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モンスターを着る男  作者: 森田季節


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12 アイテムをモンスターに!

 踊り子の服で町を歩くのは嫌だということで、アルコが着替えてから、タドンの町に戻ってきた。まあ、当然と言えば当然だ。俺も逆の立場ならそうする。


 ちなみにカースド・パペットは人間の姿に近いので、何を表現しているか割とよくわかった。


 服からモンスターに戻ったカースド・パペットは手の部分で胸をどんと叩いて、任せてくださいのポーズをとった。


「しっかり、アルコを守ってやってくれな」


 こくこくとうなずくカースド・パペット。


 今のところ、モンスターがみんな従順なのでありがたい。


 ただ、俺に従順だからといっても、モンスター間ではまた違うらしい。


 鬼ハヤブサとスライムは微妙にケンカをはじめた。


 ぽよん、ぽよん!

 バッサバッサ!


「おい! 仲良くしろ! 同じ仲間なんだから!」


 どちらも、こちらに向かって「相手が悪いんです」みたいな抗議をしているが、どういうことを伝えようとしているのかわかるようでわからない。


「モンスターの言葉がわかるようなアイテムでもあればいいんだけどな。アルコ、そういうアイテムって売ってないか?」


「少なくともタドンなんて小さな町にはないわよ。あったとしても、数百万ゴールドはすると思うわ」


 モンスターをそのアイテムに変えたほうが早いな……。

 とはいえ、どのモンスターがそんなアイテムに変わるかまったくわからないので、具体的に行動を起こしようがないが。


 とにかく、装備品は増えてきたし、ミノタウロスと勝負することもできるだろう。


 翌日、昼。

 俺とアルコは最強装備で、ミノタウロスの出る山に向かうことにした。


ちなみに主な装備品はこんな感じだ。


アキラ

・軍隊蟻の黒剣

・スライム鎧

・大ムカデの鉄兜

・蹂躙牛の皮袋(アイテム保管用)


●アルコ

・お化けネズミのナイフ

・カースド・パペットの踊り子の服

・鬼ハヤブサの靴


 最強装備ということで、アルコも踊り子の服だが、そこは我慢してもらうことにする。


「は、恥ずかしがらないわよ……。こういうのは堂々としているほうがいいの……」


 そういうこと言ってる時点で、恥ずかしがってるんだろうけど、しょうがないよな……。


 まあ、小さな町なので、すぐに人のいない郊外に出た。


 ミノタウロス出没地域の山までは、だいたい二時間ぐらいだった。


 丘はだだっ広いからいきなり奇襲をしかけられることはなさそうだが、それでも一応、アルコは周囲の気配に意識をしていた。


 そして、しばらく出没地域に入ったところで――


 ミノタウロスの集団が前に出てきた。

 数は十体。


 背後にはいないから回り込んで全滅させようとか、そういう発想はないらしい。


 ある意味、正しいよな。

 もし、冒険者を容赦なく全滅させるようなことを繰り返したら、いずれ強力な冒険者が派遣されて、徹底して排除されるからな。


「さてと、腕試しをさせてもらうぜ」


 さあ、攻めかかってこいよ。

 一体を装備品にできれば、ほかの奴も混乱するだろうから、そこをさらに追撃してやる。


 でも、ミノタウロスは前進はしてこなかった。


 弓矢を構えて、俺のほうに撃ってきた。


 ビュンッ!


 俺の頭の真上を弓矢が通過する。


 さらに追加の弓矢が飛んでくる。


「おいおい! 矢で攻撃してくるなんて話、聞いてないぞ!」


「ミノタウロスはそれなりに知能も高いからね! これぐらいの武器は使うわよ!」


 くそっ! これじゃ、接近もできない!


 どうしたらいいんだ? 俺は近づけないと何もできんぞ。


 弓矢が俺の脇腹あたりにぶつかる。

 それでも、スライム鎧のおかげでダメージにはならなかった。ちゃんと弓矢を止めてくれていた。


 また、鎧がないと死んでいたな……。


「鉄兜もしているし、接近できるか……? いや、一歩間違えば大ケガになるし……」


 一方で、アルコは矢をナイフで撃ち落としつつ、接近タイミングをはかっていた。


「なんとか、近距離戦まで持ちこむわよ! でなきゃ、勝負にならない!」


「踊り子の服があるから、躍ったら眠らせることもできるんじゃ?」


「距離が離れすぎてるわ! それに躍れるほどの余裕はない!」


 たしかに弓矢が雨あられと降ってくるからな。


 かといって、近づけば近づくだけアルコの身に危険が降りかかるわけでもある。

 ミノタウロスが弓矢しか武器を持ってないなんてことは考えづらい。接近戦になったところで敵のほうが数は多いのだ。アルコの身のこなしが軽くても限界がある。


 できれば、もっと安全に決着をつけたくはあるな。


 そのためには俺がミノタウロスに近づかないといけない。


 どうすれば敵に近づける? 何か戦車みたいなものでもないと無理だ。戦車は不可能でも、せめて騎馬ぐらいはほしい。歩兵で弓矢に向かっていくのは自殺行為だ。


 ふよん。


 地面に置いていた皮袋が動いた気がした。


 いや、たしかに動いている。蹂躙牛の皮袋だ。

 そうか、あくまでもアイテムになってる時でも意識みたいなものはあるんだな。


 でも、皮袋に戦わせようがない。もし蹂躙牛に戻ってもらえるなら使い道もあるだろうけど、六時間のタイムリミットまでまだまだ時間はある。


 待てよ。

 そういえば、タイムリミットまでの間にアイテム化を解除する方法を試したことってあったか?


 やり方がよくわからないということで、放置していただけだ。


 もし、解除方法があるなら、状況を覆せるかもしれない。


 俺は皮袋のところまで、そこに手を触れた。


 触れるだけで元に戻るなんてことはない。でないと武器を持って戦いようがないからな。


 でも、触れながら元に戻れと念じたことなんてなかった。


 それを一度やってみる。


 試すだけならタダだ。やってみろ。


 頭を下げる。こうすることで当たる範囲を狭める。


 しばらくは大丈夫だろう。さあ、念じろ。


 蹂躙牛よ、皮袋であることをやめて、その姿を現せ。


 アルコが突っ込む前に戦況を打開してやりたいんだ。頼む!


 ふっと、強い獣のにおいを鼻に感じた。


「モウウウウウウウ!」


 蹂躙牛がそこにいた。


 成功したんだ。


 この蹂躙牛となら、ミノタウロスに冷や汗をかかせられるかもしれない。


「なあ、蹂躙牛、いや、ギュースケ」


 そういや名前をまだつけてなかったな。


「お前は多少の矢ぐらいなら気にせず突っこめるか?」


「モウウウウウウウ! モウ!」


 当たり前だ、あんな連中にやられる俺じゃねえ――みたいなことを言った気がする。


「お前に乗っていいか?」


「モウウウウウウウウウウウウ!」


 少しギュースケが背中を下げた。


 わかった。じゃあ、俺はお前に賭ける!

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