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3 親分を装備しての盗賊団戦

 ワーウルフの盗賊団達は早速臨戦態勢に入っている。


 一方で俺はもう逃げたりはしない。戦う覚悟を決めた――とかではなく、単純にさっきからずっと走っていたので疲れているのだ。


 敵の数は多いし、逃げ切れるとは到底思えない。


「あなた達、早くこの男を倒しなさい! 私を救出するのよ!」


 剣がしゃべった。

 俺が持っているのに、俺を倒せと言ってるあたり、もはや呪われたアイテムである。


「あれ、剣がしゃべったか?」

「ちょっと親分の声に似ていたような……」


 子分達も経験のないことだから、かなりびっくりしてるだろうかな。


「いやいや、剣がしゃべるわけないだろ」

「そうそう、腹話術か何かだ」

「親分、どこに行ったんだろうな」


 こいつら、この剣が親分だと信じてないな。


「ちょっと! この剣が私なの! ほら、どうにかしなさい!」


「おいおい、あの男、腹話術上手いな」

「放浪の旅芸人なんじゃないのか」

「世の中にはいろんな奴がいるもんだな」


 まったく信じられていなかった。


「腹話術じゃないわよ! あくまで私! すごく困ってるの! この男に徹底した制裁を食らわせた上で殺すのよ!」


「あ~、そうだ、一応言っておくけど」


「ええ、何? 今更ビビっても遅いわよ。私をこんな目に遭わせたんだから」


 ちょっと得意になってるところ、真に申し訳ないが。


「俺が死んでもお前が元に戻る保証は一切ないぞ。むしろ、このまま剣という確率が高い」


「えええっ!?」


「これが魔法なら術者が死んだら元に戻るとかありそうだけど、さっきお前も納得したみたいに、これは魔法じゃないんだ。俺は魔法の「ま」の字も知らんからな。なので継続してお前が剣のままであることは否定できない」


「やっぱり、殺しちゃダメ! こいつは生かして私が元に戻る方法を聞きだせるようにしなさい!」


 急に焦りだしたな、この親分。

 でも、俺も剣になってしまったら、そういう反応を示すのかもしれない。剣になったことはないのでわからん。


「おいおい、まだ腹話術やってるぞ」

「どんだけ腹話術好きなんだよ」

「はははっ! もしかして俺たちを騙せてるとでも思ってるのか?」


 やはり信じられてない。


「ここは穏便にやって! これで剣から戻れなかったらあんた達、この体で斬り殺すわよ!」


「諦めろ、親分。お前が剣になってるなんて話、納得してもらえるわけないさ」


「何を落ち着いてるのよ! あなただってこのままだと殺されるんだからもっと生きようとしなさいよ!」


 なんで、さっきまで俺を殺そうとしてた奴にそんなこと言われないといけないんだ。

 かなり理不尽なものを感じるぞ。


「いや、俺も死ぬ気まではない。なので、お前を使って戦うことにする」


「私を使って子分と殺し合いをさせる気なの!? それでも人間なの!?」


 いや、ゲスの極みみたいな反応されても……。


 お前らが俺を殺しに来てるのが悪いんだろ。


 どんな平和主義者でも殺されそうになってたら武器をとる。


「じゃあ、お前があいつらを説得するか、殺さずに戦うかしてくれ」


「剣がそんなことできるわけないでしょ! あんたがどうにかしなさいよ!」


「そうなるよな。ちなみに、自慢じゃないが、俺は人生で剣を振ったことは一度もない」


「もう、最悪にもほどがあるわ!」


 ここは腹を決めて戦うしか道はない。


 ワーウルフ達が一斉に攻撃を仕掛けてくる。


 俺も剣を握る。


 あまり殺生をしたくないというのはこちらも同じなので、相手の手を狙う。

 そんな余裕あるのかって話だが、意識しないよりはいいだろ。


 振ってみると、とにかく剣が軽い。


 あれ、自分って本当に剣握ってるの!? というぐらいに軽い。


 まず一人目の手を攻撃。


 その剣をはじくことができた。


 さらにすぐに取って返すように横の奴を攻撃。

 こいつの腕にもヒット! その剣を落とさせることに成功した。


 あれ、俺ってもしかして剣の腕、すごいんじゃないか?


「うあああ! あんまり振らないでよ! 酔うじゃない!」


 剣から苦情が来た。

「剣は振るうものだからしょうがないだろ!」


 盗賊達も俺が思いのほか健闘しているので困惑しているようだ。


「おい! こいつ、かなり強いぞ!」

「素人っぽい動きなのに、動きが軽い!」

「特殊な流派を極めてるんじゃないのか!?」


 動きが軽い? もしかしてこの剣は本当に軽いんじゃないか。

 そういえば獣人というかワーウルフって身軽な印象があるし、その特性が剣に現れているのかもしれない。


 でも、剣の重さが軽減されるぐらいでそこまで差が生まれるだろうか?

 もっと、根本的な変化って印象がある。一言で言うと――


 俺自体が速くなった気がする。


 人間が装備によって速くなる。そんなことありうるかって話だが、俺にはモンスターを装備にするという異様な力がある。その時点でありえないことは起こっているのだ。


 それにRPGなら装備品でステータスが変化するってけっこうよくあることのはずだ。


 盗賊の剣なら、素早さがプラスされることだってあるはずだ。


 とにかく、俺はアルコの剣を振って、どうにかする。


「ちょっと! 後ろから狙われてる!」


 剣が声を出す。

 すぐに振り向くと、ちょうど背中を攻撃されかけていた。


 どうにか間に合って、まわし蹴りをとっさに放って、剣をはじきとばす。


「ありがとうな!」

「あなたが死んだらこっちにも問題があるからよ!」


 まあ、それが本音だろうな。


「でも、あなたが私の子分を殺さないように戦ってることはわかるわ。あ、ありがと……」


 お褒めの言葉、いただきました!


 よし、このまま生き残るぞ!


 数人の敵を倒しはしたものの、まだまだ敵は多い。


 今度は槍を持った奴が遠方から走りこんできた。


「剣の腕前がよくたってよ、これで貫けば問題ねえだろ!」


 うん、俺もそう思う。


 これはまずいんじゃないか?


 槍の突進力なんて剣じゃ防げないし……。


 そして、槍はきっちり俺の胸に刺さ――――らない。


 スライム鎧がその槍の勢いを一気に殺したのだ。


 そして、ぼよ~~~~~ん、


 とすごくゆっくりとはじき返す。


 スライム鎧、有能すぎる!


「ありがとうな! 助かった!」


 鎧に声をかける。スライムに遭遇していて、よかった!


「なんで、これで刺さらないんだよ! やっぱりマジックアイテムか!」


 そいつが文句言いたい気持ちもわかる。謎のチート防御力を発揮してるもんな。


 すかさず、俺はみねうち式に男の頭を剣で叩く。


 そんなに力を入れたつもりもないのに、そいつは転倒した。


 このアルコの剣も攻撃力は相当高いらしい。


 半分ほど敵を倒したところで、連中もこれはまずいと認識しはじめたようだ。


 すぐにこちらに向かって来ずに慎重になっている。


 今なら交渉できるかもしれない。


「もう諦めろよ。お前らの力だと限界がある」


 俺は剣を堂々と上に掲げる。


「これ以上、攻撃してくるならお前達の側にも死者が出るぞ?」


 そんなことをするつもりはないが、ひとまず脅しつけておけば話が早いだろう。


「親分もいないまま、これ以上戦うのはまずい!」

「俺たちは盗賊ビギナーの素人だしな……」

「ここは一回親分が見つかるまで引こう!」


 あっ、親分はここにいるんですけど……。


 盗賊はそのまま退散していった。

寝る前にもう一度ぐらい更新したいです。

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