第4話
京の町中 夜-
総司は月明かりの下、一番隊を率いて先頭を走っていた。
遠くから犬の遠吠えが聞こえる。
総司は、とある屋敷の近くまで来ると、振り返って隊を止め、さっと手を大きく振り上げた。
皆、何も言わず、決められたところへと散開する。
しばらくして、伍長が総司のところへ来てうなずいた。
準備が整ったのである。
総司はうなずいて、屋敷の前まで来ると、強く戸を叩いた。
しばらくしてから、中が騒がしくなった。
囲まれていることを悟ったようである。
伍長「沖田先生、ここは死番の者に先に行かせた方が。…危険です。」
総司「大丈夫です。私が入ったら、あなたもついて入ってください。あとは打ち合わせどおりに。」
伍長「…心得ました。」
伍長の顔は蒼くなっている。出動は何度経験しても慣れないものである。
総司はふと思いついて、振り返って中條を探した。
総司(彼には、山野君と一緒にいるように言っておいたが…。大丈夫かな。)
その時、かんぬきがゆっくり抜ける音がした。総司は、はっとして伍長にうなずき、戸を強く押し開けた。
それと同時に、総司以下一番隊士達がなだれ込んだ。
……
総司は降りかかってくる刀をなぎ払った。がしっという鈍い音がする。
一階は伍長に任せてある。総司は二階へと駆け上がった。
誰もついてこない。皆、浪人たちの襲撃で引き止められているようである。
総司(池田屋を思い出すな…)
そう思った。あの時、近藤が先頭をきって入り、総司は後に続いた。あの時の近藤の気合の声が今でも耳に残っている。
「沖田総司だ!…沖田総司だぞ!!」
二階へ駆け上がった時、そんな声がどこからか聞こえた。
目の前には、数人の浪人が自分に刀を向けている。
総司「…逆らわねば斬らぬ。…命を粗末にするな。」
総司は厳しい表情で、持っている刀を構えることもなくそう言った。
あまりの堂々とした様子に、皆、自分から斬りかかろうとしない。
背中に殺気を感じた。振り返りざまに、刀を振り上げる。
手ごたえがあった。それと同時に主のいない腕が飛んだ。悲鳴が後を追う。
総司「…頭と話がしたい。無駄に人を斬るつもりはない。」
総司がそう言い終わらぬうちに、一人の男が奇声を上げ、大上段で襲ってきた。
総司はついと避けて、後ろから、その男の髷を切り落とした。
男は驚いてその場に尻餅をついた。
総司はすぐに振り返り、平青眼に刀を構えた。
「沖田総司か…お得意の三段突きとやらを見せてもらおうか。」
奥のほうから、一人の男が出てきて、そう言った。
刀を構えている男達は驚いて、その男を止めようとした。…が、男は無視して総司に近づいてきた。
初めて見る顔である。
総司は相手が刀に手をかけていないのを見て、構えを解いた。
総司「あれは見世物じゃありません。」
男は笑った。
総司「あなたが頭ですか。」
男「まぁ、そんなものだ。」
男はそう言って、頭の後ろを掻いた。
総司はこの男に全く殺気がないことに驚いていた。