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後継者騒動 7

上書き保存中にブラウザが飛びました。

この後かきたします。


………………すいません。でも本当に今日は書き終わってたんです・・・(;´Д`)


12時17分、一部かきたし完了。消えないため

この後もかきたします。

1時22分終了。

謎の電波障害で、編集できなかったワイブチギレ。


お待たせして申し訳ありませんでした。

大分削ったのに長くなった。

前置きがやたらと長かった今章も次回からようやくバトル回です。

読者の皆様、読んでくださって本当にありがとうこざいます。


城郭にあるクニシロ邸宅から出て、そのまま城の中へと入っていく。

顔の売れているトキワに気がついた使用人たちは皆一様に驚いた顔をし、そしてその後に頭を下げる。


ソウジロウやカエデ、そしてトキワがどうしてもと頼み込みついてきてもらっているエリスやメアリやファーニーはさも当然と言った様子だったが庶民派のトキワにしてみたらどうも体がむず痒く感じる。

もう地球からアミューズへと来てかなり長くなるのに、どうしてだろうかとたまにトキワは考えるのだが、三歩歩けば忘れてしまうので答えが出たことはない。


城の内部をすいすいと歩いていくソウジロウ。

防衛の面からか、まるで迷路のような道を進んで行く。段々と使用人が居なくなり、ついには周囲に人の気配を感じることすらなくなった。


「ここです義兄様」


ソウジロウがピタリと止まったのは壁の前だった。

トキワたちは揃って首を傾げる。

すソウジロウはおもむろに壁を押す。すると簡単に壁はクルリと回転しソウジロウの姿は消えた。


「隠し扉ってやつか………………うちにこんなんあったのか」


「私も知らなかったぞ」


トキワとカエデすら知らなかったそこ。

正式にカエデとの結婚式の日取りが決まったソウジロウも先日クニシロ家の一員と認められたため知ったばかりであった。

このままここに居ても仕方ないのでトキワたちも中に入ることにする。


「狭っ!?」


中は想像以上に狭い普通の部屋だった。

そこにはトキワの父であるリュウ、母であるユカリ。祖母であるユズコにトキワのトラウマの元凶である祖父のゲン。そしてトキワの兄であるムラサキがそこには居た。

若干一名以外は、トキワもなついていたので久しぶりに会えてとても嬉しく思った。


「座れ、トキワ。その嫁たちもだ」


余り変わっていない母に祖母。そして顔を直視できない祖父。トキワが考えていた以上に女の子っぽくなっているムラサキ。

トキワとしても挨拶くらいはしたかったのだが、リュウの有無を言わせぬ一言にトキワは押し黙ってしまう。こんな威厳のある父親を見たことはトキワにはなかったからだ。

そしてそのまま腰をおろした。

エリスたちが嫁扱いされていたことには気づいてもいない。


だがナチュラルに嫁扱いされていたことにちゃんと気づいていたエリスは若干照れながら腰を下ろす。なぜかファーニーも照れながらエリスの肩に乗り正座座りに、当然メアリは後ろに立ったままである。


腰を下ろし、クニシロ一家と対面する形になったトキワたちの前に祖母であるユズコがそっとお茶を差し出す。

早くにリュウを産んだこともあり、年も若いユズコ。元々の幼い顔もあってさらに若く見える。

昔から祖父であるゲンに愛のムチという名の鬼の修行を受けていたトキワは、ユズコに泣きついていたことを思い出した。トキワやカエデが小さかった頃は兄のムラサキが重い病にかかっていて、両親は付きっきりだったのである。


「ありがとな婆ちゃん。久しぶり、相変わらず若いな」


トキワの挨拶と突然の誉め言葉にユズコは嬉しそうに破顔する。

女としては、いつまでも若く見られたい生き物だ。それをサラリと大好きな孫の一人から言われたことがユズコには嬉しかった。


「おいトキワ! ワシには? ワシにはなんかないのか?」


それを傍目に見ていた祖父のゲンは、トキワに仕切りに話しかける。

ゲンとしてはトキワを可愛がっていたつもりなのだが、普通に怖がっているトキワはすっと目をそらした。

その様子を見てゲンは肩を落とす。


「親父にお袋よ。感動の再会はそろそろいいよな。今は大切な話があるんだ」


何故か妙な威圧感を出すリュウに、思わずトキワは背筋が伸びる。

エリスたち、そしてゲンたちも同じなのか皆神妙な顔をした。


「ムラサキ………………最初にお前から話せ」


「わかりました」


スススと座ったままムラサキはトキワの前に移動してくる。

その際には手を使っていない。足もだ。まるで手品のように身動き一つ取ることなく移動したムラサキに、エリスとメアリとファーニーは驚いたように目を見開く。


(第三の手か………………)


だがトキワ、そしてクニシロ一族の面々はこの種を知っているため驚きはない。


トキワの目をじっと見つめるムラサキ。

二人がこうして向き合うことなど、それこそ何年振りだろうか。

和の国にトキワが居た頃にもいつからかしなくなったことだ。


近くでムラサキを見たトキワはあることに気がつき愕然としていた。

兄のはずのムラサキが姉にしか見えないのだ。きめ細かい髪と肌、胸こそないのが残念だが逆を言えばそれ以外は女性として満点に近いものがあった。それにトキワの発達した嗅覚がムラサキを男とも女ともとらえなかったのである。


(なんかドキドキする)


トキワが実の兄に対して照れていると、ムラサキは両手を畳の上に置きガバッと頭を下げて土下座をした。

それを見たトキワは、女の子に土下座をさせているように見えて胸の高鳴りが最高状態にまで到達する。この時人知れずトキワのサディストの一面が密かに開花したのだがそれに気がつく者はいなかった。


「すまなかったトキワ。私は、今までお前に対する自責の念で胸がいっばいだった。これまでお前が望んでくれても、私はそれに応じてこなかった。それなのにこんなことになって厚かましい願いだと言うのはわかっている。だが頼むトキワ、俺と一緒に四上山まで来てほしい」


頭を下げて、叫ぶように頼み込むムラサキ。

ムラサキはこれまでトキワのことを割れやすい陶器のように扱ってきた。それはムラサキが、トキワのことを殺そうとした男を庇ったからである。カガリの兄で、そして自分と幼い頃からともにいた男のことをどうしても死なせたくなかったムラサキは男の刑を軽くするために駆け回ったのだ。

結果として男の命は助かったが、ムラサキはトキワに負い目を感じるようになっていた。大切な弟の命を狙った大切な親友、それを天秤にかけてムラサキは男を助けた。

トキワは欠片も気にしていないが、ムラサキはずっとそのことを気にやんでいた。それを思いきり吐き出して、そのまま頼み込む。

随分と勝手なこともムラサキは重々承知していた。だがどうしてもムラサキはトキワに願いを叶えてほしかった。

感情の吐露はやがて涙へと形を変える。畳には段々と涙のしみが増えていく。


トキワはその姿を見て混乱していた。

何故ムラサキが泣いているのかも、そして状況もさっぱりわかっていなかったからだ。

だがここでそれを言うのは、さすがにまずいだろうとトキワは考えた。

だが何か言わなければいけない、そうトキワの心が訴えかけていた。

だから何とかトキワは困ったように笑って言葉を吐き出した。


「わかってるよ………………」


取り敢えず何か言わねばと述べた一言だったのだが、なまじ頭が良いムラサキやユカリやユズコ、ソウジロウそしてエリスたちはその言外の意味を勝手に解釈してしまう。


「トキワ………………すまなかった」


「おっほぉ」


ムラサキはそこでようやく顔を上げてトキワに抱きついた。

トキワの口から嬉しい悲鳴をあげたが、回りには聞こえていなかった。

トキワは兄の匂いと体の感触を感じて、昔こうして一緒に本を読んだことを思い出していた。


(やっぱり変わってねぇ………………女じゃない、兄貴だ。懐かしいなぁ)


二人仲良く抱き合う光景。それは昔の二人に戻れることを暗示しているようだった。

周囲がほほえましくそれを眺めている時、突如としてメアリの体に衝撃が走る。思わず声をあげそうになるメアリ、だが一流メイドの誇りにかけてそれはしない。

メアリは、鼻の下を拭う。そこについていたのは血。

メアリはトキワとムラサキという男同士が抱き合うのを見て、人知れず鼻血を出していたのだ。



「ムラサキにトキワ。悪いがそろそろ先に進めるぞ」


リュウの一言で、ムラサキはパッとトキワから離れる。

そして顔を赤らめる。元服した大人が、弟に泣きつき抱きつく行為を今になって恥ずかしがったのだ。

それを見てさらに鼻血の勢いが増したメアリだったがどういうわけか誰にも気づかれずに済んだ。


「トキワ、今の状況を正確に理解しているか?」


リュウの言葉にトキワは首を横に振る。

概要はソウジロウから先ほど聞いたのだが、トキワの理解力は知れている。さらに実際にはソウジロウにも知らない話があり補足できていないことも多いため、本当に正確にトキワは理解できていない。


「まぁ俺も一応理解はしてるが説明ができねぇ。だからこれだけ言っとく。トキワ、お前敵から指定された四上山にムラサキと向かえ」


「はぁ!? 意味がわからん」


今回ばかりはトキワの言い分は正しい。

結局何も説明されていないからだ。敵の要求であるムラサキとトキワの二人で指定された場所に行けば、人質が返してもらえるだなんて可笑しな話を飲む理由がさっぱりわからない。


ソウジロウやエリス、メアリも同じなのだろう。

皆驚いている。

ちなみに早々に話し合いに着いていけないことを看破したカエデとファーニーは部屋の隅で二人して指遊びをしていた。妖精のファーニーはともかく、カエデは一年後かそこらには結婚するとは思えない幼さであった。


「大体親父。なんでそのカガリって子を助けたがってるんだよ。俺としても助けてはやりた「バッキャロウ!!」」


言葉の途中で、突然立ち上がったリュウに殴り飛ばされるトキワ。

少し宙に浮き、そのまま落ちる。落ちる先にはエリスが居た。

一秒がそれ以上に感じる世界にトキワは居た。このままエリスに飛び込んでしまえという決定をそこで下す。

柔らかなおっぱいで受け止めてもらおうとしたトキワ。そのまま目を瞑り時を待つ。

だがそれは思いもよらない人物に止められてしまう。


ふにょりとした感触をトキワは顔全てに感じた。

想像以上の柔らかさと、ボリュームだ。エリスは胸が大きいが、これほど柔らかいとは思いもよらなかった。

幸せなトキワはそのまま目を開ける。そこにはメアリが居た。


「えっ!? 何故に?」


「あの勢いで倒れればお嬢様が怪我をしてしまう可能性がありました」


メアリとしては、トキワとエリスの仲を縮ませたかったのだがさすがにあの勢いは許容できなかった。


(エリスのおっぱいじゃなかったけど、これはこれで幸せだ)


そしてトキワはリュウから殴られたことなんて忘れて、久しぶりに再会した家族と好きな人の前でメアリの柔らかなおっぱいの感触に暫し浸っていた。

その頃、ゲンが「ワシの可愛いトキワを殴るとは、最低な奴だお前は!」とリュウに殴りかかっていたのだが、そんな姿はトキワの目には入らなかった。




「いい加減話が進まんな………………」


「あなた、敵の要求は明日なんだからあまり急かずにゆっくり話したらどうかしら?」


ゲンに殴られたため、頬を腫らしたリュウはイライラしたように貧乏揺する。それを見かねたトキワの母であるユカリがそう言った。

リュウはそれで落ち着く。


トキワもまた先ほどまでの位置に腰を下ろす。おっぱいの感触ですっかり殴られたことを忘れていたトキワだったが、切ったのだろうか口から垂れた血を拭いた時にそのことを思い出した。


「そういえば親父、なんで殴ったんだよ」


その言葉でゲンが再びヒートアップしそうになったが、それをユズコに止められる。


「父上の代わりに私が話そう」


ムラサキがそう言い、続けた。


「トキワ、それを言うには重ねて詫びをしなければいけないことがあるんだ」


「また何かあんのかよ?」


「実は、トキワの元許嫁だったカガリと私は今交際しているんだ」


「へー。それで? だから助けたいのか?」


ムラサキとしては渾身の秘密を暴露したのだがトキワの反応は極めて薄かった。初耳のソウジロウの驚き様とは全く違う。

ムラサキとしてはいくらトキワが興味さえ示さなかったとしても、元許嫁を寝取った形になるのだ。ここにも負い目があった。

だがそもそも名前さえ忘れていたトキワはムラサキが想像していたことなど思うことはなかった。

ただ、だからムラサキやリュウがカガリという少女を救いたがっているのではないかと考えただけだったのである。


だが、そのトキワの言葉にムラサキは首を横に振る。


「薄情な話かもしれないが、私も次期クニシロ家当主だ。これでもそれなりに為政者としての覚悟はある。だから、恋人と自分の命どちらが重いのかということくらいは弁えている」


「ならなんで?」


「つい先日わかったことだが………………………………子供がいるんだ。カガリの腹には」


今度こそトキワは目を見開いて驚く。ソウジロウは驚きのあまり失神しそうになっている。

だがさすがはトキワ、驚く点がソウジロウのような常人とは違った。


(兄貴………………童貞じゃなかったのか!?)


驚くトキワたちの隣で、狂喜乱舞する二人の男。


「孫孫孫! いやぁついに俺もお爺ちゃんだな」

「ワシはひい爺ちゃんじゃ!」


バカな二人が喜びの舞いを踊っている横で、ユカリとユズコも話している。


「私もお婆ちゃんですね。時の早さが見に染みます」

「あら、ユカリさん。これからの方が早く感じますよ」



それを横目に、知らぬ間に兄が大人の男になっていたショックから立ち直ったトキワも嬉しそうに言う。


「そっかぁ! なら助けないとな!」


「すまないね、トキワ。実は敵の狙いはまだ色々とあるんだが………………父上たちが落ち着いてから話そう」


「カエデは、オバチャンになるのか?」


わいわいと騒がしくなるクニシロ一族の大人たちに混ざって、トキワにムラサキにカエデも喜ぶ。



距離は確かに近い。だが気持ち的には遠い場所で見ていた、エリスとメアリは目の前で繰り広げられる会話を聞いて信じられないような顔をしていた。

アルサケス王国、また他の国で同じようなことがあったとしても普通の為政者ならば見捨てる。

例え人質の中に本家の跡取りになる可能性のある赤子が居たとしてもだ。赤子ならばまた女に産ませればいいと普通ならば考える。


何よりも人質のカガリだけならば、先程まではエリスとメアリと同じ考えだったはずのトキワやカエデが、腹の中に子供がいると聞いた途端に正反対の考えに変わった。


その事にエリスとメアリは着いていけなかった。


だがこれは仕方のないことである。

和の国とアルサケス王国とは違う。そもそも大陸自体が違うため、考え方自体が異なっているのだ。

子を何よりも思いやる和の国ではこと子供に関することならば、このやうな非合理的な考えも浮かび上がる。


この和の国特有の考え方。それを海を挟んだ隣国である修羅の国では鬼の理論と呼んでいたのだが、そのこともそしてその由来になった事件のこともエリスとメアリは知らなかった。





和の国には鬼がいる。

鬼は人の皮を被り常に怒らず、朗らかである。

だが鬼にもたった一つだけ、許せないことがある。

たちまち鬼は鬼になる。


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