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雨の日の憂鬱

今までで一番短いです。

おまけに後半部分は内容もほとんどない……。

明日の更新はいつもより良いの書くつもりなんでご容赦を

くすんだ金髪に幸薄そうな平凡顔をした、まだ若い青年が血走った目をしながら王城を全力で走っていた。


いくら王城勤めとはいえ、王でもなければ王子でもない人間が王宮を全力疾走していたら普通は誰かに止められるのだがそんなことは誰もしない。

それは顔が怖いからではなく、日常的にこのような光景が繰り返されているからだ。


「チクショウ。あのバカ王の奴、仕事放り出してどこに行きやがったんだ!?」


あげくのはてに王のことを堂々とバカにしている。

普通なら打ち首か厳罰を食らうような大罪なのだが、周囲にいる誰も反応していない。

ただ青年に対して同情の視線を送っているだけだ。

そのことからここにいる兵士やメイドたちもまたバカ王と呼ばれる人間にかなり迷惑をかけられていることが窺える。


青年は怒りで顔が真っ赤になっていた。

その当てつけとばかりに床が何度も蹴られている。


そんな時にこれまた幸薄そうな顔をしたメイドがおどおどしながら青年の前にやって来た。

青年はさっきまでの表情を消してすぐににこやかに笑う。そして優しく「どうしたの?」と声をかけた。

いくら機嫌が悪くても関係ない者に対してあたったりしないのが人間としての常識である。青年のその行動はそれにのっとったモノであった。

だがコロコロと表情が変わったところを見せられたメイドには逆効果だったようだ。ますます怯えてしまった。


それでも勇気を振り絞り、手に持っていた紙を青年に差し出す。


「あ、あの~王様がこれを宰相様にと……」


青年はこの時点で嫌な予感がしていた。過去に経験したことと似ているのだ。

出来ればこの紙を受け取りたくなかった。その嫌な予感が的中したくなかったからである。だが目の前に震えながらいるメイドをいつまでもこのままにさせておきたくないと思った青年は本当に嫌そうに紙を手に受け取った。


紙に目を通した。次の瞬間ピシリと笑顔が固まり、頬をひくひくとひくつかせる。

そして紙をビリビリに破いて窓から捨ててしまった。


「ふ、ふ、ふ、ふざけんなあああああ!」


それでも怒りはおさまらない。青年は大声で叫んだ。鬼の形相を浮かべながら。

そしてそれを間近で見て聞いたメイド少女はあまりの恐怖に失神した。


既に風で飛ばされてしまった手紙にはこう書かれていた。


『アイレーン姐さんからエリスちゃんを匿ってほしいとお願いされました。今カタリベにいると領主から聞いたので、迎えに行ってきます。あ、あとミーシャも連れていきます。歩きで行くので大体往復で一ヶ月くらいかかるかもしれません。それまでの政務は君に任せました。頑張ってね! マーレーン国王 アルカディアより』


ーーーーーーーーーーーー


デートの翌日は生憎の雨のためトキワたちは魔の森に行くことが出来ず、また家の中でもやることが特に見つからずダラダラと無意味な時間を過ごしていた。


「暇……ですわね。魔力が回復すればまた魔法の練習もできるのですが……」


「暇……だなぁ」


「ひま……」


エリス、トキワ、ファーニーがため息混じりにそう呟く。


「いや、俺とエリスはまだわかるけどお前晴れの日でもいつもゴロゴロしてるじゃん」


雨の日でも変わらんだろ、とトキワがファーニーにツッコむ。

だがファーニーはあんた何にもわかってないわねぇ……これだから童貞は……というような顔で首を横に振る。


「雨の日はジトジトしてて寝づらいのよ。そんなこともわからないなんてトキワはダメダメね」


「お前のようなダメ妖精に言われたくない」


二人のバカみたいな掛け合いを見ていて、エリスは笑ってしまう。そして少しだけ憂鬱な気分が晴れたような気がしていた。

身体を動かしたり、そうでなかったら何かをしていなければどうしてもアルサケス王国のことを考えてしまうのだ。


父と母や屋敷の人たちは無事でいるのだろうか?

国の内乱がこのまま始まってしまわないだろうか?


ここで考えていても仕方のないことばかりなのだが頭の中に悪いイメージばかりが湧いてくる。

エリスがアルサケス王国から亡命してから既に一ヶ月近く経とうとしていた。その程度で状況がどうにかなるとは考え難いが、それは決して安心であるということではない。




「雨……止みませんかねぇ……」


少しでも考えずにいたい。エリスはそんな思いで窓から空を見てそう呟いた。


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