーエンを抱き抱える。

あとは、世界が終わるのをまつだけだ。


「オーファンと言ったか。また会うだろう。」


「勘弁してよ。私は男なんかより女の子の方が好きなんだ。今気づいた。」


ほんとうに、今気づいた。















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