第2話
新選組屯所 中庭-
総司は、一人木刀を振っている男の後ろから声をかけた。
総司「中條君。精が出るね。」
呼ばれた中條は驚いて振り返った。
中條「はっ!?…沖田先生!」
驚いて大声を出したので、総司はあわてて「しーっ」と人差し指を自分の口に当てた。
中條「すっすいません…」
中條はあわてて口に手を当てて謝った。
総司「…こんな夜中にまで稽古だなんて、奇特な人間もいるもんだと思ってね。」
総司は、にこにことしてそう言いながら廊下に座った。中條は「はぁ」と返答に困ったように、頭を掻いた。
中條「…何だか眠れなくて…。小さい頃から、こんな大人数で寝たことがなかったんです。」
総司「…そうでしたか…」
総司は試衛館に入った頃のことをふと思い出した。そう言えば、知らない人間に囲まれて寝るのに、なかなか慣れなかった。
総司「…君は、私と似ているような気がするなぁ…」
中條「!?…私がですか?」
総司「ええ。…過去が特にね。」
総司は苦笑しながら言った。
中條は総司の過去のことを聞きたいと思ったが、それを聞くのは失礼かと思い、口をつぐんだ。
総司は廊下の柱にもたれて、月を見上げた。
総司「君は…新選組に入ったことを後悔していないですか?」
中條「!?」
中條は総司の突然のその言葉に一瞬とまどった。
一緒に入隊した仲間が死んでいくのを見て、自分が思い描いていた世界とは違うことを、感じていた時だったからである。
中條「後…悔はしていません。」
総司「…何か、ひっかかる言い方ですね…」
総司はそう言って、小さく笑った。
総司「入隊する人は皆、武士になれると喜んで入ってくるようだけど…あの局中法度を見て愕然とするようです。…君もそうじゃなかったですか?」
中條「…!」
総司「図星だね」
総司は、何も言わない中條にそう言って笑った。
総司「…あの時…入隊試験の時、私が君の相手をしなかったら…君は新選組に入れずに済んだでしょう。…そう思うとね…。君に申し訳なくて…。」
中條「…!…」
中條は木刀を右手元に置き、総司の足元に両膝をついて言った。
中條「僕…いえ、私は…沖田先生にお会いできたことが、一番の幸せだと思っております。」
総司「!…」
今度は総司が言葉がでなくなった。
中條「今でも覚えています。…入隊試験の時…先生は、私を見て副長に何かを耳打ちされていた…。その時…やめされられるのかと思ったんです。」
総司「?どうして?」
中條「「沖田総司」だからです。」
総司「!!」
中條「あ!…」
中條はあわてて口に手をあて「呼び捨てにしてすいません」と言ってひれ伏した。
総司「気にしないで…どうして私が「沖田総司」だったら、やめさせられると思ったんですか?」
中條は、先の失言が辛かったのか真っ赤になって顔をあげ、もう一度「申し訳ありません」と謝ってから言った。
中條「剣の達人と聞いておりました。…だから…私の剣の腕が悪いことを見抜いて、やめさせられるのだと。」
総司は笑った。
総司「それは買い被りすぎというものです。」
中條は首を振った。