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一章六

芳子は奥に招かれると早速、蒼鴛に言われた通りに衣類の事を告げる。そして、下着類の事も言ってみた。すると、女将はああと言って棚の中から女性用の下帯などを出してきてくれた。

「…これが一応、あんたが言う下帯などだけど。でも、あんた。あの兄ちゃんとはほんとに恋人なのかい?」

疑わしげに見られて仕方なく、首を縦に振った。

「……本当は恋人ではないんです。後、あの。私、遠い所から来て。こちらの衣服とか下帯なんかの着方がわからないんです。もし良ければ、教えていただけますか?」

おずおずと尋ねれば、女将は少し考えてから頷いた。

「わかったよ。そうだね、まずは下帯の付け方からだね」

そう言いながら、女将は薄紅の下帯を手に取った。そして、着方などを丁寧に芳子に何故か、教えてくれたのだった。




あれから、二時間近く、女将から衣類の着方などをレクチャーされて芳子はやっと、合格点を出してもらえたので奥から出てきた。その手には上着やらスカート、腰帯などがあった。

肩には女将がサービスでくれた辛子色の可愛らしい巾着袋もあった。この中には下着類が入っている。

後、生理、月の障り用の布なども入れてあった。これは芳子が心配のあまり、口にした月のものの言葉を聞いた女将がだったらと言って用意してくれた。

この世界には便利な用品は普及していないらしく、女将は紙と布をうまく活用してするのだと教えてくれた。

蒼鴛の気遣いに感謝しながら芳子は店の表で待っていた彼と店主に近づいた。

「…旦那さん、蒼鴛さん。ありがとうございました。女将さんに色々と教えてもらえて助かりました。これで、旅には困らなさそうです」

にっこりと笑顔で言えば、店主は照れたのかぽりぽりと頬を掻きながら頷き、蒼鴛も口もとに笑みを浮かべながらそうですかと言った。遅れて、女将も中から出てきていきなり、店主の耳を持って引っ張ってきた。

「ちょっといいかい。あんた?」

「……い、いてて!母ちゃん、いきなり、耳を引っ張るなって!」

「ああ、悪いね。お二人さん。良い旅になるように祈ってるよ。じゃあ、元気で」

笑顔で言いながら、女将は中に再び入っていった。それに首を傾げながらも旅を再開したのであった。




蒼鴛との旅が始まってから、早くも四日が経った。その間、町ー紅蘭(こうらん)にて買った靴や外套が大いに役に立った。衣服は途中で立ち寄った村の安宿で着替えてなおかつ、体を用意してもらったお湯で拭いたりもしたが。

蒼鴛は部屋を出て、二人分の食事を取りに行ってくれたのでその間に手早く済ませておいた。

ちなみに町の名前やここが朱国という国で異世界であるということなどを蒼鴛から宿に一緒に泊まった折に教えてもらった。

また、蒼鴛が実年齢が二十五歳で現国王の朱鳳こと朱苑莱(しゅえんらい)の生母の皇太后の甥でいとこにあたるらしいことを聞いた時は驚いたものだ。また、蒼鴛は本名が楊蒼鴛といい、王の護衛兼将軍職を拝命しているらしい。

皇太后は楊太后と言われており、王の後見人として権勢を誇っていてそれが宮廷内での権力争いに拍車をかけているそうだ。今、朱国の宮中は楊太后派と先代の王の側妃であった霹貴妃(へききひ)派に分かれて争っていると蒼鴛は話してくれた。

そして、王都までは後、五日はかかると言われた。だとすると、合計して十日近くはかかる所に自分達は落ちてきたらしい。鳳凰の力でこちらに来たのだと告げられ、さらに愕然とする。

いくら何でも適当すぎる。芳子は神であるとは言え、鳳凰に文句を言いたくなった。何で、トリップでのお約束の王宮に飛ばしてくれないのだと。内心で毒づきながらも足は動かした。

そうやって、少しずつ、宿命の相手である王ー苑莱の元に近づきづつある二人であった。



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