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5 モンスターはアイテム

 別に森にだけモンスターがいるってわけじゃないんだろうけど、森に入った途端、モンスターと出会った。


 といっても、またスライムだ。代わり映えしないな。


「こいつら、やたらと生息してるな」


「スライムはある程度の水さえあれば、どこでも生きていけるからね」


「じゃあ、人間の町とかにも出るのか?」


「それだと退治されちゃうから、結局安全な森に固まるんじゃない?」


 なるほど。ありそうな理屈だ。


 まず、さっとスライムにタッチしてみる。


 さあ、このおさわりでどういう効果があるのか!?


 何も変化はない。


 スライムが鎧のスライムに置き換わるとか、合体して二倍の量の鎧になるとか(お菓子じゃないんだから増量はうれしくないというか、重くなるので邪魔なだけだが)そういう効果は何もない。


「すでにかぶってるモンスターに触ってもいまいちわからないわね。まったく、新しい種類のに触らないと」


 アルコの言うとおりだ。


 というわけで、そのスライムは剣で斬りつける。

 乱暴に扱うと、アルコも不愉快だろうから、できるだけ剣は丁寧に使う。


 スパッ。

 あっさりスライムの中央に見えていた核が半分になり、消滅した。


「どう? 私の攻撃力?」


 ついに剣としての実力を誇りだした。

 もはやアルコは剣として生きる覚悟を決めたのだろうか……?


「まぁ、俺自体に攻撃力が高い可能性はほぼないから、アルコの実力なんだろうな」


 そして、たしかに消滅したスライムのあとになにやら硬貨のようなものが落ちている。


 といっても、しょぼそうな銅貨が三枚だから絶対安い。

 せいぜい三百円ぐらいのものだろう。


「銅貨三枚か。三百ゴールドね」


 やっぱり円とゴールドって同じぐらいの交換比率っぽいから三百円かな。


「安いな……」


 先週、名古屋駅で食べたきしめんが三百五十円だったので、立ち食いのきしめんすら食えん金額だ。


「スライムだからね。ザコモンスターは数をこさないとお金にならないけど、はっきり言って面倒だから冒険者たちも無視してる」


 そんな無視の対象でも、貴重なお金だ。ありがたくいただくことにしよう。


 スライムを二十匹倒せば六千円になる。宿に泊まれる可能性が高い。


 でも、皮の袋すらないので、ズボンのポケットに硬貨は入れた。


 まずいな。どっかで銀貨とか高そうな硬貨を落とす奴と戦わないと、小銭ばっかりだとかさんでくるぞ。


 さてと、スライムの次は――そうだな、モグラとかネズミあたりのモンスターと戦いたいな。


 ――と、茂みから出てきたのは、


 巨大な牛のモンスターだった。


 牧場にいる牛などよりひとまわりデカいし、皮膚の色も浅黒い。


「もうちょっと、少しずつ強い奴とやりたかったんだけど……」


 しかも、遭遇した時からやけにこっちに怒りを向けている。


「ガルルルルルルルルッ!」


 ほら、明らかに怒りの声を発してるよ。


 勘弁してほしいな……。


「蹂躙牛ね。しょぼい冒険者だと命を失う危険のあるぐらいのモンスターよ」


「ま~、逃げられないみたいだし、戦うとするか」


 盗賊団に追われるよりは心理的に楽だ。


 すごい勢いで牛が突っこんできた。


 回避しようとしたが、その前に牛が迫っている。


 あ、これはやばい!


 けど、吹き飛ばされる前に俺の左手が牛に触れた。


 その瞬間、牛の姿が変容する。


 あ、これはモンスター装備能力が発動したな。


 今度は何になるんだ? 剣か、鎧か?


 蹂躙牛は巨大な皮の袋になった。


「加工品かよ!」


 いや、たしかに袋はほしかったけどね。硬貨をいくらでも入れられるし。

 てっきり剣とかになるのかと思ったんだけど。


 個人的にはハズレアイテムぐらいの気持ちだったんだけど、アルコの反応は違った。


「うわっ! これ、すごく高級な皮の袋よ。独特の光沢もあるし、防水加工もしてる。超一流の冒険者とかが使うやつだわ」


「まさか、そこでプラスの反応されるとは思わなかった!」


「変な話、これを売れば確実に宿代は捻出できるわよ。十万ゴールドぐらいで売れるわ。まあ、売るのもったいないから普通に稼いだほうがいいけど」


 袋で十万円か。登山用品とかもかなり高いイメージあるけど、冒険者用品もこだわると、値段が天井知らずなのだろうか。


「もしかして、片っ端からアイテムに変換したほうが儲かるんじゃないのか?」


「でも、さっき、スライムが二着目の鎧にならなかったわけだし、なんらかのルールはあるみたいよ。そう上手くはいかないんじゃない?」


 それもそうか。


 続いて、出てきたのは目つきの悪いネズミだった。

 いかにも、冒険の初期に出てくるモンスターといった風情だ。普通のネズミのサイズだと戦闘にもならんから、体長五十センチぐらいはあるけど。


 これも触ってみる。


 ネズミは物怖じせず、こっちからタッチ。


 ネズミは小さなナイフに変身した。


「うわぁ、これもいいやつ!、刃に特殊な加工がしてあるし、中をくりぬいて軽量化をはかってる。。盗賊の私は普通にほしいわ!」


「じゃあ、アルコが元の姿に戻ったらあげる」


「いいわね、絶対だからね!」


 ネズミというと素早いイメージがあるから、こういう武器になったんだろう。鞘もついていたので、鞘ごと袋に入れた。ちなみにアルコの剣は鞘はない。


「これは絶対いい武器だし、丁寧に扱おう。ていうか、全部もとがモンスターって生き物だから、丁寧に扱おうって気になる」


 人間は生きている限り、生物を殺さずに生きていくことはできないのだ。そんな当たり前のことをふと考えてしまった。


 その次はムカデみたいな、というか、巨大なムカデのモンスターだ。

 ちなみに二匹出てきた。


「ムカデか。あまり触りたくないな……」


「贅沢言ってる場合じゃないでしょ。データが多ければその分、あなたの力もわかってくるんだから」


 正論すぎて、反論も思いつかん。


 ムカデに触ると、かなり丈夫そうな鋼鉄の兜の変身した。ムカデを示す絵みたいなのまで彫られている。


「これまた、相当立派な代物ね。買うとなると、かなりの額になるわ」


 なんか、いいものばかり生まれるから、テレフォンショッピングみたいだな。


 でも、粗悪品に変身されるよりはありがたいか。


 かなり重いけど、安全のためのものだから、かぶってみた。


 ちなみにもう一匹に触れても変化はない。


「ダブると駄目なのかな。じゃあ、退治するか」


「ムカデを斬るのなんか嫌だわ……」


「俺の気持ちがわかっただろ」


 こいつもスパッと剣で切断できた。

 このムカデを倒すと銀貨二枚が手に入った。


「二千ゴールドね」


 おそらく日本円で二千円ぐらいだ。


 巨大なムカデを倒して二千円って、あまり割がいい気もせんな。魔法でまとめて十体ぐらい倒せるならまた別かもしれんが。


 さて、このあたりでなんとなくだが、モンスターをアイテムにする時のルールがわかってきた。


●その種類のモンスターは、それに該当するアイテムにしかならない。

 つまり、スライムが鎧になったり剣になったり皮袋になったりはしない。


●少なくとも、そのアイテムがある場合は、二匹目以降はアイテム化しない。

 ただ、これはアイテムがなくなろうと壊れようと二度と出てこないのか、俺がそのアイテムを所持しているからだからなのか、その判断はまだできない。


●あと、たいしたことじゃないけど、かなり優秀なアイテムになる傾向が強い。

 ザコっぽいモンスターでもかなりいいものに変化しているので、モンスターの強さはそこまで関係ないんじゃないだろうか。


 そのあとはだいたい同じような連中ばかりが出てきて、こいつらを倒して、俺は金をためた。


 新たに入手したものとしては、軍隊蟻を触った時に手に入れた剣だ。どことなく黒っぽいが、そこにいぶし銀のよさがある。

 アルコが酔ってきたら、こちらも併用することにしようか。


 一時間もすると、一万六千ゴールドたまっていた。

 もっと稼ぐこともできただろうが、アイテムにした分がけっこう多いのだ。


 ひとまず、宿泊する分には何の問題もなくなったな。


「じゃあ、町に行くか」

次回は夜あたりに更新します!

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