表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モンスターを着る男  作者: 森田季節


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/17

15 ミノタウロスと交渉

 ミノタウロスを俺達が討伐したということは正式にギルドから認められた。


 おかげでかなりのお金が入ったので、しばらくはゆっくりと暮らせそうだ。


 ギルドでも、優秀な冒険者として一目置かれることになった。


「やっぱりアキラって奴はすごいな」

「俺は最初に見た時からやるって思ってたぜ」

「俺も百年に一度の逸材だって思ってた」


 ほんとかよ。


 まあ、とにかく評価をしてもらえることはありがたいな。けなされるよりはマシだ。


「ただ、これからどうしたらいいのかな」


 ある程度お金が入ったけど、今後の目的というか、展望というものがない。


 俺は宿でアルコにそう率直に伝えた。


「そうねえ。私はちょっと試したいことがあるから、しばらくこの町にとどまっていたいわ」


 別にせかす必要もないので、俺とアルコは近くでモンスターと戦ってゴールドを稼ぎつつ、暮らすという生活を送っていた。


 だんだんとこの能力も板についてきた感じはある。


 そして、一週間後。


「ちょっと、ミノタウロス達と戦った丘に行きたいの」


 そうアルコが言った。


「なんだ? アイテムでも落としてたのに気付いたか?」


「そういうわけじゃないの。けっこう上達したみたいだし、今ならいけるかなって」


 意図ははかりかねるけど、丘まで行くのにとくに苦労はないので言われたとおりにしてみた。


 ちなみに、過去に戦ったという経緯もあるので、できるだけモンスターは装備品にせずに進んだ。


 とくにギュースケやミノタウロスはモンスターの姿で連れてきた。


 くしくも時間は夕方。前回戦った時と似たような時間だ。


 装備もある程度整えてはいたが、お礼参りに来られるリスクもゼロではないだろうなと考えていた。


「よーし、じゃあ、はじめようかしら」


「ああ、ご自由にはじめてくれ」


「アキラ、ミノタウロスを角笛にして」


「え? ああ、わかった、わかった」


 ミノタウロスに了承を得たうえで、触った。


 すぐにミノタウロスは角笛に変わる。


「さてと、練習の成果を見せなきゃ」


 ブオオオオオゥゥゥオオオオオオオ!


 アルコはその角笛を実に上手に吹き始めた。


 ただ、音を出しているだけというのとは明らかに違う。演奏と呼んでいいレベルだ。


 その演奏はだいたい三分ぐらい続いた。


 アルコが演奏を中断する。


 すると、どこからともなく、似たような角笛の音が響いてきた。


「どうやら、上手くいったみたいね」


 またアルコが短く演奏する。


 それに対して、また音がする。


 そのやりとりが三十分ぐらい続いた。


「ふ~。終わった、終わった」


「かなり長く交信してたな」


 これがコミュニケーションの一つだったということぐらいは推測がつく。


「そうね。ずっとミノタウロスと話をしてたの」


「ああ、そういや、演奏でそういうことができるって言ってたな」


「もちろん、ある程度私が上手く吹けるようにならないとどうしようもなかったんだけど、それができてきたから」


「それで結果はどうだったんだ?」


「ばっちりよ」


 まあ、表情を見れば聞かなくてもわかるけどな。


「ミノタウロスはこちらの山には出てこないって。街道を封鎖するようなこともないから討伐もやめてくれって」


「まあ、討伐依頼自体はギルドが出すわけだけど、こっちからギルドにも交渉して落としどころを見つけるか」


 少なくとも安全な範囲が確定されただけでも、それなりに意義はあるだろう。


 そして、実際にギルドに行って、そのことを報告した。


「まさか、ミノタウロスと話をつけるとは思わなかったですぞ!」


 そりゃ、受付のおっちゃんにも驚かれもするか。


「あなた方が多くのミノタウロスを倒したのは事実ですし、信用もできますぞ! こちらもミノタウロスと落としどころが見つけられるならそれはそれでありがたいですぞ」


 どうやらいいように運んだようだ。


「あの獣人、ミノタウロスと話をつけたのか」

「やっぱり、とんでもない連中だな」

「今日は踊り子の服じゃないのか」


 また、なんか噂されてるな。


 しかし、みんな聞こえるように噂しすぎだと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ