第1話 始まりの日(2)
「いや、しっかりと聞こえている、だがよく考えてもみろ、いきなり話したこともな
い女性に「あなた人生そんなんで面白い?」なんて言われたら誰でもこんな反応にな
る」
「・・・・・似てないわ」
「真似したんじゃねぇからなぁ!!」
なんなんだこいつ、ふざけてるのか。
「で?あなたは質問に答えられないほど、低脳な生き物なの?爬虫類の方がまし」
「俺は哺乳類だ、人間なめんな、ちなみに爬虫類もなめんな」
と、いうと、名坂驚いた顔をする。
「爬虫類を侮辱してはいけないというの?」
「そうだ、考えてみろ、お前のうでは引きちぎれたら再生しない、だがトカゲは違う、
これは神秘だ」
「驚いたは、あなた哺乳類だったのね」
「話聞いて!?つか、どう見ても哺乳類でしょ!?あなたには他の物に見えるという
の!?すごい!神の眼だ!その目は直ぐに生贄に捧げたほうがいいねっ!」
「今は肺呼吸なのね、エラはどこかしら」
「両生類に見えますか!?水中でカープーカープーって呼吸してました!?」
「それだけの口が聞けるようになるのね、すごいわ」
こいつ、ふざけてるのかな。
いや、違う。
馬鹿にしてるんだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あらだんまり?あ、そうね、ごめんんさい、私としたことが」
え?謝った。
なぜかしょぼんっとしてそしてなぜか憐れむような目で。
なんだか普通の可愛い女の子に見えてきた。
なんだ素直なところもあるいい子じゃないか。
「今まで褒められたことがなくてなにも言えなかったのね、ごめんなさい、気がつか
なかった」
「俺の純情返せぇぇぇぇ!俺のときめきかえせぇ!」
「前青よ、そういえば、両生類さんは色の判別はできるのかしら」
「よし、じっくり俺のことを説明しよう」
「それは新手のナンパかしら?」
よし、こいつはいつか悪魔が落としたノートに書いてもらおう。
そんな流れでそいつと一緒に登校する形になった。
その間俺はずっと、俺を、俺の全てを説明した。
でも、全てあのヘンテコな返事しか帰ってこなかった。
そういえばなんでだろう、俺女子とこんなに話せるんだっけ。
しかも、流れで昨日の出来事まで話してなかった。
あいつはその話をしたとき、なんて言ったっけ。
など、俺は自分の机で考える。
新クラス。
名簿を見る限り、北村と同じクラスではない。これはよかったと思う。流石に別れ
たあと、おなじクラスというのは気まずい。
北村もなんでか俺と付き合ってることは周りに離したくないと言っていたので、俺
ふったところで、何の影響もないだろう。
つか、なんでか、って言ったけど、わかってる。多分俺なんかと付き合ってると思
われるのがやだったんだな。
「はぁ・・・」
と、うつむいていると、クラスがざわめき始めた。
うるさいリア充どもだ、どうせ、何組!?とか騒いでるだけだろ。
最悪だ、これからまた、あの日々か。そうだ、とりあえずメールしとこう、呼び出
したほうがいいよな、駅前のファミレスでいいか。
「よし、送信っと」
そう、つぶやき俺は右ポケットに携帯をしまった。
ああ、不労としてるのに、なんの感情も現れない。
やっぱり愛の無い付き合いなんてこんなもんさ。
よし、決めた、これは初彼女ということではないことにしよう!
まだ、俺は彼女もできたこともないような男。
うん、なんかそのほうがかっこいい気がする。
全国のぼっちや中二病は皆そうだと思う。
ライトノベルの主人公に憧れたりする者だからあ。だいたいラノベの男は今まで、
女性と付き合ったことがない。
だからそれに憧れてる。
まあ、それと同じさ。
言っておくが俺はぼっちでも中2でもない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「俺って何ものだよ、本当」
「あら、哺乳類とさっき学校まで長たらしい説明をしていたじゃない」
周りが一気にざわめく。
俺の心もなぜかざわめいた。
この声。
一度聞けば忘れられない。
俺はふと上を向いた。
「沢村・・・・理子」
「あら?名乗ったかしら、明智くん、それと独り言はやめたほうがいいわ、本当の変
人みたい」
その声に小さく美しい唇から発せられる声に俺は、周りのざわめきなど一切耳に入
ってこなかった。
ただただ、沢村理子の声だけが鼓膜を振動させていた。
俺の右ポケットのバイブの振動さえも感じさせないほどに。
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