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弱小ギルドと不滅英雄 エピローグという名の後日談

作者: 絵馬
掲載日:2016/02/23

「あはは、行くよぉー……それ!」

「きゃっ!よくもやったわね!」

「……私を巻き込んだこと、すぐにでも後悔させてあげる」

「ふふ、偶にはいいものですね」

「あははははっ!」

魔王攻略から一週間が立ち、余韻も抜けきり平常運行に戻ってしまった我がギルドは、現在キャンプの真っ最中!季節は?と聞かれれば、春と答えてしまいそうになってしまう陽気ではあるものの、なんせウチのマスターは人の言う事より自分の台詞が大きく聞こえる便利な耳をしているからなぁ……

ギルドの前を流れる川を少し上った源流近くの滝つぼに陣取り、各々泳いだり水を掛け合ったりと楽しんでいるが……今、俺はそれどころではない!

「……!す、すげぇ!」

 水場で戯れるとゆう事、つまりそれは皆があの服装と言う事……!衣類と言うには布が少なすぎ、必然的に肌色を増やす夏の特殊装備!その魔法のアイテムの名は、

 ……水着!!

 全ての男を引き付ける夏の秘密兵器を、現在全メンバーが身に着けているのだ!

 シルビアは………セクシーなビキニを着ているつもりなのだろうが、鉄板胸のため超絶残念な事に……しかし、他は違う!!

 ランカはピンク色のセパレート水着を身に着けており、その愛らしい姿がクールキャラとのギャップで二割増しで輝いて見えた。そして、小柄にしては発育した胸が動くたびに弾むように揺れ、鍛えられた脚線美と神々しいばかりの調和を見せている。

 マリアが身に着けているのは、ワンピースタイプか?フリル付け過ぎでなんとも言えない哀愁を帯びているが、これもメイドとしての性なのだろう……だがしかぁーし!元が良いうえ、腹黒い性格以外は完璧大和撫子のマリア嬢は、とにかくこの場で映えている。抜群のスタイルとメイドらしい落ち着いた振舞いで、街に居れば二度見してしまう美人さんオーラを身に纏っていた。

そしてアリシアちゃんはなぜかスク水!この世界になんであるかはわからないが、スク水!平常の子供っぽさを数段引き上げたアリシアちゃんは少しでも気を抜けば抱きしめて連れ去ってしまいたくなる愛くるしさ!飴ちゃんを差し出したくなっちまうぜ!犯罪者量産機とはまさにこの事だな!

にんまりとしながら妹に手を振ってしまった俺の目に、ついに彼女が飛び込んでくる!

そう!本日の目玉!巨乳天使イリナ様である!!

遥か高見、天使のみが侵入を許された花園から、現世へ迷い込んでしまった全男性のアイドル!「俺、貧乳以外は認めないよ?」とか言ってる貴様!このイリナ様を見てもう一度その口が来てると申すか!天人のスマイル、歌姫の聖声、内気ながらも明朗快活な性格で誰にも嫌悪を許さない慈愛の聖母……

そして、何と言ってもあのミラクルボディの最大の武器、きゅっと締まったボディの上部、シルビアの虚無空間とは似ても似つかない……てか同じ部位とすら思えないあの立派なおっぱいは何時見ても素晴らしい!同じビキニ種でもマスターとは天泥の差の艶っぽさ、俺は息する間も無く押し寄せる興奮の波に飲み込まれていった。

「うひょ~~~、目の保養とはこの事だぜ!」

「目の保養……いったい何の事よ?」

「何って、もちろんイリナのボイン………………っ!」

 茂みに身をひそめ変質者の如きねちっこい視線をメンバーに送っていたチート英雄の背後を取っていたのは、ポンコツと名高きはずのギルドマスター……鬼も逃げ出す修羅の形相でこちらを睨みつけているシルビア様は、まぁ、機嫌が悪そうな事……正直もうこの状況から抜け出せる気がしない俺は、宝剣を今にも振り下ろそうとしている悪鬼羅刹に、藁にも巣がう思いで命乞いを試みてみた。

「……イリナの……母音?」

「何が言いたいのよ!!」

数秒後、脳天に一撃をぶちかました宝剣は見事に頭蓋を砕き、しばしの間俺はこの世を去ったはずの祖母と再会することになった。ばぁちゃん、なんで川の向こうで手招きしてたんだろう?やっぱ、孫を抱き締めたかったのかな?




一度撲殺され、何度目かの臨死を体験した青春少年は今樹海の真っただ中。晩飯の食材(肉)を取ってこいと言われたのだが、実の所、本心を言えば俺は肉に出てきてほしくは無い。

魔王を倒したあの能力、《ベルフェゴールの嘲笑》は人体に異常なまでの負荷をかけ、過度に使用すると死に至る。俺が生還できたのはただただ運が良かっただけで、本当なら今頃ばぁちゃん家(空の上)でのんびり寛いでいるはずなのだ。そのため、極力肉……と言うか、魔物には登場していただきたくないのだが……

グラァアアーーー!

「うわっ、出やがった……」

フラグを立ててしまった俺の前に出現した巨大な獣竜型に、正式にマスターから賜ったダガーを向け臨戦の構えを取る。傷だらけの皮膚、乱れた荒い息……少し観察すればわかるように、コイツはもう瀕死状態。単独で行動している所を見れば粗方群れから追い出されたのだろうか?

 しかし、幾ら手負いと言えど竜は竜……俺一人で相手にできるとは思えない。なので、俺は先ほどから後を付けてきている金髪のチビちゃんを、急遽助っ人に呼ぶ事とする。

「おいシルビア!」

「……(ビクッ!)………もう!気づいてるんだったら気づいてるって言いなさいよ!折角うまく尾行できたと思ってたのに!」

 木の洞から這い出てきたシルビアはあの残念ビキニ姿ではなく戦装である白銅のアーマードレス。肩に愛剣の《バルムンク》を背負っており、その勝ち気な瞳は巨大な竜へ向けられていた。

「ふっ、お前と一緒に竜とやるのはこれで二度目か……背中はちゃんと預けたぜ、マイマスター!」

「余裕じゃない、少しは成長したって事かしら?」

 俺の軽口を、背後で剣を構えたシルビアが軽口で返す。

「まぁな。てか、お前こそちったぁ攻撃当てれるようになったんだろうな?神格スキルを背中で味わうなんて御免だぜ」

「うっさいわよ!こんなでかい的―――」

 地を這うような低姿勢で駆け出し、爆音を発する敵の右前脚を切断する。

 グキャアアアーーー!

「外すわけないじゃない!」

 激痛に悶え暴れまわった竜は、挙句の果てには自分から岩に頭を突っ込んだ。しかし、まだ息はある様子、僅かに動く三肢を動かしこっちに向き直ると尻尾で器用に岩を掴み上げ、俺に向けて放り投げる。

「おぉ、今日はちゃんとやれたじゃねぇか……んじゃ、俺も!」

 スローモーションのように接近する大岩を難なくすり抜けると、焦げ茶色の鱗に向け一閃をきめる。だが、ダガーではあの巨獣に大したダメージを与えることができない。

 若干隙を見せてしまった俺に、竜は巨大な尻尾を叩きこむ。

「うっ……!」

 満身創痍でもさすがは竜。数メートル先の樹に全身を打ちつけ、あまりの衝撃に呻きを上げてしまった。

「ちょっと!なに攻撃くらってんのよ!?」

「……黙って……シルビア!前!」

「……?―――きゃあ!」

 俺を馬鹿にしたシルビアも竜の尾に巻き込まれ二の前になる。

「ぐへっ!」

「言わんこっちゃない……人に言うなら自分も気を付けろよ」

 隣の樹に顔面からぶつかったシルビアは、そのまま四の字で地に倒れ込みバタンキューのポーズをとる。仲間のピンチで焦る自分と自分を馬鹿にしていた仲間を馬鹿にする事ができた優越感に浸っている自分がいるが、今は気にしている場合ではない。

 ローラー車の要領で回転しながら突進してくる竜の攻撃をぎりぎりで回避した俺は、横で伸びているシルビアを叩き起こす。

「おい、大丈夫か!」

「え、えぇ……ちょっと油断しただけよ」

 頭の上で星が回っているシルビアが俺にそう返す。パッと見それほどの大怪我をしている様子も無いのでもう少しだけ働いてもらおうか。

「おい、あの時と同じ事、できるか?」

「あの時……?」

「フレア・ワイバーン戦だよ。俺が時間を稼いで、お前の神格で止めを刺す。今回はあん時みたいな馬力は無いからしくじるなよ」

 そう一言告げ、俺はシルビアをその場に残し全力で駆ける。

 前足に一発かまし、そのまま翼を裂く。一撃一撃が決して強力と言う訳では無い……しかしダガーはそれを補う機動力と連技性を兼ね備えている。計算して闘うタイプの俺には、ある意味最適な武器なのかもしれない。

 獣竜の牙を圧し折ったところで、敵が大きく体制を崩す。やはり、こつこつ積み重ねることは大事だな、めんどくさいけど。

「今だシルビア!」

 千載一遇のチャンス、ここで俺は後方のファイターに合図を出した。

「アオハル!死にたくなければ避けなさい!《万物を断罪せし紅蓮の聖女よ。わが身に宿りて魔を穿て!クリムゾン・ドライブ!》おりゃあああーーー!」

 引っ込んだ俺と入れ違うかのように紅蓮の業火をその身に纏い、勢いよく前衛に飛び出したシルビアは上段から浴びせた一撃で竜首を斬り離し、

「まだよ!」

 勢い任せに竜の腹に亀裂を入れる。

今この竜はずばり、昔シルビアが俺に言った刺身状態になっている訳か……

同情を憶えた俺は一生コイツらに逆らわない事を誓ったのであった。顔に付いた鮮血を拭い、こちらに歩いてくる聖女を、数日前の俺が見ていれば倒れてしまっていたであろうが今は別に何とも感じなくなってしまった。人の慣れって怖いな。

「ふふふっ!見なさいこの見事な食材を!討伐だけでなく解体まで行うなんて、やっぱり私は最強なのよ!」

シルビアはドンと胸を張り、自慢げな表情を浮かべている。俺も協力したぞ!的に言い返してもいいが、今日はコイツの手柄としておこう。

……けど、普通にすごいんだよなシルビアの必殺技。

《クリムゾン・ドライブ》―――ただ炎を出して敵を斬るだけの技のはずなのに、イリナの付着魔法とは比べ物にならない高火力。短い継続時間がネックになってはいるが、その数秒間は正真正銘無敵モード。それにあの技は体力消費もほとんどない、使いこなせば連発も可能なのだ。これだけ使い勝手のいい能力を持っていて、なんで今までそんな酷い扱いを受けてきたのだろうか?

一発だけとは言え、どんなギルドもあの能力は魅力的なはず。なのに、どうしてこれまでボッチで………性格か……

思考を巡らせ二秒ほど、このミニ姫様の普段の振舞から、みんなコイツとつるみたくなかったんだろう、一番簡単なその答えにとどりついた。

(まったく、俺のスキルと交換してほしい位だぜ……)

「……どうしたのよ?そんな難しそうな顔をして?」

「ん、いや。お前ってすげぇなぁって思ってさ……ギルドのマスターで、超強い必殺技持ってて、おまけに美少女で」

「……………………………はっ?」

「……………………………えっ?」

 ………

 長い沈黙の末、

「にゃっ……!!?」

 ボフッ、そんな効果音を感じさせるかのような勢いで頭から湯気を立たせイリナもびっくりのとんでもない赤面を見せる。

「び、びび、美少女!な、何いきなり口説いてんのよ!バカ!!ド淫獣!!」

「はぁ?いや、別に口説いたとかそんなんじゃねぇよ!単純にお前がすごかったからすごいって言っただけだし、初めに合った時から滅茶苦茶可愛いなぁ、って思ってたし……」

「ま、また可愛いって言った!……わかった!あんた私を馬鹿にしてるんでしょ!こんな貧乳持ちが男にウケる訳……!」

「女は顔だ発言してたやつが今更何言ってんだ?……胸は関係ないよ。お前は間違いなく可愛いし、美人だし、女としても魅力的だ。俺の嫁に欲しい位だぜ」

 もう少し素直ならな、そう付け加えよう、そんな考えで叩いた軽口は―――

「……よ」

 どうやら、そんなに簡単な問題で済みそうにはない……

「はっ?」

「いいわよ……!」

 顔を伏せ、謎の了承発言を口にするシルビアに俺は心底困惑した。

「な、なにがいいんだよ……?」

「だから………あんたのお嫁さんに、なってあげてもいいって言ってるの!!」

 トマトの様になってしまった顔でそう俺に告白した。

 ………

 …………

 ……………はぁ!!??

「ちょ、お前自分で何言ってるかわかってるのか!そ、そ、それって、俺と結婚するって意味だぞ!?」

「もちろん、わかってるわよ……」

 わなわなと肩を震わせ、柔らかい掌で俺の右手を握りしめる。柔らかくほんのりと温かいシルビアの手の感触にこれが夢や幻などではない、とゆう事を確信してしまう。

「……私にとってあんたは初め、家族みたいな存在だった」

「……だった?」

「うん……みんなと同じギルドの仲間。だけど、それは少しずつ変わっていった。みんなとは、ちょっとだけ違う立ち位置にあんたは居た……みんなよりほんの少しだけ、あんたは私の傍に立ってたの………魔王に捕まった時も、最後の最後まで私の頭の中にはアオハルが居て、私はアオハルに助けを求めてた」

「だからそれは俺が英雄だから……!」

「違う!私は、もうその時にはあんたの事が好きだったの!」

 力強く青年への愛情を肯定した後、そのまま地面に押し倒す。

「あんたの事が、アオハルの事が好き!マスターとしてじゃなく一人の女……シルビア・ドレットノートとして、あんたが大好きなの!!」

「シルビア……」

「だから、あんたが私の事を欲しいって言うなら……私はあんたに貰って欲しい!今までで一番好きになれたあんたの、お嫁さんになりたい!!」

 涙を流しながら求婚してくるこの少女は、俺が口にしようとした以上に素直……ソプラノの声を枯らしながら、目元を腫らしながら必死に俺を射止めようと頑張っているのだ。

 シルビア・ドレットノート

 彼女は俺には勿体ないくらいの価値を持っている。どんなに俺が自身の価値を高めようと、こいつに追いつく事は不可能だろう。

 可愛くて、愛らしくて、ほんのちょっぴり我がままだけど……それ以上に人の事を考えている。見ているだけでも十分すぎた高嶺の花を、俺が手にする事ができるであろう最初で最後の機会が、今なのか………

 それなら、そのラストチャンス―――

「―――俺なんかで、本当にいいんだな?」

 ―――モノにさせてもらうとするか―――

「初めから、そう言ってるでしょ」

「……後悔とか、絶対するなよ?」

「ふふっ、そこはするなよじゃなくて、させないって言いなさいよ」

 小鳥に祝福されながら

 大樹に見つめられながら

 英雄と聖女は、もう一度唇を重ねる。

 ―――遠かったあの空は、今日も遠いまま。いつもみたいな傍観者ズラを此方に向けていた。

 だけど、今日は一言言い返してやろう。

 俺は、お前より遠くに居た、お前が鼻の先に思える程遠くにいた奴を、

 自分のもんにしてやったぜ、っと―――

 社会とゆうなの檻の中から飛び出した一匹の少年が外の世界で手に入れたのは、新たな居場所と……愛を誓える一人の聖女。

 なら、誓った愛は果たさねば。

 英雄の名にかけて、な。





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